34話
新年祝賀パーティーで国王陛下から伝えられた様に、実際に王城でのお茶会が開かれることになった。
このお茶会は、3人の王子たちに侯爵令嬢のメイリーンを紹介するための場である。
そして、それを国王陛下、宰相、スチュワート侯爵ら、大人たちが総出で見守るのである。
メイリーンとしては些か憂鬱になるイベントだけど、これも侯爵家の娘としての責務を果たさなければならないと納得する様にしている。
それになにより、父親である侯爵が王城で招待状をもらって帰ってきてからずっと落ち着きがなく、侯爵夫人もメイリーンも気になって仕方がないのだ。
早くこの憂鬱なイベントを終わらせて、侯爵には落ち着いてもらいたい。
そうでなくとも、新年からは社交で忙しく、屋敷に帰ってきても執務室で領地からの書類を確認しているようだった。
侯爵家ともなれば、貴族や商会などとの人付き合いは手広く、領地も広大で、仕事が尽きないのだ。
そんな多忙な中で、なぜか王子と娘の対面が待っている。侯爵の心労や体調を思うと、侯爵夫人もメイリーンも心配になるのだった。
今もみんなで朝食を取りながら、どこか顔色が悪い侯爵がいた。考え事をしているのか、いつもと違って表情が暗い。
ここ数日ずっとこんな感じだなとメイリーンは思って、次に侯爵夫人を見ると、メイリーンと同じような表情をしながら、侯爵をじっと見ていた。
「あなた、忙しくて寝ていらっしゃらないのではなくて?顔色が良くないようですわ。私もメイリーンも心配していますのよ。」
「ああ。立て込んでいたからな。社交は今日の陛下主催のお茶会で終わるから、そこまでは頑張らないとな。」
「国王陛下のお茶会でなければ、私が代理で行きますのに。あなた、明日はゆっくり休みましょう。」
「そうだな。おそらく明日の午後から宰相に会いに行くと思うが、午前中だけでも休みたいものだな。いや、領地からの書類をそろそろ返してやらなければいけないな。あまり待たせて不安にさせるわけにはいかない。」
「ええ。そうですわね…。」
なかなか休めない様子の侯爵を心配して、侯爵夫人はどうしたものかと小首をかしげた。
夫婦のやりとりを見守っていたメイリーンだったが、近くに控えている執事に声をかけた。
「あの、国王陛下とのお茶会までの時間に、小一時間で良いので、お父様が仮眠の時間を取れるように、お支度をお願いできませんか?お仕事の書類をしまって、お父様の寝巻きを用意して欲しいです。」
「まあ、メイリーン。素晴らしいわ。そうしましょう。少しでも休むべきだわ。すぐに寝室を整えてもらいましょう。」
「かしこまりました。失礼いたします。」
メイリーンの提案には侯爵夫人がすぐに賛同してくれた。
次の瞬間には執事が丁寧に礼をして、颯爽と立ち去って行った。
「あなた、国王陛下の御前でメイリーンは緊張しているのよ。不安にさせないように、しっかり休んできてくださいね。」
「あ、ああ。そうしようか。さて、食後のお茶は省いて、部屋に戻ろうかな。ハンナ、メイリーン、また後で。」
「ええ。あなた、おやすみなさいませ。」
「お父様、おやすみなさいませ。」
「はは。おやすみ。」
そういって侯爵は立ち上がり、若干ふらつきながら食堂を出て行った。寝不足と過労なのだろうか。
侯爵が出て行った方向をメイリーンが見ていると、そんなメイリーンを侯爵夫人が見ていた。
「もう心配しなくて大丈夫よ、メイリーン。あなたのおかげでお父様はいくらか元気になって戻ってくるわ。」
「はい、お母様。」
「良い子ね。さて、私たちは食後のお茶をいただきましょう。」
メイリーンは王城に向かう前の束の間の穏やかな時間を過ごすのだった。
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