33話
宰相ディーンの執務室に国王ヨハンと侯爵のアンドレが滞在して、アンドレの娘であるメイリーンを王子の婚約者にする話を続けている。
メイリーンが幼い子どもにしては賢く、また史上でも稀少な多才な魔法が使える存在であることから、貴族たちの揉め事にならないように、王室に入れて保護しようという国王陛下の案であった。
ディーンもアンドレも貴族の性質をよく知る身としては、良い手であるとは思った。
ただ、アンドレは子煩悩ゆえに、親としての寂しさをひときわ噛み締めていた。
宰相ディーンと国王ヨハンの話は続いていく。
アンドレは気持ちの整理がつかないまま、静かに会話を見守っていた。
「たしかに、揉め事の火種を生まない上に、貴重な人材を王家に迎えることができますな。」
「ディーンにも同意してもらえて良かった。まずは子どもたちを会わせてみてその反応を見極めようと思う。
自慢ではないが、王子たちも先日の新年会の様子を見るに、人前での振る舞いは王族らしさが出てきた。とは言え、まだまだ脇が甘く、甘言に乗せられる危険性や、己の子どもらしい感情に引きずられることもあるだろう。
そこで敢えて、誰か一人の王子の婚約者に決めずに、少し仲良くなるまで様子を見ようと思う。相性が良ければ良いほど、その後の成長にも繋がるはずだからな。」
「左様でございますか。なるほど、命じるままに隣に並ばせると賢く美しい娘に劣等感を覚えるようにもなりかねませんな。」
「そうだな。幼い頃ほど女性の方が成長が早い。下手なくっつけ方をすると、影響が出かねない。素直に相手の才能を誇るには前提となる愛情が必要だ。」
「それで、お茶会ではどのようにして、近づかせるのでしょうか。自己紹介しただけではもったいないですぞ。」
「フフン、それは当日を楽しみにするのだな。」
「ほう。それなら私は第三者として若人たちの様子を冷静に見守るとしますよ。」
「それが良いな。わたしも、アンドレも、自分の子どもばかり見てしまうだろうな。後で感想を聞かせてくれ。」
「ええ。承知いたしました。」
アンドレも同意として時折り、こくこくと頷いてはいるが、喋らない。
「アンドレに異存は無いようだから、今日のところはこのくらいにしようか。お茶会が終わったら、また集まるとしよう。」
「ええ。そうしましょうとも。」
「陛下のご随意に。」
「よろしい。ではな。」
陛下が立ち上がり、扉を開けると、少し離れたところに待機していた侍従やメイドが素早く近寄り、行く先に先触れを伝えたり、先導したりと、人が集まっては流れていった。
そして、執務室の扉がメイドによってゆっくりと閉じられた。
「アンドレ殿も、難儀なことですね。陛下は細かいところまでは決めない性格ですから、何か意向があれば、私が手を回して置きましょう。」
「ディーン様、ありがとうございます。…そうですね…。」
そう言ってアンドレは少し考え込んでしまった。
少し待ってからディーンが声をかける。
「現時点ではいくらでも軌道修正は可能ですからな。あんまり気に病むことはないでしょう。嫁ぎ先として、王家はもっとも良いと思いますが。」
「ええ。それはそうですね。この上ないお話です。ただ、縁談はもう少し後のことだと思っていましたので、この後の育て方も含めて、これからどうしてよいものかと…。」
「ふむ。そうですね。王子たちと仲良くなった後にどうやって距離を詰めさせるかによって、王都住まいにするか領地に戻すかも変わりますな。そして、正式に婚約を発表する前後には王族としての教育を始めませんと。」
「そうですね。我が子ながら優れていますので、きちんと教育すれば問題はないと思いますが…。いや、本人の意向も聞かないといけませんね。」
「そうですな。まずは本人の気質からですな。お茶会の日を待つとしましょう。」
宰相ディーンの一言で、その場は締めくくられたのだった。
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