32話
メイリーンがお茶会デビューに勤しみ、母親の侯爵夫人が内心で親バカを爆発させている時、父親であるスチュワート家侯爵のアンドレは王城に出向いていた。
宰相のディーンに呼ばれて、領地経営が落ち着いたら大臣職を目指さないかと言われて悩んでいると、宰相の執務室に国王陛下ヨハンがやってきた。
宰相ディーンと侯爵のアンドレはすぐに礼をするが、国王ヨハンは「私的な用件なので寛ぐように」と言うと、執務室のソファーに座った。
王家のメイドと従僕がキビキビと動き、執務室とは思えないほどに華やかな空間を作り上げていく。テーブルは布と花で飾られて、特級品のお茶とお菓子が用意された。
そして、サーブまで終わると、頭を下げてから執務室を退出した。
「急で済まぬが、お茶でも飲んで話そうと思ってな。まあ、くつろいでほしい。」
「はい。失礼いたします。」
アンドレはかっちりと応えるが、宰相ディーンは無言のまま、じと目で国王を見ている。おそらく、事前に知らされていなかったのだろう。
もぐもぐとお菓子を頬張る国王を見ながら、それぞれお茶をいただき、ひと口だけお菓子を食べる。
「そういえば、領地経営は落ち着いたのか。」
「はい。跡を継いでから5年ほどですが、人材が育ってきたこともあり、もう少しで落ち着く目処がついてきました。」
「ふむ。長期間とは行かないが、いくらかほしい人材がいれば、あの宮廷魔導師のように王城から連れて行ってかまわないぞ。」
「ありがとうございます。」
「なに、気にすることはない。先代のスチュワート侯爵には世話になっているからな。」
「父も喜ぶと思います。」
先代侯爵は病死しているため、すでにこの世にはいない。その前に侯爵夫人もなくなっているので、アンドレには両親がいない。その状況で領地経営を行っているので、国王は気にかけていたようだった。
「そういえば、先日のパーティーに娘を招待して悪かったな。」
ちょっと気まずそうに言う国王に、宰相ディーンが追撃する。
「まったくですよ。他の機会にすれば良いのに、前例の無い中で社交デビューする子どもがかわいそうです。」
「ディーンにはこのように言われたのだが、箔がついて良いかと思ってな。すまぬな。」
「いえ、結果的に問題もありませんでした。ありがとうございます。」
「そう言ってくれると助かるな。あと、息子たちと仲良くなってもらおうと思ってな。ほら、アンドレと娘に対するお茶会の招待状だ。ちなみにわたしも出るからな。ディーンも出るか?」
「私が出る必要があれば。これでも忙しいのですよ。」
「まあ、そう言うな。後で招待状を渡すからな。」
「ちなみに、陛下、今回は何のためのお茶会なので?」
招待状を受け取ってからしばし固まっていたアンドレだったが、何のためのお茶会かという宰相ディーンの質問にハッとして聞き入る。
「うむ。ここだけの話なのだが、アンドレの娘をわたしの息子のどれかと縁付かせたいのだ。」
ピッッシャーーーーーーンンンン!!!!!!
アンドレの心に雷撃が直撃したかのような衝撃波が走った。
「へ、陛下。まだ7歳の娘です。それに一体どうして我が家の娘なのでしょうか。」
「ふむ?珍しく慌てているな。王族の婚姻は10歳くらいから徐々に候補を集めていき、15歳くらいに決めるからその下準備というのが建前だが…。
その方の娘は才能がありすぎて、今後狙われる可能性が高い。だから、王家が目をつけたことが知れ渡れば、守れると思ってな。」
「陛下、アンドレの娘はどのような才能を持っているのでしょうか。」
「うむ。まあ有り体に言えば、魔法が使えるのと、頭が良すぎるということだな。後はアンドレとハンナの子どもだから異常なまでの美人になるだろう。
スチュワート侯爵家からそのような傑物が出ているのだから、派閥に取り込みたい貴族の良い標的だろうな。」
「なるほど、それで王家に取り込むと同時に保護するということですか。」
「そうだ。ただ、性格まではわからないから、向き不向きを含めて今後のことは考えたい。それでまずは面識を持つためのお茶会をするわけだ。」
少し言葉足らずで説明不足の国王ヨハンから、宰相のディーンが情報を引き出していく。
アンドレも、国王の気遣いが伝わってきたことで万全ではないが少しずつ落ち着きを取り戻した。
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