29話
両親である侯爵夫妻から労いと絶賛の言葉を浴びながら、豪華な馬車で王都の屋敷まで帰ると、メイリーンは安心するとともにすぐに眠たくなってしまった。まだ7歳の少女の体には、慣れない場での過度な緊張が負担だったのだろう。
シャーリーが一旦外出用のいつもより高価な支給服を着替えに行っている間に、屋敷の他のメイドたちに着替えや入浴を手伝ってもらった。
メイリーンの編まれた髪を解く合間に、疲労に効くというハーブティーにはちみつを入れたものを出す様はまさしくプロの気遣いだった。
その後はドレス類やティーカップなどを下げる係、入浴準備の係のメイドが入れ替わり立ち替わり、手際よく振る舞い、メイリーンが手ぶらでお風呂に向かった後は颯爽と全身を洗われ、少し頭をマッサージされたと思ったらいつの間にか入浴が終わり、ぼんやりしていたら着替えまで済んでいた。
まったく覚えていないがなぜか髪までしっかり乾いていた。
そして、いつの間にか戻ってきたシャーリーに部屋まで誘導してもらう。
シャーリーはいつもの紺色で丈長のメイド服を着ていた。少し身長が高いので、凛々しく見えてよく似合っている。
メイリーンは眠い目をなんとかまぶたをこすって開けるように努力して、ようやく自身の寝室へたどり着いた。
事前の約束通り、5歳児のもふもふフェンリルのシロちゃんが待っていてくれたので、メイリーンは歓喜の気持ちで思わず笑顔になり、シロちゃんはそれを優しい気持ちで受け止めながら、しばしお互いに抱きしめあった。
そして、しばらくしてから、シロちゃんを抱きかかえて、メイリーンはベッドにもぐった。
シャーリーは、メイリーンが眠気を必死で我慢している様子や、少しだけうたた寝してしまった様子、シロちゃんに向かって大喜びで抱きついていった様子を見て、内心はぐう可愛いとメロメロになり悶絶していたが、顔に出さないように必死だったため、むしろ能面のように感情が凪いだような無表情を保っていた。
シャーリーは少し息を吐いてから腹にぐっと力を込めて、いつもの声の調子に調整してからメイリーンに話しかける。
「それでは、メイリーン様、おやすみなさいませ。」
「おやすみなさい。シャーリーもよく休んでね。」
なにやら一気に顔が赤くなったように見えたシャーリーがかっちりとした礼をしてから退室したので、メイリーンはようやくシロちゃんに話しかける。
「シロちゃん、わたし頑張ってきたよ。豪華なお城と貴族や王族に挨拶して回ったの。もうすっごいたくさんの人がいて、全員大人で、大変だったの。」
「メイリーン、よくがんばったね。」
シロちゃんがメイリーンを褒めようと頭をグリグリと押しつけてくる。
「もう〜。シロちゃんってば暴れすぎだよー。おなかにグリグリするのやめて〜。もー。」
「メイリーン、えらいえらい。よくがんばったね。」
シロちゃんが再びグリグリと頭をメイリーンに押し付けてきた。
メイリーンはケラケラと笑いながらも、シロちゃんの少し高い体温に触れて、癒された。
「シロちゃん、あったかい・・・。あったかい・・・、すー、すー。」
気を抜いた瞬間に寝てしまったメイリーンを見て、シロちゃんもまた満足して隣で寝ついたのだった。
シャーリーはメイリーンにメロメロ。
メイリーンはシロちゃんにメロメロ。
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