28話
緊張を高ぶらせながら王城でのパーティーに臨んでいたメイリーンと侯爵夫妻だったが、メイリーンの目から見て、その後も特に大きな問題もなくパーティーは終了したようだった。
国王陛下の挨拶の後は再び豪華なパーティーが続き、めくるめく煌びやかな空間の中で、相変わらず貴族家当主と夫人に挨拶されて、侯爵夫妻が捌いていく状況だった。
次第にメイリーンも慣れてきて、合間の休憩で味わう軽食や飲み物を楽しむこともできていた。
国王陛下への挨拶の順番が回ってきたようで、侯爵夫妻について行った。この挨拶は長くなるのを防止するため、二言三言交わすのみで終えるのがマナーとされている。
それでも、新年の挨拶を行えたこと、国王陛下から直接お言葉をかけていただけることはかなり貴重な機会だった。
特に王城での役職もない無役の子爵以下になると3〜5家合同で横並びになり、ポンポンとお言葉をかけていただくのだが、それでも延々とすべての貴族家に対して行う国王陛下やサポートする王妃はかなり真面目で誠実だと言える。
そしてその様子を幼い頃からひたすら静かに見守っている王子たちは、子どもにしては忍耐強いのだった。
そろそろ順番が来るからと王族席の近くに移動して間もなく、「スチュワート侯爵」と宰相に呼ばれて御前へ向かう。
当主である侯爵が華麗な口上を述べる中、侯爵夫人とメイリーンは無言でカーテシーを行う。不敬にならないように目線は下げてある。
国王陛下からいつも大儀であると労いの言葉をいただいたので、すぐに退出できるように心づもりをしていると、ふいに予定外の内容が飛び出して、心臓を鷲掴みにされた。
「そちらがアンドレとハンナの娘か。ふむ。また今度城に呼ぶから王子らと仲良くしてほしい。」
「ありがたいお言葉です。どうぞよしなに。」
「では、またな。今年もよろしく頼む。」
「はい。それでは失礼いたします。」
侯爵は流れるようにお礼を申し上げていたが、メイリーンは混乱していた。侯爵夫人とともに無言でお辞儀をして御前を退出した。
侯爵夫妻も顔には出さないが大層な衝撃だったらしく、すぐに控えていた侍従に休憩用の小部屋に案内させた。
元々、メイリーンが疲れた時のためにひと部屋の確保と支度はしてあったので、すんなりと案内されていった。
「お父様、お母様・・・。」
メイリーンが困った表情で侯爵夫妻に話しかけると、ふたりとも子供に対する優しい笑顔を向けてくれた。
「メイリーン、まずはよく頑張ったな。パーティーにいるべき時間は残すところ後少しだが、今までの対応は完璧だった。父親として誇りに思うよ。」
「まあ、あなた。わたくしもメイリーンは素晴らしいと思いますわ。よく頑張っているわね。」
両親から労い、褒められて、メイリーンはほっとして、笑顔になった。褒められたらやはり嬉しい。
「お父様、お母様、ありがとうございます。」
7歳の少女らしく、笑顔でお礼を言うメイリーンの明るい様子に、侯爵夫妻もほっとするのだった。
「うむ。国王陛下からのお言葉の真意まではわからないが、メイリーンがしっかりとした対応ができているからこそ、王子様方との面識を持って良いということだからな。
メイリーンの社交デビューとしては大成功だよ。」
「そうですわ。陛下から爵位の無い子どもに対するお言葉をいただけるなんて異例ですわね。さすがメイリーンね。私たちの誇りだわ。」
「ありがとうございます。」
母親である侯爵夫人の言葉に引っかかりを覚えるものの、まずはしっかりとお礼を言った。
そのあとは休憩を20分ほど取ってからホールへと戻り、1時間も経たないうちに帰路についたのだった。
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