26話
侯爵夫妻の後に続いてメイリーンも、シャンデリアや天井画、壁紙、装飾品ととにかくどこもかしこも派手で煌びやかな王城のホール、パーティー会場へと入っていく。
メイドたちのようにしずしずとは歩かず、メイリーンは母親である侯爵夫人の教えの通りに、ピンと背筋を伸ばしながらも、余裕のある表情を保ちながら、優雅にゆっくりと進んでいく。
これがメイリーンの7歳での幼すぎる社交デビューだ。
王城での新年祝賀パーティーは王族と貴族当主夫妻や王城で働く貴族がその絆を深めるために呼ばれるもので、本来は無役の者や子供が呼ばれることはない。
よって、かなりのイレギュラー対応なので、メイリーンを見かけた貴族や侍従たちは声こそ出さないものの、驚きに目を見張って、一瞬ではあるがその存在を凝視している。
初めての社交場で緊張している最中に視線を浴びせかけられたメイリーンはプレッシャーで顔がひきつりかけていた。
うわあ。なんか見られてるー。
本当に子どもが見当たらないなあ。子どもというか、わたしより少し年上くらいの人も全然いない。とりあえず10代はいなさそう。
そのうち誰かしら現れたらいいなあ。公爵家とかの子どもはいないのかしら。
いや、考えても仕方がないかな。とりあえずお父様たちにしっかりついていかないと。
父親である侯爵が、40代半ばか後半くらいの夫婦に近づいて挨拶を交わしている。ラーズ公爵というらしい。
「ラーズ公爵、こちらが我が娘のメイリーンです。メイリーン、ご挨拶なさい。」
「お初にお目にかかります。公爵様。」
「おお、初めまして。随分と可愛らしいお嬢さんだな。レディに年齢を聞くのはいけないが、おいくつだろうか。」
「7歳でございます。」
メイリーンはかなり端的に答える。丁寧な応対のために余計なことを言わないと決めたのも母親である侯爵夫人だ。
メイリーンを疲れさせず、また、余計な揚げ足を取られないようにするための配慮だ。
ただ、ラーズ公爵夫妻は穏やかそうで優しそうだ。貴族だから腹の内はわからないのだが。
「なんと幼いのにこんなに美しくカーテシーが出来るなんて、素晴らしいお嬢さんだ。」
「ありがとうございます。」
素直にお礼を言って、少し下がる。母の隣に下がることで、大人の会話を邪魔しないようにするのだ。
ラーズ公爵も深追いはせずに、大人同士で話している。
母親である侯爵夫人はメイリーンに微笑みかけて、アイコンタクトで労ってくれた。
侯爵夫人は内心では「さすがわたしたちのメイリーンちゃん!よく頑張ったわね!完璧な淑女よ!!」とひたすら熱く労っているのだが。
ラーズ公爵夫妻と両親は仲が良いらしく、その後も15分ほど歓談が続いた。
公爵と侯爵という非常に身分の高い組み合わせなので、他の貴族に割って入られることもなく、しばらく盛り上がっていた。
後から聞いた話では、ラーズ公爵は遠縁で、基本的には互いに気を許した仲らしい。
続いてご挨拶とお話をしたのは、ウィーリー伯爵家だった。メイリーンの家庭教師、マクロンの実家である。当主夫妻とマクロンが来ていた。マクロンが参加しているのは、家庭教師をしながらも、実は現在も宮廷魔導師の身分だかららしい。
知ってる相手が出てきて嬉しくなったメイリーンだった。マクロンに会えてこんなに嬉しかった日はかつて無いほどだ。
マクロンの両親であるウィーリー伯爵夫妻は品がよく落ち着いた人たちで、伯爵は黒髪でダンディな渋さのあるおじさま、伯爵夫人は金髪で色白、切れ長な目のクールビューティだった。
マクロンの顔立ちは伯爵夫人に似たようである。
先程と似たような挨拶と談笑を繰り広げた後、マクロンがメイリーンの素晴らしさを褒めそやすという謎の時間があり、侯爵夫妻も一応謙遜はしているものの、頬がわずかに赤く色づいているため、その嬉しさは隠せていなかった。
ウィーリー伯爵夫妻も手放しで褒めてくれるが、メイリーンとしては社交の場でどう反応したものか困っていた。しかし、いつも屋敷で繰り広げられる褒めそやしの時間で少しずつ緊張がほぐれたのも確かだった。
「マクロン様、過分なお言葉をいただきありがとうございます・・・。」
結局、メイリーンはいつも通りの言葉で、いつも通りにマクロンに対応したのだった。
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