23話
メイリーンの様子と王都のマクロンの様子の二本立て?です。
日々刻々と肌寒く感じる風を受けながら、王都に向かう馬車の中にメイリーンたちは乗り込んだ。
馬車は侯爵家の紋章が入ったひときわ豪華な物と、堅牢な造りの荷馬車や従者のための馬車がいくつも連なっている。侯爵家の騎士団が馬に騎乗して、先導、護衛をしている。
侯爵家は王都から馬車で休憩を挟みながらゆっくり進んで2日程度、南に下った場所にあり、領地内に湖や川があり、自然豊かな土地である。さらには王都からさほど離れておらず物資の輸送が容易なことから経済的にも発展していた。
川や湖畔で取れる魚、農作物、畜産物、花、農家の内職から始まった織物や工芸品などが領地内から集まり、取引され、そして王都へ運ばれていくのだ。
王都へ向かう道は大きな街道沿いに宿場町がいくつもあり、今回も先触を出して、泊まる宿はすでに確保してある。
しかし、天候不順やトラブルなどに備えて、町に寄れない時は馬車の中でも眠れるように通常のものよりも広く快適に整えてあった。
また、侯爵家に対してそんなことをすれば死刑が待っているだが、万が一襲われた時のために籠城できるように、強固な作りをしていて、毛布がわりのブランケットに、良い素材を使ったドライフルーツや蜂蜜漬けのナッツ、干し肉、ワイン、小さな水樽などの食料を持ち込んでいる。携帯食料としても、嗜好品としても、どちらにせよ楽しめる逸品だ。
シャーリーからこれらの説明を受けてメイリーンは「ふむふむ。なるほど〜、よく考えてるんだな〜。」と感心してしまった。
シャーリーによってふかふかのクッションと柔らかなブランケットに囲まれて座り、さらには隣に来たシロちゃんを撫でながら外の景色を眺めている。ものすごく贅沢な旅路だ。
大きな馬車なので一般的な馬車よりも進みは遅いが揺れは抑えられており、快適と言えた。
ちなみにシロちゃんは事前にお願いした通りにしゃべらずに大人しくしている。たまにメイリーンを見ては尻尾を振ってくれる。
休憩の時には外でブラッシングをしているので、毛並みはつやっつやである。
侯爵夫妻は、気を抜いてぼーっとするメイリーンとは違って、王都でのスケジュールや社交相手に関して話し合っている。メイリーンに聞かせる内容でもないので、2人だけで良いようだ。仲が良さそうに意見を交わしている両親の姿もなんだか平和だった。
「はあ〜、このまま平和に終わってくれたらな〜。」としみじみ思うメイリーンだった。
◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆
メイリーンたちが出発する2週間前にはマクロンは王都に着いていた。マクロンは従者とともに馬で向かい、1日で旅程を終えていた。
王都に屋敷を構える実家への帰省もあるのだが、侯爵の懸念である、子どもなのに新年祝賀パーティーに呼ばれたメイリーンについて、家族や宮廷魔術師のツテで出来るだけ情報を集めるようにお願いされたのである。
従兄弟であるウィリアム子爵家の次男が王城に式典部門の文官として勤めているため、今回の新年祝賀パーティーの参加者について質問したところ、「子どもの参加者は今までいなかった。今回はメイリーン1人だけである。招待した理由は不明。」との答えだった。
さらには、従兄弟には「選考には関わっていないのでこれ以上はわからない。力になれず申し訳ない。」と言われてしまった。
王城でも参加者についてはその部門以外には広まっていないため、特に噂などは存在していなかった。
「と、言うことは、どこかの派閥や貴族家ではなく、王家直々での人材の囲い込みか?もしかして魔法属性の多さを知られたのか・・・。かなりの飛び級で学院に入れるのだろうか。いや、魔法がなくとも年齢の割に非常に優秀なのだから、捻って考えずとも王族の御学友か?」
優秀な宮廷魔導師であったマクロンにも、情報の少なさから事情がいまひとつ特定できず仕舞いで、その後もこれといった情報が集まらないまま時間が過ぎていった。
そして、少ない事前情報と、他派閥や貴族家の動きがないことを王都の別邸に着いた侯爵に報告したのだった。
これには侯爵も首を捻るばかりで、どうにも判断しようがない様子で、悪い情報がなかったことに安堵するくらいしか反応を示さなかった。
どうにも締まらない状況のまま、新年を目前に華やかな社交の時期が始まり、侯爵家も慌ただしく過ごしていくのだった。
そして、メイリーンは社交デビューとなる新年祝賀パーティーまでは、シロちゃんと一緒に王都の屋敷をゆっくり堪能するのだった。
貴族の携帯食料ってやっぱりおいしそうなイメージ。
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