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22話

味わい深さのある濃い茶色、オーク材を惜しげもなく使った侯爵の執務室に、侯爵夫人とその専属メイドのうち1名と、メイリーンと専属メイドのシャーリーが呼ばれていた。


がっしりとした見た目に見事な彫り込みのある執務机を前に侯爵は皮張りのチェアに悠然と座っている。斜め後ろには執事が控えている。

また、侯爵夫人とメイリーンは執務室の真ん中にある皮張りの豪奢なソファに座って、メイドからお茶をサーブしてもらっている。


なぜ家族で話すのにいつもの談話室でなく、執務室なのだろうか。なぜ父親はソファでなく、執務机にいるのだろうか。メイリーンは疑問に思いつつも口にできないでいた。

メイドたちのサーブが終わるまで、誰も口を開かなかったため、口火を切る勇気がなかったからであった。


部屋に高そうな紅茶特有の華やかな香りが広がり、役目を終えたメイドが品良くしずしずと、音を立てぬように壁際に下がった。目線は侯爵家の人間とかち合わないように常に下げたままである。



「さて。今日はわたしから王都に行く前に少し話があってこの場を設けた。あと3日ほどで屋敷を出発するに当たって、これまでパーティーのための服の仕立てやメイリーンの礼儀作法の習得、それぞれの旅程の準備などはそのほとんどが終わりに近づいていると思う。」



侯爵が侯爵夫人とメイリーンを順に見つめるので、メイリーンは侯爵夫人に倣って、深く頷いた。服の仕立てや礼儀作法のお勉強はよく頑張った。魔法の練習をそっちのけで。

侯爵は周りをゆっくりと見渡してから次の話を始める。



「メイリーンの王都や王城の訪問は初めてのことだから、とても刺激を受けると思う。慣れないことについては、わたしは父として全力で支援したいと思う。みなも協力してほしい。」



侯爵の言葉に侯爵夫人がしっかりと頷く。執事やメイドは更に深く頭を下げる。侯爵は話を続ける。



「これは懸案でもあるのだが、まだ貴族と接することに慣れていないメイリーンには、他の貴族から言質を取られる可能性がある。わたしに明確に敵対する相手はいないはずだが、その反面、取り入るために子どもであるメイリーンに近づくような人には注意が必要だ。

そのため、メイリーンには、誰かと約束をしないように気をつけてほしい。たとえお茶会の誘いであっても、安易に受け入れずに、両親の許可がいると返答してほしい。また、みなにも、メイリーンが1人にならないように、誰かがメイリーンを目的に近づいてきたら、わたしや妻のもとに誘導するようにしてほしい。誘導が難しい状況なら、わたしや妻の側にいる者が常によく見た上で知らせてほしい。」



執事とメイドたちが「承りました。」と次々に言い、また深く頭を下げた。

メイリーンは話を聞きながら背筋がゾワゾワとしていた。自分がしくじれば、侯爵家が他の貴族にいいようにされかねないのだ。そして、普段は王城に来ることもない子どもは格好のターゲットだ。



「特に、メイリーンとの婚姻を得るために、誰かに引き合わせようとする可能性が高い。王城に子どもが呼ばれることは稀だがないことも無い。もしその場で他の男児を紹介された場合、肯定的な意見を述べるとそれを言質としてその場で取り込まれる可能性がある。よって、異性のことはよくわからないと否定も肯定もせずに曖昧に笑ってやり過ごすようにしてほしい。」


「お父様、わかりました。」


「うむ。メイリーンなら大丈夫だと思うが、良かれと思ってほんの少しでも褒めたら、お互いに惚れ合っているだとか、婚約したも同然だなどと触れ回るような輩もいる。

婚姻は貴族に取って重要だからこそ必死になるのだろうが、そういった相手とうかつに縁を結ぶわけにはいかない。そういう手段を取るような家は結婚後の待遇も悪そうだからやめたほうが良い。」


「そうですわね。メイリーンを渡すとしたらじっくりしっかり精査しませんと。」


「その通りだ。半端者になど、決して渡せない。」



両親がしっかりと視線を合わせて、ふんすと意気込んでいる。愛情たっぷりである。頼もしい。



「メイリーンは幼いながらも、賢く、美しく、優しく、気品に溢れ、非の打ちどころのない淑女だ。しかし、貴族としての経験値は無い。王城に行くことで箔をつけ、傷は避けたい。よって、この場にいる全員で支えていこう。」


「わかりましたわ。」


「「承知いたしました。」」


「みな、よろしく頼む。」


「みなさま、わたくしからもよろしくお願いします。」



侯爵の熱い言葉に聞き入ってしまったけど、最後はちゃんと自分の口からお願いできたメイリーンだった。


戦に向かうかのような決意を固めた一家のシーン。

パパの力説。


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