2話
あたり一面が真っ白な世界に驚いていると、白髪で洋風な顔立ちの11~12歳くらいに見える少年がゆっくりと近寄ってきた。
昔、映画で見た古代ローマ人のように大きな白い布を体に巻き付けた少年がいる以外には、何もない空間だった。
「驚かせてしまい、申し訳ありません。簡単に自己紹介しますと、私はいわゆる神です。あなたには私の担当する異世界に転生していただきたいと思っています」
と、少年が話しかけてきた。
名前を呼ばれたことにも、話の内容にも驚いて、固まってしまう。
異質な空間に2人だけで立ち尽くしている状況からも、テレビドラマの撮影のようにも見えない。
「一体、どういうこと・・・?」
混乱しながらようやく言葉を絞り出した。
少年は微笑みながら、話しかけてくる。
「少し前から地上の様子を見ていたのですが、今の世界に疲れきっている貴女を見て、私の担当する世界に招きたいと思ったのです。あなたは、もっと自由に生きたいと思いませんか」
完全に怪しい新興宗教の勧誘だ。
ただ、お酒の勢いもあって、いつになく本音がこぼれてしまう。
「わたし、私は・・・。もしも、家族や友人が悲しまないなら、今の生活から離れたい。でも、そんなことできるわけないから、地道に頑張っていくしかない・・・」
「やはりそうですか。お気持ちを聞かせていただき、ありがとうございます。大丈夫、あなたの希望はすべて叶えられますよ。」
もしも、でも、とたらればを話すだめな自分に辟易しながらも、何とか話しきった。
このわけのわからない状況が夢かもしれないから、自分に素直になろうと思えたのだ。
私が話し切るまでじっと耳を傾けてくれていた少年がゆっくりと右手を斜め上に挙げると、キラキラとした光が舞い上がり、半透明のボードが浮かび上がった。
■ステータスボード
名前:メイリーン
年齢:0歳
職業:なし
レベル:1
HP:100
MP:100
魔法:全属性
スキル:鑑定
ギフト:アイテムボックス
しばらく呆然としてしまい、内容が呑み込めなかったが、徐々に落ち着いたのか、とりあえず上から順に見ていく。
ステータスボードか・・・。私のステータスボード。
メイリーンって名前かわいいな、なんて思いながら、ステータスボードの上から下までを辿っていった。
読み終わると、今度は過去にはまって読んだ異世界転生ものの漫画の知識と照らし合わせる。
漫画はほとんどグルメ漫画しか読まないけれど、どうやら能力はチート仕様のようだ。魔法の全属性とアイテムボックス、それに鑑定があることでなんとなくそう思った。
「どうやら、異世界に対する知識があるみたいですね。なにかご希望はありますか?」
「ええっと・・・。私はグルメ漫画しか読まないから、料理に関するスキルはほしいかな。後、できれば今の世界のレシピも。」
「いいですよ。料理スキルを追加しますね。レシピは、検索機能をつけておきますね。」
■ステータスボード
名前:メイリーン
年齢:0歳
職業:なし
レベル:1
HP:100
MP:100
魔法:全属性
スキル:料理、鑑定
ギフト:アイテムボックス、レシピ検索
言ってみたら、あっさりと受け入れられた。
もう一度ステータスボードを眺めていて、ふと気になって、質問してみる。
「0歳ってことは、転生?どこかの家に生まれ変わるのかな。」
少年は私に向かって微笑みながら答えてくれる。
「そうなります。優しい両親のいる家庭を選びました。きっと心穏やかに暮らせますよ。」
少年の優しい笑顔と温かな気遣いになんだかうるっと来てしまう。少し疲れていたのかな。
「ありがとう。もう十分だよ。」
「良かったです。それでは、私の担当する世界をお楽しみくださいね。」
目の前がゆっくりと暗くなる。不思議と安心感があり、怖くはなかった。
怪しい勧誘ってこんなイメージ。




