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16話

シロちゃんが来た日の朝は、なかなか大変だった。




あの後、シロちゃんには、二人きりの時以外はしゃべらないように約束してもらって、メイドのシャーリーが来るのを待った。


いつもなら、ノックして入室した後すぐに作業に取り掛かるシャーリーが、いるはずのないペッドを抱きしめているメイリーンを見て固まってしまった。



「・・・え、メイリーン様?あの?」



「混乱させてごめんなさい。事前に伝えることができなかったけれど、今日から一緒に過ごすことになるの。この子、シロちゃんって言うのよ。」


「・・・はい・・・。」



いきなり驚かせてしまって申し訳ない気持ちを素直に伝えて、できるだけゆっくりと丁寧に伝えてみた。


シャーリーは彼女らしくない空返事後にしばらくシロちゃんをじっと凝視していたが、何かに気が付いたようにハッとした表情をした後、いくらか落ち着いた様子で返答する。



「取り乱してしまい、申し訳ございません。かしこまりました。メイリーン様の食事が終わられた後に、必要なものを揃えて参ります。何かご希望がありましたらお申しつけくださいませ。」


「ありがとう。ひとまずはお任せしますね。追加があればまた頼みます。手に入りづらいものがあれば、私からお父様に話してみますから。」



朝食の間、シロちゃんにはお部屋で待機してもらい、食後に人払いをした談話室で父親である侯爵に事情を説明した。


もちろん、少年神のことは伏せる。神と話せる手段があるなんて知られないほうがいい。それに、正直に話したところで重い隠し事となるのだから、父親に精神的な負担を与えたくもない。


話せる範囲で伝える。つまり、まずは朝起きたらなぜか神獣と呼ばれる存在のフェンリルがソファにいたこと。そして、そのフェンリルは会話ができるということの2つだけだ。


侯爵は目を白黒させながら話を聞いていたけど、とりあえずシロちゃんに会わせることにして、侯爵と一緒に私のお部屋に移動した。



「お父様、こちらがシロちゃんです。シロちゃん、私の父よ。今だけは、少しの間、おしゃべりしてくれないかしら。」


「ええ。いいわよ。こんにちは。シロと申します。お世話になります。」


「えっ・・・、ああ。こんにちは。メイリーンの父親です。どうぞよろしく。」


父親がオロオロと狼狽している。いつもの貴族的な挨拶や名乗りもなく、いつになく挙動不審だ。



「お父様、驚かせてしまって申し訳ありません。」



そう言って、父親の手をゆっくりと取り、美少女必殺の上目遣いで申し訳なさそうに見つめてみた。


魂が抜けたように呆然とした様子の父親がゆーっくりとこちらを見ると、徐々に気を保ててきたようで、いつもの侯爵らしい余裕と品のある顔つきが戻ってきた。



「ああ。メイリーン。謝らなくて良いのだ。しかし、驚いてしまったよ。こんなことが人生で起こるなんて。伝説のフェンリル様に話しかけられるなんて、聞いたこともない出来事だよ。」



そういえば、家の蔵書にフェンリルが出てくるものが1冊はあったけれど、神話に関する本だった気がする。


内容としてはたしか、神様の下には天使が集い、神の御心を世に示している。その天使の使徒として、フェンリルなどの眷属たちが天界から地上を繋ぎ、神の啓示を授けているという話だったような。


フェンリルって、前世の異世界物の作品でも聖獣キャラでたまに見かけていたけど、今世でも物凄い高位の存在だったのね。


なんというカオスな状況。お父様、よく正気を取り戻せましたね。

いくら美少女があざとく上目遣いしたとはいえ、信仰する対象に近い存在相手に気を確かに保てたのはすごい。



「あの・・・。お父様、いかがいたしましょうか。」


「教会に知らせるのは・・・、いや、どうしたものか。まずは国王様にお知らせすべきか。ううむ。対外的なことは少し考える時間が欲しい。メイリーン、まずは屋敷での当座の対応を考えようか。」


「お父様、わかりました。先程、シロちゃんに確認したところ、神から私と一緒にいるように言われたそうです。他の指示は特にないとのことでした。」


「ふむ・・・。そうなると、突貫ではなく我が屋敷に腰を据えて暮らせるような体制が必要だな。いきなりフェンリル様であることを知らせて混乱を招くよりは、メイリーンのお友達ということにして、侯爵家の一員としての待遇が良いだろう。」



ぱっと見はもふもふして可愛らしい小型犬のようなシロちゃんだが、侯爵としては伝説のフェンリルに向かって、ペッドを演じてほしいとも言えず、困った挙句に”お友達”という表現を使ってみたのだが、その言葉を聞いた直後、シロちゃんは目を輝かせて大いに喜んでいた。



「メイリーンのお友達!いいね!」


「私も嬉しい。シロちゃん、よろしくね。」



小走りでメイリーンに軽く体当たりしてきたシロちゃんを、優しく抱き留めて、頭をなでてあげる。この世界に友達がいなかったメイリーンとしては、実は結構嬉しい。


しかも、シロちゃんは愛くるしい見た目だけでなく、性格が純粋で元気いっぱいなので、なかなか癒されるのだ。


愛娘と小さな聖獣フェンリルの微笑ましい光景にほっこりする侯爵だが、すぐさま、この後どうしたものか頭を悩ませ始めていた。

シロちゃん降臨!!!


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