11話
洗礼のやり直しなどという前代未聞のお願いは、貴族にしか許されない我儘かもしれなかったが、兎にも角にも、もう一度、私の洗礼をしてもらった。
洗礼の結果としては4属性に変更されていたので、私としてはほっとできた。
ただ、周りの反応としては、洗礼結果が変わることがあるのかという疑問が湧き上がってしまったようで、私は更にもう一度、洗礼を行い、4属性であることを確定させた。
家庭教師のマクロンとしては、5属性でなくとも、4属性であっても素晴らしいことだと延々と熱弁を振るってきたが、全てのからくりを知る私としては割とどうでも良かったので、愛想笑いをしながら適度に相槌を打っておいた。
教会を辞した後、帰りの馬車の中で、私はマクロンに向かって、自分の胸中を話した。
さすがに教会で話すのは躊躇われたが、ここなら誰もいない。
先程の少年神の言葉に後押しを受けて、一歩踏み出す覚悟を決めて、思い切って踏みこむ。
「マクロン様。私は神から授かった素晴らしい能力について、光栄に思っています。」
「はい。とてもとても素晴らしい才能です。奇跡の場に立ち会えて光栄でございました。」
「・・・ええ。ただ、この能力は大きすぎて、まだ未熟な身には過大すぎる評価がつきまとうと思うのです。」
「そんな。メイリーン様は素晴らしい・・・ああ。いえ、確かに、早期に色んな方が期待して、好き好きに意見が飛び交いますね。失礼いたしました。私も少々興奮していたようです。メイリーン様のご心配はごもっともです。」
「はい。わたくしは、お父様、お母様とともにできるだけ長く、穏やかに暮らしたいのです。」
よし、言い切った!言ったぞ。どうだ・・・という内心のドヤ顔を表に出すわけにもいかないので、そのまま少しうつむいて、マクロンの言葉を待った。
私の言葉で7歳の幼い子供に過度な重圧を与えていたことにハッと気づいたらしいマクロンは、一気にシュンとして、なんだか申し訳なさそうにしていた。
マクロンは良い人なんだよね。たまにちょっと力が入りやすいだけでね。普段はもっと冷静なんだけどね。
4属性以上って本当に珍しいんだろうね。
「いえ、良いのです。ただ、私がまだ何をしたいか決められない中で、生活に急激な変化を与えるようなことを避けるために、マクロン様には協力していただきたいのです。」
「メイリーン様は、本当に賢くていらっしゃる。ついご年齢忘れてしまいます。私が浮かれている間に、そのようなお考えをお持ちだったとは。流石でいらっしゃいますね。」
マクロンがこちらを見て、目を細めながら微笑んだ。
そして真面目な顔になって、窓の外を数秒眺めてから、こちらに顔を向けた。
「4属性を持つこと自体が相当に稀なことですので、今後どのような可能性があるかを考えつくすことはできないでしょう。
ただし、私から旦那様に、メイリーン様が成人するまでの間は、他の貴族の子女と同じようにご自宅で過ごせるように進言いたします。」
「マクロン様、ありがとうございます。」
やったー!とりあえずは普通の生活ができるよーーー!
訳わからない国営の研究所に連れていかれたり、修行の旅に出たりしなくて済んだ。いや、全部妄想だけど。ほっとして目尻に少し涙が浮いてくる。
「メイリーン様、そんなに不安になさらなくても、私も微力ながら支えますので、いつでもご相談くださいね。」
私がうるうるしていたら、マクロンがめずらしく子供に対する態度で私に接してくる。
おずおずとマクロンが頭に手を添えてきた。そして、しばらくしたら、手を左右にわずかにずりずりと動かしていた。
えーと、これでなでているつもりなのかな。
手が重たいけど、まあ、いいや。とにかく今回は絶体絶命の大ピンチだった。
両親への報告があるけど、家庭教師が味方になってくれたので、だいぶ安心して向かうことができるのだった。
なんだか、マクロンとも少し打ち解けられた気がするから、こういう場面も無駄にはならないってことなのかな。
マクロンは冷静になったようで、ブツブツとつぶやきながら、考えを整理しているようだった。
「ああ。でも、ご高名が広がると、婚姻を希望する貴族が接してきそうですね。今後のために貴族の派閥や人間関係についてもお伝えして対策していかなければ。」
さらりと爆弾発言があって、一気に頭が痛くなった。貴族だから結婚は仕方ないけれど、まだ考えたくもない。今の発音はとりあえず聞かなかったことにしよう。
しかも、魔法属性が多いから血縁に組み込みたいっていう婚姻になるのかな。
まだ7歳だけど、結婚に関しては貴族はものすごくせっかちだから心配だ。
せめて、穏やかで優しい性格の男性がいいなあ・・・。
そしてできるだけ放っておいてほしい。
壊れ気味→冷静になったマクロン。
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