10話
祝10話。まだまだ続きます。
真っ白な空間に、瞬きを繰り返して目を慣らしていると、左側から声がかかった。
「メイリーンさん、ごめんなさい。なんだか騒ぎになっていますね。」
声の方を見てみると、つい先程と変わらないギリシャ神話の風の衣装を着た少年神が立っていた。すまなさそうな表情でおずおずとこちらを見ている。
「あの。全属性付与はありがたいのですが、5属性があるだけでも相当目立つみたいなんですよね。これ、時間を巻き戻すとか、隠ぺいするとか、なんとかできませんか。」
「それは・・・うーん。やっぱり困りますよね。ただ、すみませんが、時間や記憶の操作はできないです。少し苦しい状況なのですが、もう一度、洗礼を行うことで、4属性に変更するのはどうでしょうか。」
「なるほど・・・。それくらいがぎりぎり納得できるかもしれませんね。もう少し無理をして、3属性以下でも良いくらいです。」
「そこまで減らすと、減りすぎたことで目立つような。お祈りをして属性が減るのもおかしな話なので、すでにだいぶ苦しいですが・・・。それにせっかく魔法が使えるのにそれを習得する機会が減ってしまいますね。」
この後しばらく、4属性の公開を推す神様を相手にうだうだ言う私、というターンが続く。
しかし、よく考えると、せっかく気を遣って他の人よりハイスペックにしてもらったのに、引きこもりたいからって社会に貢献するのを嫌がるってなんか罪悪感がある。
それになにより、あの子煩悩で愛情深い両親にいつかはなんらかの親孝行をしたいのだから、どこかでそれなりに力をつけないといけない。それが、魔法で叶えられるかもしれないのだ。
「わかりました。お手数をおかけしますが、4属性に見えるように再洗礼の時に細工をお願いします。」
「はい。こちらこそ、騒ぎになってしまってすみません。」
少年神が優しい微笑みでこちらに再度、謝罪してくる。
私、大人げないよなあ。
「あの、ここまで色々と能力を揃えていただいているのに、私まだ料理もしていないですし、魔法も大ごとになるなら嫌だなってしり込みしてしまって・・・本当にごめんなさい。」
「メイリーンさん。こちらが勝手にしたことなので、気にしないでください。むしろ・・・大ごとになってしまう申し訳ありません。
そして、今、自分の気持ちを吐露したように、これからはぜひ自分の気持ちを大事にしてみてください。この後、あなたはどうしたいですか?このまま帰ってから、大騒ぎになって、その後の生涯は国の機関に従事しますか?
もし望んでいないなら、”そんなことしたくない”と最初から周りに言いましょう。そしてそのために、ご自身がどうしたいかをよく考えてみてください。のんびりしたいなら、のんびりしたいと決めて、それを守り抜きましょう。ね?」
少年神がゆっくりと歩み寄りながら、優しく話しかけてくれる。
たしかにそうだ。貴族になったから、特別に多くの能力をもらったから、そうやって状況を並べていたら動けなくなる。全てをこなせるような器用さなんて前世からなかった。
今のところの私はできるだけ怠惰に、そして穏やかに過ごしたい。
貴族として生きるにしても、当面は、幼少期の間くらいは何も考えずに過ごしたい。
そして、その後の選択肢は親を含めて話し合っていけばいい。
少年神の言葉から、そんな風に気持ちを整理することができた。
「ありがとうございます。さっきは焦ってしまいましたが、自分の気持ちに従って、周りに流されないようにしてみます。」
「ええ。メイリーンさんらしく過ごしてみてください。そろそろ戻りましょう。それでは、良い人生を。」
真っ白な空間いっぱいに光が満たされて、微笑む少年神が見えなくなると、祭壇の前に戻っていた。
先程のまま、うつむいて、胸の前で手を組んだポーズのままだ。
私はゆっくりと指をほどきながら、体の向きを変えると、シスターに向かってお願いした。
「申し訳ありませんが、最後に確かめたいので、もう一度洗礼をお願いします。」
ひとまずは10話まで書けて嬉しいです。
お読みいただきありがとうございます。
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