表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/64

死別

あれは受験料を振り込みに郵便局へ行ったときの事だった。

「動くな!」

銃を持った人たちがぞろぞろ入ってきた。

「またか、」

持ち前の不幸のおかげかもはや慣れたことではあった。こういう時はじっと目立たぬようにすればいい。

けれどここにいる人たちは自らの想像を絶するほどに狂っていた。


銃声


誰かが死んだ。

「ははは!素晴らしい!命の輝き!今日はこんなにも命がある」

狂ってる。どうしよう。駄目だ。今死んだら駄目なんだ。あの人との約束を果たせない。

地獄の時間。


銃声


一人、また一人と死んでいく。老若男女問わず死んでいく。外には警察、それに

「何故ここに!?」

彼がいる。駄目だ。僕が死ぬのは駄目だ。彼が死ぬのはもっと駄目だ。

「おいそこの小僧!」

狂人に呼ばれる。こればかりは自分の不運を呪わずにはいられない。

「は、はい」

「この銃を持て」

気が弱そうだから選ばれたのか、

「良いかその銃で人を殺せ」

「そん、そんな僕には」

「お前には俺たちと同じ匂いを感じるんだ。お前は世界に絶望しているだろう。だから命の輝きを見て、救われるのだ」

狂人はなんの気まぐれか、外に立つ彼を中に入れた。

「大丈夫か、ツバキ!」

彼は拘束され、身動きが取れない。

「ツバキか、良い名前だ。ツバキ、あの男をその銃で撃て」

「む、無理です」

「やれ」

その言葉はひどく冷酷で、鋭い。

「い、嫌だ、僕にはできない」

「ツバキ!俺を撃て!」

彼が叫ぶ。その言葉がどれほどつらいことか、

「ほら?あの男もそう望んでいる。さあ、撃て!」

「はあ、はあ、」

荒々しい吐息、どうすれば。

「はいそれじゃあこの少年が撃つまで別の人殺します!」

明るい顔、まるでゲームをしている少年の様だ。

「わかった。撃つ、撃てばいいんだろ」

「お?早くしてくれよツバキ」

「はあ、はあ」



銃声



運悪く、一発目で急所に当たった。

「ああ、嘘だ、嘘だ」

「どうだ、これで君は俺たちと同類だ。殺人者」

囁くように男は言う。ゆっくりと彼に歩み寄る。

「ごめんない、僕が」

「ツバキは悪くない。お前は生きるべきだ。なんせまだお前はまだ人生を知らない。お前はまだやることがある。生きて、幸せになれ。お前の不幸は、」


それから先の事はあまり覚えていない。


ただ、彼は僕の手によって死んだ。




「ツバキ、人生はお前のものだ。生きていればいつかわかる」


「ツバキ、お前は幸せになれ」


「伝承しろ、ツバキ」





『死別』




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ