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旅をする少年

 気が付くと、目の前には自然が広がっていた。どこまでも続く草原。空には鳥たち、目の前には、大型の獣。

「自分の不幸さを呪うよ」

『すごいな、あれ百年に一度くらいしか現れない超レアモンスターのブラックタイガーだぞ』

「嬉しくない!」

腰にはいつの間にか神の言っていた剣があった。

「って、しゃべるのかよこの剣!」

『おい、腐っても伝説の剣だぞ』

「なら何とかしろこの状況!」

『ああ、何とかできるぞ。お前にあのモンスターを斬れる力量があればな』

「な、使えねえな!なんか伝説の剣らしく光輝いてモンスターを焼いたり僕の身体能力を強化できたりしないのかよ」

『お前、俺、剣だぞ?剣に何を求めているんだ?』

さっきからまじでこの剣役に立ちそうにない。むしろ五月蠅いからマイナスだよ。さて、逃げるか。

大型の獣、ブラックタイガーはその大きな口からよだれを垂らし、こちらを見ている。獣の足はぱっとみで分かるほどに筋肉質で、それを自慢の黒い体毛が覆っていた。口から垣間見える牙は鋭く、噛まれたら一環の終わりだ。

「逃げよう」

『右に同じ』

振り返り、即座に逃げる体制に入る。さあ、命がけの鬼ごっこだ。

「おい!なんでこっち追いかけてくるんだよ!」

『さあ?お腹空いたんじゃね?』

獣は逃げる僕を追って走ってくる。今はまだ距離があるから良いものをこの速さでは直ぐに追いつかれる。

「くっそおおおおお!!!!」

━「逃走スキル」を獲得しました。

無機質な声が聞えた。正直走るので手一杯なのだが。

「なんだ⁉今の声!」

『おおお!!すごいぞ百年に一度現れるレアスキルだ!』

「なんかしょぼい!」

これが幸運、というのも神はこの剣のほかに、不幸の後に幸運が起きてプラスマイナス0になるようにしてくれた。他にも具体的に何をすればいいかも転移中に教えてくれた。

「おお、いくら走っても疲れないぞ!」

これもスキルの効果なのだろう。それに心無しか身体能力が上がって走るスピードも速くなっている。しかしただそれだけだ。追いつかれたらそれで終わり。何をもってこれで±(プラマイ)0になるのか誰か教えて欲しい。絶賛マイナスなのだが?

『街が見えて来たぞ!』

「ほんとだ!よし!」

目の前に見えた街へ半ば強引に飛び込む。街の入り口には門番が立っていて、明らかに簡単に入れる雰囲気じゃない。しかし、

「入れた!」

多分検門とかしてるかもしれなかったけど、入れたからいいや。これで±0だ。

「しかし、ここ何処だ?」

街に入ったのはいいがこれからどうしよう。取り合えず歩き回ってみるか。

「なあ、φ、お前道分かるか?」

『わかるわけないだろう。剣だぞ?』

さて、行くか。


数時間後

「迷った」

『乙』


 ここは何処か西洋を感じさせる街並み。人は多くはないが少なくもないほどにいる。中には武器と鎧をつけた衛兵も混ざっていた。そんな初めて見る光景に僕ははしゃいだ。そして、迷った。


そしていつの間にか路地裏に立っていた。さて、不幸な人間が路地裏に行くとどうなるか?つまり、

「おいおい、俺たちと良いことしようぜ」

「放してください!」

やばい連中に出くわす。見ると少女があからさまな悪漢、5人に襲われている。

少女は僕と同じくらいの年齢に見える。髪は黒の長髪、腰には短剣。

「はあ、ため息しか出ない」

『あれぐらいだったらお前でも倒せるんじゃねえのか?俺を使えば』

腰の剣を見据える。確かに悪漢たちは粗末なナイフくらいしかもっていない。しかし、

「断る。人間なんか斬りたくないね」

『そうかよ。おーい!!そこの馬鹿ども!弱いものいじめは容赦できないなあ!』

と、剣が喋りやがった。

「てめえ!」

『五月蠅い!どうせ助けるだろうが』

「そうだけど!」

と慌てて逃走スキルを発動する(逃げるだけなんだけどね、ほら、かっこよく言いたかったんだよ)。

「ちょっと失礼!」

「な!」

悪漢5人をくぐりぬけ、少女を抱える。それから悪漢が見えなくなるまで走り続ける。

「これ、スキルの「逃走」じゃない」

「知ってるのか?」

「ええ、使用者がめったに現れないことで有名なスキルよ。」

そういうのってもっとすごいスキルのはずじゃ?なんだろう、不幸だ。

「ここまでくれば大丈夫かな?」

腕に抱いていた少女を下す。

「あのありがとうございます。できれば何かお礼を」

と瞬間、横から少女の知り合いっぽい人が横から入って来た。

「やあルート、何処にもいないから心配していたよ」

その男は細見で年齢は僕と同じくらい、とても優しそうに見えた。体には若干の軽装備と腰には剣が据えられていた。

「こちらの方は?」

「ああ、こちらの方は路地裏で襲われていた所を助けてくれたんです」

目の前で二人が会話をしている。

「ありがとう。ルートを救ってくれて。俺からも例をさせてくれ」

「あ、いえ別に、」

「申し遅れた、俺の名前はコニカル・ダイオード。この世界の勇者だ」

ここで幸運が来た。ナイス幸運!素晴らしい。

「あえと、お礼と云うか、貴方たちと同行させてもらえないでしょうか。僕、いま無一文でして」

「ああ、ルートを救ってくれたお礼だ。良いよな?ルート」

「はい」

ルートが返事をするとコニカル・ダイオードに連れられ、宿屋のようなところへ入っていく。

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