6 混ぜるな 野心家と強力な兵器
誰に言ったわけでもなく言い訳をしていたナイルは、“月に吠える者”の姿に変身しつつ、遠くを見つめる。
本人曰く抜き打ちテストをしていたため以外と時間がかかり、すぐそこまで来ていた。
「お手並み拝見といきますか」
ナイルは転移で洞窟の最奥、ひろめの空洞にスタンバイした。外に分身を残して。
「報告します!前方に600、記録にない洞窟を確認!例の存在の住みかと思われます!」
「よくやった。皆の者!作戦通り、洞窟用探索陣形!少数の監視を残し突入する!」
ナイルがある程度分かりやすいところに掘ったことが功を成し、あっさりと見付かった。
調査隊は計画通りに突入を開始した。その様子は高い能力を伺える。
入り口の警戒にあたる冒険者が息抜きに空を見ると、彼らの運命を示すがごとく、暗雲が風にのり視界の端に漂って来ていた。
冒険者が先頭に立ち、進んでいると足音に違和感を感じたが、報告する程度ではないと判断して、そのまま進んだ。
次に、冒険者よりは重装備の近衛兵が足を踏み込んだ瞬間、足元がミシッと言った瞬間、重さに耐えられず崩れた。その下には尖った岩があったが、重装備が命を助け、鎧が凹むだけですんだ。
そこからは順調だった。落とし穴は単なる地形とと判断され、音を頼りに穴を回避していく。
「記憶を曇らせる」
調査隊は確かにその声…ナイルの声を聞いたがすぐさまそれを忘れた。
調査に同行していた第一王子が、謎の声を聞いた。
「私のことを使ってくれる人はいるのだろうか…」
その声は地球であれば機械音声と呼ぶべきものであった。
そして王子は何かに導かれるが如く杖を見つけ、手に入れた。そして、その力を理解した。
そして、彼は何事もなかったかのように、歩き出した。
回りのものたちは、杖に何故か、生涯気づかなかった。