3 邂逅、別れ
彼の目が覚めると、まず目に入ったのは傾斜が70度位の、高い山。恐らく6,500mはあるだろう。
次に、背後から何か体に違和感を覚え後ろを振り返ると、彼に剣や弓、魔法らしき炎による攻撃が次々と降り注いでいた。
「クソったれ!あいつ目が覚めた!しかも効いている様子がねえ!“万物切断”!」
「ミーサはまだ起きないのか!?“鉄鋼貫通”!」
「喋ってないで手を動かす!彼女は正気じゃない!“フレイムストライク”!」
彼は自分に攻撃を加える人間3人と頭を抱えて震える女の子を見つけた。
いきなり見つかって攻撃されていることから、“混沌”の言っていたこの 体 が彼らにとって脅威だったのだと気づいた。
「いきなり見つかったか…殺すか?…いや、いきなりそれは…それよりも…攻撃は…あの御方の体なら効かなくても何ら不自然は無いから…」
彼の独り言は小さく、興奮状態の三人には何かを喋っていることだけが辛うじて分かった。
「何かの呪文か?強力なの来るぞ!衝げ…」
「直近24時間の記憶よ、消えろ」
彼は咄嗟に殺すという判断はできず、記憶を消すにとどめた。
副作用で意識を失った4人を放置し、最初に見つけた山に向かった。
その際、元の世界なら、朱雀や鳳凰といった風に呼ばれたであろう姿になって。
彼と戦った4人はその後無事に町に帰った。その国一番の冒険者と呼ばれる者たちの、異常に遅い、且つ無事の帰還に、町の住民の歓声が鳴り響いた。