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12/10^16のキセキ〜異世界で長生きすればいいだけ……だけど妹たちに手を出すなら容赦しない!〜  作者: 嘉神かろ
第五章 時は隔てる

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第二十話 油断と不知は大敵

物語の約2/3が終わりました。

あと五十話くらいで完結予定です。

5-20 油断と不知は大敵


「それじゃブラン、頑張って」

「そんなに気負わなくて良いからね」

「そうよ。最悪負けても、私が仇とるから気楽に行きなさい!」

「う、うん」


 はい。今日は二回戦です。

 第一試合の出番を目前にしたブラン。予想に違わずガッチガチですね。これはこれで可愛いのでなんの問題もありませんが。……ありませんが!


 はい。スズのジト目はスルーです。そんなスズも可愛いですから!


「なっ!?」


 ゴフッ……。本音なんグフッ!? ちょ、わかりましたからそのお腹ゲシゲシするのやめてください! 割と本気で痛いんですが!?


「……ふふっ」

「あ、笑ったね!」

「うん。さっきよりいい顔になった。そのままよ、ブラン」

「うん。……姉様、スズ姉様、ありがと」


 ガハッ!! 何という凄まじいボディブロー……こりゃ、世界も夢じゃねえな!


「おーい、おねーちゃーん? もうブランちゃん行っちゃったよー?」



◆◇◆

 さて、と。いよいよですね。

 ジジ、川上流の名を(けが)すゴミ屑にお仕置きをする時間です。


 もしゴミ屑が一部だけなら、温情を見せるつもりでした。しかし、コイツらは上から下までゴミしかいない……。私達に、容赦する気なんてありません。


 だからでしょう。ブランの纏う空気が、いつも以上に刺々しいのは。


 今はそれが嬉しい。あの子も、この事で怒ってくれていることが。…………いえ、くれてというのはおかしいですね。ブランも私の家族。……ジジイの孫なんですから。


 さて、相手の獲物は……これは好都合。槍ですね。


 ブランの小太刀とは明らかに間合いが違うので、素人目に実力差が分かり易いでしょう。実際には多少苦戦をするかもしれませんが。


「始まったよ。うわー、ブランちゃん舐められてるね」

「構えてすらいませんね」


 完全に見た目で判断してますね、これは。


 対してブランは……両手の剣を下ろしたまま歩いて近づいて行きます。

 なるほど、そういう意図ですか。ええ、良いチョイスだと思います。


「まだあいつニヤニヤしたままだね。あっちには暗器の技は伝わってないのかな?」

「かもしれないわね。これだけあからさまにやってるのに気づかないんだもの」


 そのままブランはゆっくりと近づいていき、軽く斬りつけます。ただし狙ったのはこの後の戦いの支障にならない場所。全力のヤツを叩きのめさなければ意味がありませんから。


 真正面からフェイントを入れる事なく、ただ振り上げただけの剣など、普通は簡単に防がれます。

 しかしその剣は、あっさりとヤツの頬に赤い筋を刻みました。


「おー、動揺してる動揺してる。何か喚いてるね」


 周りから見たらブランがただ近づいて斬りつけただけですから、今のヤツは酷く滑稽ですね。良い気味です。


 ブランがやったのは認識をずらす型の基本技の一つで、仕組みを知っている相手にはあまり効果がありません。

 多少苦戦するかもしれないとは言いましたが、ブランの得意な暗器術が通じるなら心配ありませんね。

 どの程度模倣されてるかを知る意味も含め、良いチョイスでした。


「流石に構えたね」

「ここからが本番ってことね」


 中腰の位置に槍を構えたゴミ師範代その一。様子見中でしょ……ほう。


 ノーモーションからの急加速。そのままブランに刺突を繰り出します。


「魔力操作は下手じゃないみたいね」

「あれ、魔力でやってたの?」

「ええ。足元で魔力を放出したのよ。ジェットエンジンみたいにね」

「ふーん。今度やってみよっと」


 確かに、スズの『乱れ竜巻の型』との相性は良いでしょうね。


 そんな話をしている間にも試合は続きます。


 初めの刺突を難なく避けたブラン。避けながら懐に踏み込み、逆手に持ち替えた『黒月(こくげつ)』で相手の脇腹を狙います。


 これは槍の柄で防がれますが、背後を取りました。

 そのまま後ろから右の『白梅(しらうめ)』を振るいます。


 ちっ、浅いですね。『龍人族(ドラゴニユート)』の鱗は飾りでないということですか。


 更に斬りつけようとするブランを石突(いしづき)が襲います。

 遠心力の加わった重い一撃でしたが、打撃に合わせて後ろへ跳んだためほぼ無傷ですね。


 今の隙に正面を向いたゴミ師範代その一。仕切り直し? いえ、違いますね。


 一連のやり取りで呼吸を掴んだようです。ブランがスロットルを一つ上げました。


 一瞬、ブランが揺らめくように動いた後、その姿がブレます。先程とは比べ物にならない速度です。


 狼系の獣人としての特性と、これまでの訓練の成果から成るそのスピード。これには流石のゴミその一も面食らった模様。一瞬動きが止まります。

 まったく、あり得ませんね。


 とは言え相手もそれなりには研鑽を積んできた模様。カウンターを合わせてきました。


 冷たく鋭い槍の穂先が、ブランの愛らしく天使な顔を貫かんとしている。そんな状況に見えますが、私たちの中に慌てるものは居ません。


 勝ちを確信し、愉悦を浮かべていたその一の表情が再び、驚愕に歪みました。何せ、ブランが槍をすり抜けたように見えたはずですから。


 川上流歩法が奥義の一つ、『陽炎(かげろう)』。独特の揺れるような動きで相手の視覚を騙し、認識をズラす技です。ある程度極めれば、殺気などを利用して今のような現象を引き起こすこともできます。


 更に双刀術の奥義、『旋風(つむじかぜ)』。

 見えざる真空の刃、『鎌鼬』と刀身による斬撃を織り交ぜ惑わす連撃は、その一に防ぎ切れるものではありませんでした。


 全身を切り刻まれれ、大量に出血をしたならば、いくら頑丈な鱗を持っていたとしても関係ありません。


 貧血で膝をついた所で首をハネ、試合終了です。


「うーん、思ったよりあっさり終わったね?」

「相性の問題もあったわ。でもそれ以上に、ブランが成長してたってことよ」


 それにしたってあっさりでしたが。



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