第十話 荒れ狂う竜巻嵐と怒れる大火山
受験生さんがコレを見る頃には終わっているでしょう。
というわけで、受験生の皆さんセンターお疲れ様でした。
5-10 荒れ狂う竜巻嵐と大火山
支度を整えた私とスズは、ブランとジネルウァ様が稽古をしているという訓練場へ向かいます。以前ジネルウァ様と模擬戦をした場所です。
「ハハハ。まだまだ甘いな!」
「っ!」
訓練場について聞こえてきたのは、そんな声と連続して聞こえる剣戟の音。
「やってるやってる!」
「流石に胸を貸してもらってる状態ね」
剛の剣を主軸にするジネルウァ様に対して、ブランは速度と手数重視の、どちらかと言えば柔の剣が主です。『柔よく剛を制す』とは言いますが、ブランの技量ではまだまだ。それに続く『剛よく柔を断つ』の状態ですね。
「うん? おお、アルジェ。起きたのか!」
スズと入り口の脇に立ったまま気配を薄くして見ていたのですが、立ち位置が変わった拍子にジネルウァ様がコチラを発見したようですね。試合をやめて声をかけてきました。
「ええ。迷惑をかけたわね」
「何、気にしなくて良い」
「そんなことよりさ、次は私とやろーよ!」
スズ、そんな事って……。
「スズネも師範級であったな。いいだろう」
うん? ああ、なるほど。そうですか……。
「万が一があったとしても、私が自分でどうにかするわ」
「わかっているさ」
……まあいいでしょう。
「……それじゃ、やろっか」
「ああ」
二人は、距離をとって互いに向き合います。
ジネルウァ様が正眼の位置に構えるのは、刃渡りおよそ一メートル半、幅二十センチほどの細身の両手剣。
スズが両腕の力を抜いて自然体に構えるのは、刃渡り八十センチ弱、幅十センチほどの片手剣を二振り。
スズの戦闘スタイルはブランと同じくスピードと手数重視。ただし剛剣寄りです。
解放直後、『unknown』となっていたスズのステータスは、以下の通りになっています。
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〈ステータス〉
名前:スズネ・グラシア/F
種族:英雄種
年齢:17歳
スキル:
《身体スキル》
言語適正 制魂解放lv2(new) 仙法(new) 高速再生lv6(3up) 双剣帝lv8 闘王lv7(3up) 看破lv7 気力操作lvMax 威圧lv9 解体lv3(new) 舞姫lv7(4up) 隠密lv5(2up) 料理lv7(2up) 野生の感lv5(new) 魂魄領域拡張lv3(new)
《魔法スキル》
ストレージ (勇者) (鑑定?→)真実の瞳 神聖魔法lv Max 光魔法lvMax 魔力操作lv9 隠蔽lv7
称号:川上流師範代(双剣) (召喚者) (勇者) 宰相の加護 輝きの加護 ラッキーガール 舞姫 修験者 血の盟約(new) 解き放たれた美獣(new) 強き魂(new)
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色々ありますがとりあえず、スズも【強き魂】を獲得しました。やはり効果のない、魂が強い事を示すだけの称号のようですが……まあ良いでしょう。その内存在意義もわかる気がします。
私の見立てでは、技量はスズが、身体能力はジネルウァ様が其々数枚上手と言ったところです。
さてさて、どんな試合が見れますかね。
「合図、いる?」
「んー、じゃあお願いね」
硬貨を一枚取り出し、真上へ弾きます。
「落ちたら開始よ」
この言葉に返事はなく、二人は戦闘へと意識を切り替えました。
私とブランはさっさとアリス達のいる壁際へ移ります。
「……スズ姉様、本気」
「そうね」
だんだん加速しながらコインが落ちてきます。
スズが本気なのは、きっと、万が一の時の為。ジネルウァ様と、同じ意図を持っているのでしょう。
だけど、万が一なんて――
私が思考の海に沈みそうになった瞬間、甲高い音が響きます。スズの下からの一撃をジネルウァ様が剣で受けた音です。
――今は二人の戦いに集中しましょう。
◆◇◆
「むっ!?」
想像以上に重い一撃に、ジネルウァは驚嘆の声を漏らす。双剣を構える身長百六十センチ程の小柄なスズネを見て、ブランと同じタイプだと勘違いしていたのだ。
とは言え、ジネルウァが構えているのは両手持ちの剣。ただでさえ力ではジネルウァが勝っている。スズネに鍔迫り合いをする気はない。
弾かれた右手の剣の勢いに逆らわず、その回転力を左の剣で伝える。
これは受けずに一歩下がって躱したジネルウァ。その足元を襲うのは鋭い脚撃だ。
更にもう一歩後退。出来た間合いでジネルウァは、唐竹を割る一撃を繰り出す。
スズネは払った脚の勢いそのままに身体を捻り、剣を躱しながらジネルウァの右手側へ潜り込む。
右足を引き、右の剣を紙一重で躱したジネルウァが剣を振り上げようとするが、叶わない。
先の剣を追うように煌めいた双剣の片割れが、ジネルウァの腹を切り裂く。
追撃を試みるスズネを何かが阻む。ジネルウァの腹から舞う潜血だ。
「うわっと! 〈吸血〉スキルの隠し能力だっけ?」
「その通り!」
返事と共に、風切音を鳴らす剣がスズネに迫る。
「まだ、無駄があるみたいだね!」
迎え撃つスズネの剣に音はない。
剣と剣がぶつかる瞬間、スズネは手首の力を抜き、柔らかく受ける。
大剣を受けた右の剣を軸としてスズネは宙を舞う。
ジネルウァの剛力がその舞を加速させ、スズネの力とする。
両目を横断するような一閃は、膝の力を抜いて沈み込んだジネルウァの髪を切るに留められた。
スズネは着地を狙った蹴りを〈仙法〉の空中ジャンプで躱し、相手の頭上を越える。
着地。振り向きざまに突きを放つが、感じたのは硬い感触。
ジネルウァは剣の腹で受けた突きをそのまま引き込み、スズネの舞を止めようと試みる。
だが止まらない。その引き込む力すら利用してスズネは舞う。
続けて数度なる金属音。その度に感じる腕の痺れを無視して、ジネルウァは浅い溜めの『迦具津血』を放った。
「っ!」
やや強引に放たれたソレは体重の軽いスズネを吹き飛ばす。
〈縮地〉ですぐさま距離を詰めたジネルウァの追撃は、横なぎ。
双剣でガードしようとするスズネの脳裏を掠めたのは、とある既視感。次の瞬間、スズネは地面に叩きつけられていた。『渦撃』だ。
「カハっ!」
肺の空気を全て吐いたスズネを、ジネルウァは剣で更に押さえつける。
スズネが何とか手放さなかった両手の剣とジネルウァの剣とが擦れ合い、ギャリギャリと耳障りな音を立てる。
「くぅっ」
スズネは苦悶の声を上げながらも、剣を頭上へと反らせる。そして地面へめり込んだ大剣を双剣で押さえ込むように後転し、起き上がった。
そのまま距離を取り、呼吸を整える。
「今のは危なかったよ」
「決める気だったんだがな」
「残念でし、た!」
言い終わる前に、スズネは剣を薙ぐ。『鎌鼬』だ。
ジネルウァはスズネから視線を外すのを嫌い、大きくステップを踏んでコレを躱す。
その視線の先で、スズネの姿がブレた。
「それは悪手だぞ!」
〈縮地〉へとカウンターを合わせるべく、両手剣が振られる。
訓練場に響く、甲高い音。
果たして結果は、ジネルウァの腕が切り飛ばされるという形で表れた。
「くっ!?」
一瞬前に響いた金属音は、スズネの左手の剣にジネルウァのカウンターがぶつかる音。弾かれる剣の勢いで回転し、右手の剣で腕を奪ったのだ。
舞はまだ終わらない。
勢いを殺す事なく左手の剣で追撃。
一歩退きジネルウァは躱す。しかし剣を構え直す前に次の一撃が襲ってくる。
身体能力にものをいわせて躱していくが、その長身の肉体を彩る赤はどんどんと増えていく。
「くっ、舐めるな!」
王の覇気と共に吹き荒れたのは、魔法による突風。
スズネの舞が乱される。
その隙に回収した腕を接合。そして袈裟斬り。
スズネがジネルウァの右手側に避ければ、その後を横薙ぎが追う。
身を屈めて躱し、切り上げる。
今度は追う二太刀目もきっちりと躱したジネルウァが逆袈裟に切り上げれば、また剣を当ててその勢いを自身のモノとする。
剣を合わせる毎に、スズネの舞うリズムは早くなる。
その様は、当に竜巻。刀の『雷光の型』に並ぶ、双剣の奥義。『乱竜巻の型』だ。
それに気付いたジネルウァも、構えを変える。
荒れ狂うスズネの剣を前にして、その全てを防ぐのは数少ない守りの奥義。『大山の型』。
途切れる事無い嵐の如き連撃を見舞う型と、ひたすら守り一瞬の隙へと大噴火の如き一撃をたたき込む型。
対照的な二つの型がぶつかり合う。
もはや常人の目に両者のやり取りは見えない。
古の人々が神を見た、大自然の力を模した剣がぶつかり合う。
ソレは、永遠に続くかに思われた。
だが終わりは、突然訪れる。
大嵐が一瞬緩んだ。
この機を見逃さない。
大山は鳴動し、その怒りを解き放つ。
「オォォォォォオオ!!」
凝縮された一撃が、その乱気流の隙間へ叩き込まれる。
そして嵐の女神は、笑った。
怒りの炎はその風を捉える事なく受け流され、
その熱を受けてますます勢いを増した嵐は、
大山を切り刻んだ。
スズネのスキル〈仙法〉に統合されたスキル群です。
→・縮地 ・危機察知 ・気配察知 ・魔力察知 ・身体強化“気”+ 身体強化“魔”= 咸卦法 ・見切り
なお、〈直感〉は〈野生の感〉に進化しています。





