第六話 中立の都
5-6 中立の都
アルティカの絶叫を後ろに聞きながらセフィロティアから旅立って、早二ヶ月が経ちました。……誰ですか、私が恥ずかしくて逃げるように旅立ったとか言う人は。そんな事実はありません!
……そんな事より、この二ヶ月の変化を伝えていきましょう。
まず、冒険者ランク。
スズ、アリス、コスコルの三人も身分証代わりにと冒険者登録していました。セフィロティア到着時点では三人ともCランクだったのですが、この二ヶ月の間にスズがBランクへと上がっています。
ついでに、私もAランクになりました。正直どうでもいいんですがね。ブランとスズとの狩りを楽しむのが主目的だったので、昇格はただのおまけです。
ブランも実力的にはBランクになれるのですが、ほら、この子、貴族の前だとガチガチになりますから……。なんでジネルウァ様やアルティカは平気なんでしょう? ローズはともかく。
因みに、ローズ達王国の王族には元聖国組の事は伝えてあるので、一言言えばBランクにそのまま上がれる状態になっています。
なお、アリスとコスコルは私たち三人とは別のパーティという扱いになっています。……そうしなければコスコルが男一人で不憫ですからね。周りの視線的に。
続いて、アリスとコスコルの態度。
二人とも従者の立ち位置を改めるつもりは無いようですが、かなり気安く接してくれるようになりました。街を案内してもらっていた時にアルティカから何か言われたようなのですが、一体何を言われたのでしょうね? あれほど頑なだったというのに……え? そもそも二人は居たのかって? いや、居ましたよ。初日のお茶会では気を使って席を外していましたがね。
あとは……あ、そうそう。〈神聖魔法〉が『人族』以外にも発現するようになったっていう神託が世界中でありましたね。アーカウラの全住民に聞こえていたらしいです。
私が例の魔道具を破壊してから、元に戻るまで時間がかかったみたいですね。何となく管理者さんとは声が違ったように思いますが……タイトゥースと名乗ってましたから気のせいでしょう。
「マスター、間も無く街門です。準備をお願いします」
馭者をしていたコスコルから声が掛かりました。やっと、ですね。
「んーーーーーっ! はぁ。揺れが少ない魔道具の馬車って言っても、疲れるものは疲れるね」
「そうね」
「そうでしょうか? 普通の馬車に比べてかなり快適なのですが」
まあ、この世界の人からしたら贅沢な話なのかもしれません。
「アリスは王宮勤だったのに、こういう馬車に乗ることなかったの?」
「法王のお付きであれば兎も角、そうそうありません。遠出について行く時も、私は普通の馬車でしたし」
「へぇ、ちょっと意外」
確かに、贅を凝らしてそうな宮殿でしたがね。
◆◇◆
とりあえず一日分の宿をとります。
「おー、フカフカ!」
「こら、スズ。下に響くからやめなさい」
「はーい」
まったく……。
他の国の王都以上に厳重なチェックをうけ、私達が入った街は『学術都市イリュジオン』。学問によって発展した都市国家です。
都市国家と言っても、周辺諸国によって定められた中立地帯も治めているのでそれなりの国土があります。少し大きめの小国くらいですがね。
チェックが厳重なのは、各国から優秀な学生や研究者が集まるからですね。その様なVIPさん達が集うのが、このイリュジオンに数ある学院研究院の中で最高峰。つまりは世界最高峰の学院である『国立マギステル大学院』です。
「ふーん。大学院って、あっちにあった様なやつ?」
「いいえ、大きな学院で大学院ね」
「姉様、国立?」
「各国がお金を出して作ったから国立よ。この都市が建てたのとは違うわ」
その特性故に中立という事になっていますが、まあ、出した額で優遇不遇があるのは公然の秘密ですかね。特に最近は腐敗が進んでいるとかで……いえ、辞めましょう。胃を痛めている大学院の長で学術都市の長、『小人族』の総学長にはお気の毒ですが、巻き込まれフラグなんていりません。
「まあいいや。それで、これからどうする?」
「そうね、先ずはギルドに行っておきましょうか」
という訳で、冒険者ギルドです。
「若い人、それも魔法使いの人が多いね?」
「学生でしょう。魔法使いが多いのは、この街では武術が軽んじられてるからよ」
「へぇ、頭でっかちってことかな?」
「……スズ様、出来れば人が居るところでソレを言わないでいただけますか?」
「ん? あ、えへへっ」
めっちゃ睨まれてますね。
「ははは……アリス、それは暗に肯定していないかい?」
「コスコル……当然ですよ。魔法も得意とは言え、騎士である貴方は軽んじられる側なんですから」
あー熱い熱い。気安くなったのはいいんですが、目の前でイチャイチャされる機会が増えたんですよね……。
「……姉様、どうかした?」
「アリス達に対抗してイチャイチャしたかっただけよ」
「……ぎゅー!」
後ろからブランに抱きついていたら、向きを変えて抱きしめてくれました。天使です。ぎゅーって言いながら。大天使です。
「はいはい。二組ともその辺にして、クエストボード見に行こ。……別の意味で注目集めてるから」
おっと、これはこれは。失礼しました。
「あまり面白そうな依頼は無いわね」
「そう? この辺の学院からの依頼とか面白そうだよ?」
学院……。
「パスよ。……今きな臭いから、色々面倒事があるかもしれないの」
「あー……」
「私たちも、気になるものはありませんね」
アリス達もですか。んー……。
「散歩でもして明日か明後日には発ちましょうか」
「そうだね」
ブランも頷いています。
「では、我々は別行動をさせて戴きます」
「あー、了解。楽しんでらっしゃい」
「はい。失礼します」
綺麗なお辞儀をしてギルドを出て行く二人。どう考えてもデートですね。
「さて、私たちも行きましょうか。面倒な事になりそうだし」
「そうだねー」
「?」
貴族か何かと思われたみたいなんですよ。目的は何にせよ面倒は嫌です。
◆◇◆
めぼしい所は回り終わりましたかね?
「結構楽しかったね!」
「そうね。なんだか懐かしかったし」
私たち二人も、ついこの間まで学生でしたから。
「……姉様、あっち、血の匂いと争う音」
「…………ホントね。どうする?」
「気づいちゃったし、行ってみようよ」
スズがそう言うなら、仕方ありませんね。
「一応、気配は消しましょうか」
「あー、そうだね」
「オラっ! おい、ガードなんかしてんじゃねぇよ! 役立たずのマームを的として使ってやってるんだから、な!」
「きゃはは! ライル、マームに防がれてんじゃん」
「どーせ意味ねえよ」
「まーねー」
「おいライル、そろそろ代われよ」
「あん? しゃーねーな」
コレは、アレですね。
「アレだね」
「……また心を、んんっ。いじめね」
「酷い……」
一人を的にして、複数人が魔法では無い魔力の塊、魔力弾をぶつけています。きゃはきゃは煩い女が二人に、男が四人ですね。
とりあえず、気配を消すのをやめますか。
「っ! おい、誰か来た!」
「りょーかーい。コレどうする?」
「ほっとけ」
「行ったね」
「そうね」
……どうしましょうか。
「とりあえず傷を治して……話を聞くか、目を覚ます前に去るか…………」
「……っ! ふふふ」
スズ?
「どうかしたの?」
「いやー? ね、ブランちゃん」
「うん、何でもない」
ブランまで?
「まあいいわ。どうする? 話、聞く?」
「そうだね。どうせ関わるならね」
「わかったわ」
さて、どんなくだらない理由でしょうかね?





