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12/10^16のキセキ〜異世界で長生きすればいいだけ……だけど妹たちに手を出すなら容赦しない!〜  作者: 嘉神かろ
第五章 時は隔てる

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第五話 祖母と孫

活動報告ではお知らせしましたが、本業が忙しくなる為、暫く更新を二週に一度に変更します。


……二週でもキツイかもしれない…………。

5-5 祖母と孫


 笑いものにされた後は、以前約束した通りジジイの話を聞かせてもらいました。あのジジイ、年甲斐もなくヤンチャしてたみたいですね……。


「――世界樹防衛の時なんて、森を埋め尽くす魔物をほとんど一人で狩っちゃってね。流石に〈限界突破〉を習得してたわ。まあ、それ以降で使うことはなかったみたいだけど」

「この森いっぱい……さすがお祖父ちゃんって感じ」

「うん……」

「この辺りの魔物という事はAランクもそれなりにいるはずだが……」


 南北の端、辺境にある二つの魔境のように、世界樹周辺の森も魔素が濃いですからね。魔物は魔素の濃い場所を好むので、競争に勝てる強い魔物が必然的に多くなるのです。


「そういえば、お祖父ちゃん、こっちで弟子はとってないの?」

「あら、スズネちゃんに教えてなかったの? アナタのフィアンセのこと」

「あーやっぱりい……フィアンセ!?」


 スズ、今日は驚いてばかりですね。


「違うわよ」

「うん、まだ違う」

「そ、そっか。びっくりしたぁ……」


 まったく、変なこと言わないでください。……まだ?


「……ブラン、『まだ』なんて付けなくていいからね?」


 ……なぜそこで首を傾げるんですか?


「それで、どんな人なの?」

「ジルくんは『吸血族』の今代の王よ」

「はぇー、今度は王様が弟子かぁ。お祖父ちゃんが弟子にしたんだから才能に関しては疑ってないんだけど、物好きな人なんだね」

「まあ確かに、物好きかもね」


 ええ、物好きなのは間違いありません。

 スズが驚いてないこと? ジジイの事ですから、()もありなんというのは共通認識です。


「特に元男とわかっててお姉ちゃんにプロポーズしてるところ」

「ブフッ!? ゴホッゴホッ……スズ、いきなりプロポーズなんて、話が飛びすぎよ」

「え? 違うの?」

「……違わないわ」


 いや、なんでわかったのでしょう?


「だって、お姉ちゃんそういうのが好きじゃん。ブランちゃんが『まだ』って言ってるし、気に入ってはいるんでしょ?」

「……違わないわ。ええ」


 スズまで心を読み始めた!?


「お姉ちゃんの事だよ? 多少はわかるに決まってるじゃん」


 多少じゃないと思います!


「お姉ちゃんが気に入ってるなら、細かい部分は会ってからのお楽しみでいいかな。他にはいないの?」


 スルー!?


「んー、一応志願してくる人はいっぱいいたんだけどね? ゲンのお眼鏡に叶う人はいなかったみたい」

「まぁ、基準おかしいからねー」

「シクシク……なんでこっちみてるんですか?」

「べっつにー?」


 スズもそのおかしい一人って事、忘れてますよね?


「あー、そう言えば」

「アルティカお祖母ちゃん、どうかした?」

「『龍人族(ドラゴニユート)』で一人、しつこ、往生際がわ、頑張ってる子がいたなぁって」


 アルティカ女王「お祖母ちゃん!」……アルティカお祖母ちゃんにしては、言葉が悪いですね? 何かあったんでしょうか?


「べっつにー?」


 こ、この年増、スズの真似を……!?


「アルジェちゃん、どうやら痛い目にあいたいみたいね…………?」

「ただではやられませんよ?」

「アルジュエロ、いったい何を思ったんだ!?」

「お、お兄ちゃん、アルティカお祖母ちゃん、ストップ、ストーップ!! 城が壊れるから!!」

「スズ、割り込まないでください! お姉ちゃんとしてここは譲れません!」

「そうよスズネちゃん。女として、ここは譲れないわ」

「あぁ……ダメだこれは……。スズネ、ブラン、避難していよう」

「それがよさそう……」

「うん……」






「それで、二人も。ようやく落ち着いたようだな?」

「「……ごめんなさい」」


 辺りを見れば、青を基調としたあの美しい部屋は見る影もありません。明かりの魔道具は台座ごと半分に切り落とされ、テーブルは消し飛び、僅かに残ったイスの残骸が床に散らかっています。ま、まぁ、明かりは無くても上から陽の光が差し込んでますから、暗くはありません!


「はぁ……。後で被害分は請求する。母上にも、です」

「ちぃっ!」

「……楽しそうで何よりです…………」


 ……まあいいでしょう。うん、そうですね。この街にも、ポータル、設置しておきましょうかね。


「そ、そう言えば! 三人とも、まだこの街をゆっくり観れてないわよね?」

「そうね。前回は立て込んでましたし、今回はついてすぐここまで連行されたから」

「連行って、お姉ちゃん……まあ連行だったけど」

「というわけで、私が案内するわ!」

「ダメです」

「えぇっ!?」

「当たり前でしょう。母上は仕事が山ほど残っています。諦めてください」

「ちぃっ!」


 まぁ、アルティカ女……そんな睨まないで欲しいのですが……。アルティカお祖母ちゃんも女王ですからね。


「代わりに誰かつけよう。何か見たいものが有れば、その者に言えばいい」

「わかったわ、ありがとう」

「伯父さんありがとう!」

「ありがと……」








「それで、何であなたがいるのかしら?」

「何故私が、でございますか? 私めはアルジュエロ様、スズネ様、ブラン様の案内をプリームス様より仰せつかった仕様人だからでございます」

「お姉ちゃん、知り合い?」


 まったく、能力の無駄遣いです。本体がこちらですね。仕事しているのが分身ですか……。


「下手な芝居なんてしなくていいから。アルティカ女王様?」

「え? お祖母ちゃん?」

「……はぁ」


 溜息をつきたいのはこちらなのですが……。


「もう、アルジェちゃんネタバレするの早すぎよ。ブランちゃんにも匂いでバレてたみたいだけど、いい子だから黙っててくれたのに……」

「……面倒だっただけ、です」


 そんなウルウルした目でコチラを見ないでください。いい気味です。


「お姉ちゃん?」

「おっとつい本音が」

「うぅ……」

「そんな事より、二人は何か見たいものがあるかしら?」

「んー、何があるかもよくわかんないしなぁ。お姉ちゃんに任せるよ」

「……私も、姉様に任せる」


 それもそうですよね。泣き虫女王様がなにか喚いてますが、話を進めさせてもらいます。


「なら、魔道具工房が見てみたいわ」

「……つーん」


 口で言ってる……。


「……お祖母ちゃん、魔道具工房が見てみたいの」

「魔道具工房ね! いいわよ。案内してあげる! 女王権限で機密部分も余裕よ!」


 …………よし。


「心の中でさえツッコミなし!? ま、まあいいわ」

「アルティカお祖母ちゃん、そんな事して大丈夫なの?」

「ええ平気よ。どうせ知ろうと思えば知れるから。アルジェちゃんには」

「ふーん? ならいいか」


 まあその通りですね。とは言え、知識としてどういった技術が使われているかは知れますが、それを扱う技は見れません。心まで女になった今の私ですが、それでも職人の技への興味はつきませんでしたから。


「それじゃ、ついて来て」







◆◇◆

 翌々日です。

 一昨日は魔道具工房、昨日はいくらか街を案内してもらいました。……女王に。だ、だって、女王の個人宅に泊めてもらったんです。出かける前、会わないはずがありません!

 私たちとしては、大変満足な物だったんですすがね?


 ちなみに言っておくと、このアーカウラのエルフ、木も火も普通に使います。ついでに女王であるアルティカ曰く、アーカウラには自然や人工という概念自体がないそうです。我々人間も自然の内の一生物、という事ですかね。


 さて、そろそろ次の場所へ行きましょうか。ジネルウァ様にも、早いうちに報告しなければなりませんし。


「というわけで、今日発つわ」

「……いや、まあいいけどね?」


 心が読めるんですからね。


「アルジェちゃん」

「?」


 なんでしょう?


「…………うん。大丈夫そうね」

「何がよ?」

「ブランちゃんのおかげみたいね。ジルくんから聞いたわ」

「だから何が?」


 スズとブランは、なんとなくわかっている?


「お姉ちゃん、ホント自分の事には鈍いよね。昔っから」


 ブランも頷いています。


「まだまだ心配な所は多いけど、残りはジルくんに期待するわ」


 ジネルウァ様?


「次は、ジルくんの所でしょう? ジルくんによろしくね。あと、王国のお友達にも」

「え、えぇ」


 なんで今ローズやリリ? よくわかりません。よくわかりませんが……


「まぁ、私を心配してくれたみたいだし、お礼くらいは言っておくわ。ありがとう……お祖母ちゃん(ボソッ)」

「んんっ!? もう一回! もう一回お願い! せーのっ!」

「あーもうっ! 煩いわね! ほら、スズ、ブラン。行くわよ」


 恥ずかしい!


「あははっ、うん。それじゃあね、アルティカお祖母ちゃん!」

「……またね」

「え、ちょっ、待って! 最後にもう一回だけでいいから! アルジェちゃーん!」


 嫌です、もう絶対、口にはしません!

 ――また来ます……お祖母ちゃん。



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