第二話 ずっとこんな日が続けばいい
暫くのんびり予定……たぶん。
今回は短いです
5-2 ずっとこんな日が続けばいい
さて、料理が出揃いました。今日もとても美味しそうです。
「お姉ちゃん、さっきのスキルの話だけどさ、魂の力を使って取得して、魂に刻み込まれるんだったよね?」
「ええ、合ってるわ」
「じゃあさ、スキルが魂に何かするって事はあるの?」
それ、聞きますか。
「あるわ。これは、スキルだけでなくて、同じように魂に刻まれる称号もよ」
「へぇ、例えば?」
スズは興味津々、と言った様子で聞いてきます。
「そうね、例えば【転生者】や【転移者】。これらはこの世界と称号を持つ人の魂を同調させる働きがあるわ。他にも、特定のスキル系統を覚えやすくなったり、逆に覚えにくくなったり、ね」
この辺は、まあいいんですよね。
「スキルだと、再生系統は魂にも作用するわね。魂の力をスキルに注いでスキルを動かし、そのエネルギーで再生させるの。めちゃくちゃ効率悪い上に再生されるのは魂の器だけ。そこに合ったはずのスキルや記憶までは戻らないから、欠陥もいいところだけど」
「じゃあさ、勇者の称号とスキルは?」
やはり、何か感づいてますね……。野生の勘は健在ということですか…………。
「勇気と正義の心を与えるわ」
「魂が精神にも影響するんだね。……それで?」
誤魔化されないですよね……。仕方ありません。
「【魔王】に対する、マイナスの感情を増幅するわ。逆もまた然り、でね」
周囲で息を飲む気配を感じます。
「姉様、それって……」
「スズ様…………」
スズだけは、やはりわかってたようですね。
「やっぱり、ね……」
真っ直ぐこちらへ向けていた視線を落とし、スズはそう呟きました。
「だって、だって……」
食卓に不穏な空気が立ち込めます。
スズにも、不満だってありますよね……悲しいですが…………。
「おかしいもん。こんな事本気で思うなんて……」
だけど私は受け入れ、包み込むだけです。例えスズに恨まれていようとも……妹ですからね。
「いくらおかずが私より少し多くても、まさかお姉ちゃんに嫉妬するなんて、ぜっっっったい! おかしいもん‼︎」
姉として、とうぜ、とう、ぜ……はい?
「えっと、スズ? もう一度聞かせてくれない?」
「だから! お姉ちゃんの方がおかず多いことに嫉妬するなんておかしいって言ってるの! ありえないよ!!」
いや、そんなプンスカされても……。
周り、ポカンとしてますよ? というか、私の悲壮な決意を返してください……はぁ。
「まったく……。スズらしい、のかしら?」
「あー! お姉ちゃん、バカにしてるでしょ!」
「してないわよ」
「ホントー?」
「ええホントよホント」
「クスクス」
「ふふふ」
「ちょっと、ブランちゃん、アリスまで!? なんで笑うの! 本気で悩んでたんだからね!?」
ホント、よかったです……。あ、勿論私にスズへのマイナス感情なんてありませんよ?あるわけありません!!
ーーようやく場が落ち着き、食事に戻ります。ん?
「どうしたの、アリス。何か気になる事でもあるの?」
「いえ、何でもありません」
アリスはアリスで問題ね……。
「もう、あなたを蘇生したのは使用人にするためじゃないって言ったでしょう。もっと気軽に会話に参加していいの。いえ、しなさい。コスコル、あなたもよ」
「……わかりました」
「マスターがそう仰るなら」
まぁ、いずれ改めて貰えばいいでしょう……改まりますよね?
「それで、どうしたの?」
「はい。先程、スキルや称号が精神にも影響を与えるという話をなさいました。そこで、ふと召喚されたばかりの頃のスズ様を思い出しまして」
「私?」
あー、なるほどなるほど。
「妙に落ち着いてたってところかしら?」
「はい、その通りです。これも何かしらのスキルや称号が関わっているのでしょうか?」
ちょっと違うんですよね。
「それは召喚の仕様ね。召喚される時、召喚者の魂を保護するための術式を施されるんだけど、これがかなり強固なのよね」
「あー魂が精神に影響与えるから、強制的に落ち着けさせられちゃうってこと?」
「そういうことね。この世界に完全に定着するまでは保護されたままだから、それなりの間感情が平坦だったんじゃないかしら?」
「なるほど……。そういう事でしたか」
納得してもらえたみたいですね。
「それじゃあおに……お姉ちゃんもそうだったの?」
「それが、かなり情緒不安定だったのよね」
転生だったからですかね?
「えー! 何それ見たかった!!」
「なんでよ……」
「だって、情緒不安定のおに、じゃなくてお姉ちゃんだよ? 見たいに決まってるじゃん!」
いや、えー……。ちょっと、プランまで何頷いてるんですか。
「ほら、お姉ちゃんも想像してみて、ブランちゃんがそうなってるとこ」
…………なるほど。
「スズ、お姉ちゃんが悪かったわ」
「でしょ!」
アリス、コスコル何引いてるんですか? 見てくださいこの真っ赤になって恥ずかしがる天使を! 後は分かるでしょう? わからない? ちょっと来なさい! 分かるようにしてあげますから!!
――それにしても、本当になんでだったんですかね? 案外私のその様子をみて召喚の仕様を決めたんだったりして。魂のエネルギー量の計算が合わない事と言い、何かしらの意図を感じるような。
…………考えすぎ、ですかね。
「(お姉ちゃん、後でスキルと称号の制御の仕方、教えてね)」
「(…………ええ、そうしましょう)」
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