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12/10^16のキセキ〜異世界で長生きすればいいだけ……だけど妹たちに手を出すなら容赦しない!〜  作者: 嘉神かろ
第四章 輝きは交わり繋がる

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第9話 姉妹

アクセスありがとうございます。

4-9 姉妹


♰♰♰


 こちらへ近づいてくる気配は三つ。ランクとしてはAよりのBが一、Cが二……。

 ブランにとって一人は同格だが、足止めだけなら問題ないだろう。私は紗に集中だ。


「さぁ、(すず)。始めましょうか」


 剣を刀へ変形させ、切っ先を向けながら声をかける。


「…………」


 返事はない……。

 今の紗のスキルを確認するため……いや、これが夢でなく、現実である事を自分に納得させるために〈鑑定眼〉を使う。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〈ステータス〉

名前:%$+#+¥6*(隷属)

種族:英雄種

年齢:16歳

スキル:

《身体スキル》

言語適正 限界突破lv9 縮地 高速再生lv3 双剣帝lv8 闘王lv4 看破lv7 危機察知lv4 気配察知lv8 気力操作lvMax 身体強化“気”lvMax 威圧lv9 舞姫lv3 隠密lv3 見切りlv9 料理lv5 呼吸法lv9 直感lv5

《魔法スキル》

ストレージ 勇者 鑑定(?) 神聖魔法lv Max 光魔法lvMax 魔力操作lv9 身体強化“魔”lv9 魔力察知lv8 隠蔽lv7


称号:川上(禍佗神)流師範(双剣) 召喚者 勇者 宰相の加護 輝きの加護 ラッキーガール 舞姫 修験者 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「…………。今、助ける」


 初手は、浅い踏み込みの袈裟。

 この子をリズムに乗せるのはよくない。こちらから仕掛ける。


 滑る様な動きで右側に潜り込んで来た。踏み込んだ右足による蹴りで対処する。軸足で再度地面を蹴り、足を振り上げただけの動作を蹴りへと変える。


 これは、紗には当たらない。だからもう一手仕掛けた。


 案の定、身体を回転させて躱したはずの紗の頭部が弾かれる。

 勢いそのままに横薙ぎを放ったが、流石。弾かれた勢いのままに距離を取られていた。


 ――まあ、正気の紗なら先の風弾も勘で躱したでしょうけどね。


 〈直感〉のレベルが低いからもしやとは思った。予想は的中したみたいだ。隷属状態では本能による判断が出来ないらしい。


 ――この子の一番厄介な能力なのに……。好都合、で今はいいわ。


 紗の表情は、変わらない……。


 一足飛びで距離を詰め、唐竹割。

 これを右の剣で受け、左の剣でカウンターを仕掛けてきた。


 その場で跳び、紗の剣を支点にして前転しながら背後へ回る。そして着地と共に沈み込んで脚を刈った。魔法があれば、治せる。


 これは左手の剣で防がれた。この瞬間、〈制魂解放〉を発動して力技で振り切る。

 紗はその勢いに逆らわず、自ら跳んで距離を取る。


 ――逃がさないっ!


 今は私の方が身体能力は上。この子に踊る隙は与えない。


 ――川上流『迅雷』


 魔力でなく、気を込める。かなり本気だが、紗なら死にはしない。


 未だ空中にある紗だが、ほら、しっかり両手の剣でガードしてきた。


 ――川上流『渦撃』


 剣と刀がぶつかる瞬間、身体ごと回転させてベクトルを変える。横方向へ吹き飛ぶ筈だった紗を、『迅雷』の渦に巻き込んで地面へと叩きつける。


「……っ!!」


 地を割り、そして反動で跳ね上がる紗。

 手は緩めない。


 回転した勢いを殺さず、重力に任せて紗の腹に膝を叩き込んだ。


「っ!」


 ――この鎧、相当なものね。今の私でも逆にダメージを受けるなんて……。


 鎧を砕く事には成功したが、自分の膝も砕かれた。


 とはいえ、こちらはスキルですぐに治る。


 ――いける!


 これなら余裕を持って紗の呪いを解くことが出来そうだ。


「姉様! 危ないっ!!」


 ブランの叫び声が聞こえた。

 チラリと視線を向ければ、迫り来る炎。その威力は、以前受けたオーガジェネラルのソレを大きく上回る。

 慌てて水の結界で自分と紗を覆った。


 炎が消えると、魔法を放った相手が見える。

 紗は……その相手の方へいつのまにか移動していた。


「あなたは……前にも会ったわね」


 返事はない。それに、様子がおかしい。


「姉様っ。ごめんなさい。抜かれた……」


 ブランが駆け寄って来て謝る。


「気にしないで。感じた気配からして、今の彼は異常よ。何があったの?」

「他の二人を倒したら、あの人が何か飲んで、それから急に強くなったの……」


 見れば、Cランク相当の二人が倒れている。ブランも成長しているということだ。

 警戒は怠らず、話を進める。


「その薬ね。何を飲んだか知らないけど、彼、死ぬわよ」

「えっ……」


 ――ブランは、生い立ちの割に優しすぎる。いや、今はそれはいい。


「助けたい?」

「うん……」

「はぁ……。わかったわ。援護しなさい」

「うんっ!」


 ――さて、向こうからは攻撃してこなかったけど、一体何を飲んだのやら。


 とりあえず、距離を詰める。すると向こうも駆け出した。


 明らかに異常な速度だが、まだまだ遅い。

 瞬間的に限界突破して顔面へ膝を叩き込む。


「はぁ!?」


 確かに目で終えていなかった。スキルを見ても、直感系統はない。


 ――どういうこと?


 盾が膝の形に凹むが、しっかりと踏ん張っている。

 つまり動きが止まった。


 左側から紗の剣が迫ってくる。

 避けられない。


 その剣が、何故か空中で一瞬止まる。ブランの結界か。


 だが、まだ間に合わない。


 ――ここは甘んじてうけ……っ!?


 察知系のあらゆるスキルが警報を鳴らした。この剣に切られてはならない。

 どうする……!?


 一瞬の逡巡の間に、その結果は訪れた。


「んっ……!!」


 ブランが追いついて、間に入ってきた。


 ブランごと吹き飛ぶ。


「ふぅ。ブラン、助かったわ」

「んっ!」


 珍しく誰でもわかるほどの満面の笑みだ。


 ――天使がいる……ではなくて!


 改めて紗の持つ剣を鑑定すると、どうやら再生阻害の効果があるようだ。さらに『吸血族』特攻……。


 ――やはりあの予想は……。


 そんな思考を打ち切り、魔法攻撃を仕掛ける。

 魔力を使ってしまうが、長引かせるよりはいい。


 選ぶのは、雷の魔法。以前の実験結果を踏まえて、効率化したものだ。費用対効果としてはもっと良い魔法があるのだが、ここは速度とその電気の性質で選んだ。


 さらに魔力で動体視力を強化する。


 ――発動までは一瞬。さて、どう動くか……。


 紗は、魔法が発動した瞬間に結界を張った。もうこの速度で魔法を展開できるのは流石【勇者】と言うべきか。


 そして問題の彼は……。


 ――これは後でブランに確認しなきゃ。


 魔法が()()()()()()、〈ストレージ〉から総鉄製らしき長槍を取り出して地面に突き立て、距離をとった。


 私の雷魔法は、自然界の雷と原理は同じ。その槍が避雷針として機能した。二人にダメージはない。


 だが、対処法はわかった。ブランには……まだ無理か。仕込みを手伝ってもらおう。


「ブラン! 合図したらあの彼を結界で閉じ込めなさいっ!」

「う、うんっ、やってみる!」


 狙うのは、紗。

 切られる訳にはいかないが、攻め手を緩めるつもりはない。


 左から斬り上げ、唐竹に斬り下ろす。反撃する隙は与えない。

 斬りおろしを右手の剣で受けようとするが、『朧霞』で躱して突く。


 ――所詮は隷属状態ってことね。


 紗なら余裕で躱していた程度の攻撃が躱せない。

 突きは紗の左肩を貫く。


 もう一人の彼が動こうとするのを感じた。

 ある準備をして、合図を出す。


「ブランっ!」


 その声に反応して、ブランが〈結界魔法〉を発動する。


 彼はこれを察知して、跳ぶ。


「あっ……!」


 ブランが慌てたような声をだすが、狙い通りだ。

 瞬時に、全力で隠蔽していた魔法を発動する。

 彼の周りに生じた水が凝固し、氷の檻となる。


 彼は、何もしない。


「え、なんで……?」


 ブランが困惑の声を上げているが、説明は後だ。


 突き刺さった刀をそのままに、紗に蹴りを入れる。

 反動で刀を抜き、そのまま裏拳を側頭部へ。


 軽い脳震盪を起こして足をふらつかせる紗へ、最後の一撃。


 刀を大剣へ変形させ、その腹を上から思いっきり叩きつけた。


――ここっ!!


 〈土魔導〉を主に使って地面から金属の鎖を作り、紗を拘束する。


 地球にはなかった金属で、強化をしなくてもかなりの強度をもつものだ。魔力で強化すれば私でも簡単には引きちぎれない。


 即座に駆け寄り、『血の盟約』の準備をする。


 手順は、ブランの時とほぼ同じだ。

 朦朧とする意識で拘束を解こうとする紗に馬乗りになり、その首筋へキバを立てる。


 濃厚な魔力をはらんだ血が、喉を流れる。


 その熱さは身を震わせ、強い酒を飲んだ時のような酷い高揚感が私を満たす。


 込み上げてくる狂おしい衝動を抑え、左手の動脈を傷つける。

 そして溢れてくる()を口に含み、愛しいこの子の唇を奪った。


 舌を入れて()を妹の中へと導く。


 ――あぁ、入っていく。


 酩酊感は最高潮へと達し、私はその祈りを自然と口にした。


『我、創造の副王、契約と断罪の主に誓う。彼の者を我血の一部となし、守り、死を超えて、共にあることを』


 あの時のように、青みのかった白銀の幾何学模様が私達を囲う。


『我、彼の者に代わり、我らの血と魂に誓う。悠久の時を超え、空間を超え、この身滅びようとも、共にあり続けることを』


 祝詞(のりと)を唱えられない紗に代わり、誓う。

 魔方陣に混じった光は、緋色のかった金。僅かに見える黒は、あの加護の影響か……。


 交じり、溶け合った光は、やがてただ一つの白金になり、鎖を形作った。


 鎖が、互いの胸の奥深くへ潜り込む。


 ――ここからが、本番よ……!


 〈死者(Necro)(nomicon)〉が内包する〈霊魂視(れいこんし)〉で紗の魂を視る。その弱々しい光を放つオーブ状の魂には、血約の鎖の他に黒い石の(いばら)のようなものが絡みついていた。


 ――アレが呪いの本体……。


 ジネルウァ様に教わった通り、血約の鎖を通して魂の力を注ぎ込む。


 私が注ぎ込んだ力に呼応して、紗の魂に元々あった何かが脈動を始めた。恐らく、勇者としての力だ。


 エネルギーを注げば注ぐほど、その輝きは増していく。


 やがて魂そのものが膨張を始め、石の荊にヒビが入った。


 ――もう少しっ!!


 私の感情に呼応して溢れ出る魔力は、荒れ狂う風を巻き起こす。


 荊に走ったヒビが、さらに大きくなる。

 もう光と風で、紗以外見る事は叶わない。


 それなのに、それ以上荊の崩壊が進まない……。

 注ぎ込んだ端から、そのエネルギーが霧散している。


 ――なんで……なんでなのよ!?


「もう少しなのに!!!」


 エネルギーが霧散するなら、それ以上のエネルギーを注ぎ込む……! 【強き魂】を舐めるなよ……!


 ピシリと、確かに聞こえた。僅かにゴールに近づいている。


 急に注ぎ込まれたエネルギーに耐えられなかったのか、紗の魂が僅かに欠ける。


 だが、それでも、ダメだ……。

 黒い戒めはそれ以上形を崩そうとしない。


 ――どうして……? 紗を、私は助けられないの……?


ドス黒い絶望が、心を支配しようとする。


 脳裏を紗と過ごした日々が過ぎる。


 涙が、溢れてくる。


 もうあの笑顔を見る事は叶わないのか。


 頭が、真っ白になっていく。











 …………何かに右手を包まれるのを感じた。


 ――暖かい……。


 横を見る。


「……ブラン?」


 いつの間にか、ブランがすぐ横まで来ていた。

 周囲に吹き溢れていた暴風が弱まっている。


「姉様、諦めちゃ、だめ……!」


 不思議とよく聴こえる声……。

 涙で歪んだ視界でも、その真っ直ぐな瞳だけはハッキリと見えた。


 右手に力を込め、小さくて大きなその手を握り返す。


 暗く沈んだ心に、再び熱い炎が灯るのを感じた。


 周囲を吹く風が、暴風に変わる。


 ――そうよ、考えろ。諦めるな。諦めてたまるか!


 何かないか。必死に思考を巡らす。


 ――何か、何か…………!


 そして、それに気づいた。

 紗の鑑定結果では名前が文字化けしていた。この世界において名前は、存在を確定させる上で最も重要なファクターの一つだ。それが文字化け……。つまり紗の魂はまだこの世界に定着しきっていない、不安定なままということ。


 ――それなら、エネルギーが安定しないのも説明できる!


 ならば後は簡単だ。


「よく聴きなさい!! 紗、あなたの名前は紗音……スズネ・グラシアよ!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〈ステータス〉

名前:スズネ・グラシア(隷属)

種族:英雄種

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 そう宣言した瞬間、エネルギーの霧散が止まった。


 そして光は増していき…………








 パリンッというガラスの割れたような音が私の耳に届いた。


♰♰♰




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<ステータス>

名前:アルジュエロ・グラシア /F

種族:吸血族

年齢:18

スキル:

《身体スキル》

鑑定眼 言語適正 (魔力視) (神聖属性適性)→光属性適性 縮地 吸血lv8 超速再生lv2 武帝lv3(1up) 刀帝lv9 淫乱lv8 威圧lv9 魅了lv8 隠密lv8 解体lv3 舞踏lv9 見切りlv9 魂魄領域拡張lv5 高速演算lv8 並列思考lv8 制魂解放v3 直感lv9 瞬発lv7

《魔法スキル》

ストレージ 時魔法lv7 空間魔導lv7 創翼lv6 飛行lv6 火魔導lv8 水魔導lv8 土魔導lv8 風魔導lv9 光魔導lv9 闇魔導lv8 神聖魔法lv8 隠蔽lvMax 物質錬成lv8 付与lv8 契約

《理外スキル》

千古(Rlim)魔導( Shaikorth) 〈死者《Necro》の書《nomicon》〉

(※理外スキルは自動的に秘匿されます)


称号:(転生者) 吸血族の真祖 (12/10^16の奇跡) 強き魂 (魔性の女) (副王の加護) 寂しい人 うっかり屋 戦闘狂 鬼師匠 川上(禍佗神)流正当継承者 血の盟約 (ブラン・グラシア) 恒星(the Ruler)(of)支配者(Stars) (真なる迷宮攻略者)→上位迷宮攻略者 (魔王)


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