第8話 心のありか
先週は投稿できず申し訳ないです。
もうあんな週はないはず………………ストック作っておこう。
2019/09/15/14:40 段落なろうで入れなおすの忘れてました!
4-8 心のありか
城を出て、すぐに戦場へ転移します。
転移魔法がバレる? 関係ありません。それに、どうせある程度調べはついているでしょう。
よかった。戦いはまだ始まっていないようです。布陣をしている途中のようですが、ここからでは数はさっぱりわかりませんね。
ともかく、まずは指揮官に会わねばなりません。奥の方に見えるのが男爵軍でしょうから、そこを目指しますか。
◆◇◆
指揮官の元へは、ジュリウス王からの書状のお陰でスムーズにいけました。
「……王の命令なら従うほかあるまい。質はともかく、我々は数で大きく劣る。今回の戦では徐々に戦線を下げつつ、援軍の到着を待って挟撃を行う予定だ」
子爵領から遠ざけて引き込み、補給路を断つということでしょうか。軍事にはあまり明るくないです。
「戦端が開いたらすぐに向かってくれてかまわない。君の目標を捕捉したら、速やかに戦場を離脱してくれ」
あまり暴れるなということですか。
……まあいいでしょう。末端の人間を甚振ったところで気は晴れないでしょうから。
「わかりました。では、失礼します」
「ああ。………………これで噂のバケモノの心配はいらないな(ボソッ)」
……『吸血族』の聴覚を舐めてるんですかね……? しっかり聞こえましたよ?
「ひっ……!」
「私の、可愛い妹よ。バケモノ呼ばわりなんて、しないでくれる?」
威圧しましたが、いいですよね?
「あ、ああ。すまない」
だって、あの子をバケモノなんて言うんですから。
見れば、何人か倒れてます。
情けない。
指揮官まで顔面蒼白ですね。疲れくらい癒してあげてもいいと思ってましたが、放っておきましょう。
紗をバケモノなんて言うのが悪いんです。
「ブラン、行くわよ」
「あ、う、うん」
一刻も早く紗を見つけたいのですが、戦端が開くまでは動けません。流石に完全な自由行動は認めてもらえなかったので。
実を言えば、今来ている聖国軍など私一人でも十分に殲滅可能です。さっさと突撃して、紗の戒めを解く場を整えたいのが本音。ああもどかしい!!
……仕方ありません。今は紗を探しながら時を待ちましょう。
「ブラン、紗を探してくるわ。ついてくる?」
「うんっ!」
そうですよね。
向こうまでは飛んでいきましょう。〈創翼〉で翼を作り、ブランを抱き上げます。
「しっかりつかまってなさい」
コクリと頷くブランです。そして顔は赤くなる……尊い。
気配を全力で消し、聖国軍の頭上に留まります。……このまま陣地を破壊してしまいましょうか?
いえ、わかってます。ダメですよね。なんとか男爵にもメンツがありますし。ええわかってますとも。
「姉様、ダメ」
「わ、わかってるから大丈夫よ」
(じーっ)
うっ、かわいい……。まったく、ブランに感謝するんですね!
ブランにじーってされてなかったら、見える兵士全部吹き飛ばすところでした。紗の魔力、隠されているようで感じられないんですもの。
……拾っておいたアレを使いますか。
「ブラン、この仮面と同じ匂いを探してみてくれない?」
「うん!」
やたらと嬉しそうな返事ですね。そんなに気合をいれて匂いを嗅がなくてもいいんですよ? 可愛いですが。
「…………いた。あのテントの中」
「ブラン、ありがとう」
「うんっ」
はにかむブランに微笑みを返し、視線を件のテントへ向けます。この陣地にある唯一のテントです。……これは、上層部しか隷属の件は知らないのかも知れませんね。
それから暫く、上空で待機したまま待っていると、やっと互いの布陣が完了しました。
しかしこの世界でも、戦いの前に口上を述べるんですね。
「姉様、もう少し、我慢」
「大丈夫。ちょっと準備してるだけだから」
口上を両者が叫び終わった瞬間突撃しなかったことは褒めて欲しいところです。
さて、そろそろ行きましょうか。先ずは本隊から紗を引き離さないとですね。気になる兵士、というか騎士も何人かいますが……。
「ブラン、しっかりつかまってなさい。強襲するわっ!」
腕の中の愛し子の返事を聞く間も無く、愛する妹目掛けて急降下を始めます。戦端が開くのと同時に紗を押し出すつもりです。
残り三百メートル。
ブランを左腕で抱え直し、〈ストレージ〉から大剣状態の『ソード・オブ・ムーン=レンズ』を取り出します。
二百メートル。
視界の先にいる紗は、前回と同じ面を被り、迎撃態勢に入っています。もちろん気づきますよね、紗なら。
五十。
大量の金属同士がぶつかる音が聞こえました。他も始まりましたか。
「紗、多少痛いのは我慢して」
そして、金属音に似た甲高い音がすぐ目の前で響きました。
「…………っ!?」
突進の勢いそのままに、すくい上げるように大剣を叩きつけます。
紗はもちろん双剣でガードしてきましたが、好都合です。右手だけとは言え、紗の体重程度なら問題なく押し出せます。〈飛行〉スキルを全力起動し、ドンドンドンドン押し出していきます。もっと遠くへ……!
騒がしい音は、随分遠くなりました。この辺りでいいでしょう。最後に剣を振り抜き、距離を置きます。
「ブラン、聖国からきた奴、近づけないようにしてもらっていいかしら?」
「うんっ! 姉様、任せてっ……!」
またやたらと嬉しそうにしてて可愛いですけど、今は、紗に集中させてください。
ずっと、抑えてきました。
だけど、もういいですよね?
「紗、待たせてごめん。絶対、助けるから」
大剣を刀に変形させます。
「だから、俺を信じろ。そしてまた、一緒に笑おう」
返事はありません。
返事はいりません。
さぁ、兄の意地を見せつけてあげましょう!
◆◇◆
「彼の妹を使ったのは失敗だったかもしれませんね」
そのモノは一人呟く。
「これ以上の干渉は、ルール違反ですよ」
闇の中からあるはずのない返事が届いた。
「これはこれは。もちろんわかっていますとも。部が悪いのは気に入りませんが、ここでルールを破るのも面白くない」
「その割には、機嫌が良さそうに見えますが?」
そのモノは、一瞬手を顔に伸ばそうとして、やめる。
「ハハハハハ。何を言い出しますか。機嫌がいいはず無いでしょう。……ただ、アレの力を削げるのは私にとっても嬉しいことです」
「…………そうですか」
「おや、もう行くのですか?」
どこか別の場所に繋がってるような暗がりの奥、そのものは相手の気配が薄くなっていくのを感じて問いかける。
「あなたと違って、移動には制限があるので」
「そうでしたね」
そのモノは小馬鹿にした様に鼻で笑いながら相槌を打つ。
「……あなたはもう少し、素直でも良いと思いますよ」
その呟きを最後に、気配は消えた。
残されたそのモノからは、何の感情も感じられなかった。
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