第5話ジネルウァとの出会い
更新作業中にねおちしてましたぁぁぁぁ!!
遅れて申し訳ないです!
段落つけたりは今からやります
13:18)ーー終わりました。
4-5 ジネルウァとの出会い
揺らめくランプの灯りに照らされながら、石造りの廊下を老紳士の後について歩きます。
ここは王族のプライベートスペースですから、無駄に豪華な装飾が施されていたりはしません。落ち着いた、品の良い内装でかなり好みです。
右手から伝わるブランの気配も落ち着いてますね。
案内役の彼の話では、コレは陛下の趣味とのことですから、うん、ジネルウァ様とは気が合いそうです。
流石城。その部屋に着くまでそれなりに歩きました。
逸る気持ちが表にではないよう、魔力を制御しながら老紳士が扉をノックする姿を見つめます。
「陛下、グラシア姉妹をお連れしました」
「入れ」
声は若く、よく通りそうですね。
プライベートとは言え一国の王の前に出るのです。渋々ブランと繋いでいた手を離しました。
「ブラン、手を後ろに回すのはやめなさい。疑われるわよ?」
「……ん」
一体どうしたんでしょうか。
普段はそんな事しませんが……少し手が赤い?
「失礼します」
おっと、今はジネルウァ様との会談ですね。
「お初に御目にかかります。セフィロティアのアルティカ女王より紹介を受けて参りました。Bランク冒険者のアルジュエロ・グラシアと申します」
「お、同じく、妹のブラン・グラシア、です」
おぉ、ブラン、よく言えました!
ちょこんとお辞儀する姿も凄まじく可愛いですよ!
私もギルドで習った汎用のカーテシーを披露して、顔を上げます。
「……あの、陛下?」
「……おっと、すまない。見惚れていたよ。なるほど、これがそうなのか」
見惚れていた!?
まさかジネルウァ様はロリコン!?
いくら陛下でもブランは渡しませんよ!?
「ハイド、御苦労。お茶の用意をしたら下がって良いぞ」
「畏まりました。……陛下。彼女なら申し分ありませんので」
やたらとニコニコしながらお茶の準備を始める老紳士ことハイドさん。
そして顔を仄かに赤らめるジネルウァ様……。
まさか、『吸血族』ってロリコンばかりなのでしょうか……?
「アルジュエロ、だったな。座って良いぞ」
「では、失礼します」
魔道具の事を聞かねばなりませんが、ちょっとその申し分ない、の意味についても是非是非お聞かせ願いたいのですが!?
「アルティカ様から聞いているとは思うが、現国王ヴラディエト九世。真名はジネルウァ・カーミル・ヴァンピリエだ」
そう言って握手を求めるジネルウァ様。
王がそんな軽々しく握手とかしちゃっていいんでしょうか?
応えますが。
「………やはり美しい。愛称は、アルジェ、だったな。私もそう呼んで良いか?」
「え、ええ。構いません」
「そうか。なら、君もジルと呼んでくれ」
「えと、その……」
んん!?
なんかグイグイ来ますね!?
「ふむ。なんと言う事はない。アルジェ、君に私が一目惚れをしてしまったようなのだ。私の妻になってくれないだろうか?」
「…………はい?」「……へっ?」
は、え? 一目惚れ? 私に? 誰が? ジネルウァ様? え? ん? は?
「ねねねね姉様、おちおちおち、おちつ、落ち着いてっ!」
……うん。目を回して噛みまくってるブランを見たら落ち着きましたね。寧ろ和みました。
「んんっ。……本気で、仰っておられますか?」
「ああ、私は本気だ。かつてないほどに、な」
いや、そんな悪戯っぽく微笑まないでくださいよ……。
「ああ、もちろん。断ったとしても情報は渡すから安心してくれ」
安心してくれと言われましてもね?
「その……一目惚れ、なんですよね?」
「ああ。その美しさもだが、君からは、私と同じ匂いがするのだ。いや、これは当然か……」
当然?
「ですが、陛下と私は今ここで顔をあわせたばかりですよ?」
「そうだな。だが問題ない。本質を見抜くハイドが認めたのだから」
たしか、そんな魔眼がありましたね……。
ハイドさんがそれを持っていると言うことでしょうか。
「あなたは良くても、私はあなたを知りません。判断できるはずがないでしょう」
「なるほど。では、こうしよう。私の挑戦を受けてくれないか――」
ジネルウァ様は、いつのまにかハイドさんが持ってきていた剣を取り、剣気をぶつけながら聞いてきます。
「姉弟子殿?」
「……ああ、なるほど。そういう事ね」
そうでした。
彼はジジイと同じパーティにいたんでしたね。
「それなら、敬語なんて使わないわよ?」
「構わない。訓練場へ行こう」
そう言われて、私が受けないはずがないでしょう。
「ふふ、イイ剣気だわ。楽しみね」
「……姉様、すごく色っぽい……」
「……同感だな、未来の義妹よ」
もう私と結婚する気でいるようです。
気の早い事で。
ですが、そうですね……。
ジジイが認めたなら……。
「私に勝てたら、貰われてあげる」
「……これは、ますます気合が入ると言うものだな。師に鬼才と聞かされてきた君の剣、楽しみだ」
◆◇◆
場内にある、王族専用の訓練場に移動します。
ここには、リベルティアの傷などをなかったことにする装置のようなものはないようですね。ギルドの訓練場と同レベルの安全装置です。
まあ、今回は訓練用のものを使った剣のみの戦いですからね。
問題ありません。
さてさて、いきなり求婚されたわけですが、ここまでの彼の評価を公開しておきましょう。
まず、センスは合格、文句なしです。
見た目もなかなか。
中性的な事もあり、思ったほど忌避感はありません。
ここに来るまでに、さり気なくブランに歩調を合わせてくれていたのはかーなーりーの高得点です。
ここまでは、なかなか有料物件ですね。
え? 私は元男だろうって?
それなんですが、体に引っ張られたのか、もうすっかり心は女性によってしまって……。
というわけで、あとは剣を交え、その人となりをもっと深い所まで知ってからです。
「やはり君も、刀を使うのだな」
「そういうあなたは両手剣なのね」
「刀も扱えるが、コレが一番得意なのでな」
彼が正眼に構えている物の幅は、腕二本には満たない程度。全長は一メートル半より少し長いくらいです。ブロードソード、と言うには長すぎますか。
「では、全力でいかせてもらおう」
そう言って、ジネルウァ様は一足飛びに十メートルの距離を詰めてきました。
♰♰♰
あちらの初手は袈裟気味の切りおろし。
目的が目的なので、ここは受ける。
刀なら基本選択しない手だ。
「っ! あら、重いわね。そこは女性に気を使って手を抜くところじゃないの?」
――力は向こうが上ね。
「冗談を。君にそれは最悪手だ」
――わかってるじゃない。
返事は、ニヤリと笑って横腹へ蹴りを叩き込むことに変えた。
予想していたのか、左手を挟んでガードしてきたがお構い無しに蹴り飛ばす。
「っっ……! なるほど。聞いていた通りの蹴りだ」
「へぇ。どう聞いていたのかしら?」
「フフッ、秘密だ」
「あら、そっ!」
今度はこちらから。
話している間に体制を整えたジネルウァ様の目の前に〈縮地〉、からの手を鞘に見立てた居合い。
今の身体強度だからできることだ。
ジネルウァ様はこれを一歩下がって躱そうとした――
ので前側の足をさらに半歩、踏み込んだ。
伸びきっているように見えたのだろう。
慌てて剣でガードしたジネルウァ様。
しかし受けた刀に剣を沿わせながら、左肩でタックルを仕掛けてきた。
これは刀で重心を操作し、崩したところを合気の要領で投げて防ぐ。
完全に投げる前に自分で跳んでダメージを抑えられたが、空中にあるのは変わらない。
着地点へ向けて走り出す。
着地した瞬間、
歩法で距離感をずらしつつ、
スキルではない縮地を用いて肉薄。
袈裟気味に切り下ろす。
剣でこれを受けようとするジネルウァ様だが、已然距離感は狂ったままのようだ。
『朧霞』でガードをすり抜け、
心臓目掛けて突きを放つ。
残念、ガードのために横に構えていた剣で軌道を下に逸らされた。
それでも勢いは殺さず、腹の左側を突く。
「ガハッ!」
――さすが真祖。丈夫ね。
空気を吐き出しながら吹き飛んでいったが、普通なら腹を貫通している。
「まだ、終わりじゃないでしょう? さあ立って向かってきなさい!!」
ジネルウァ様は口角を上げ、フラつきながらも立ち上がる。
「クッ……。はぁはぁはぁ……。ああ、もちろんだとも!」
――いいですね。その楽しそうな顔。本番は、ここからですよ?
※作中では『ブロードソード』を十六世紀以降に使われた全長一メートル以内の直剣の意味で使っています。
幅について疑問に思った方の為に補足しておくと、このブロード(広い)と言うのは当時主流だったレイピアに比べてらしいです。
珍しく2話に戦闘シーンがまたがります。
前回、「あの行動のわけは次回書こうかな」なんて言ってましたが、あれは嘘だ!
まあやめました。読んでたらそのうちわかります。
現時点でも十分推測可能ですね。
センターを控える難関大志望の諸君!
これが読み取れないのは少し厳しいぞ?
ブロックレベルでも読み取れる人は読み取れる程度だ!
………なんて(笑)





