第14話 ダンジョンアタック1日目
予約投稿失敗してました。
本日二話目です。
3-14 ダンジョンアタック1日目
「意外と簡単だった」
「でしょ?」
今、ブランの手には一つの魔石が握られています。
はい。あれから二階層に行って、早々出会った暗赤色の人魂君にブランの糧となって頂きました。
まあ武器に気なり魔力なりを纏わせて核を斬るだけですからね。核の見極めすらできれば、今のブランなら楽勝ですよ。
「明日からは本格的に潜るから、今日はもう休みましょう」
「うん」
まだ空は赤くなり始めてすらいませんが、万全は期すべきですよね。
そうそう、二人だけで戻ってきたわけですが、誰も何も言ってきませんでしたよ。
◆◇◆
さて、翌日です。
「準備いい?」
「……うん。大丈夫」
「それじゃ、いましょうか」
迷宮の入り口でブランに最終確認をさせます。
ブランに持たせたのは、ヒーリングポーションとマナポーションを幾らか、それから三日分の食料です。
このダンジョンアタックの為に、“姉妹の契り”を結んだあの日より〈収納魔法〉を集中的に鍛えさせました。今のブランのスキルレベルは4です。ギリギリですが、ポーション類は兎も角食料は万が一逸れた場合の為ですから問題ありません。『血の盟約』により魂が繋がっている私なら、直ぐに居場所が分かりますし。
スキルの中以外、装備の収納にも数本ずつポーションを入れさせています。これは外部への魔力による干渉を妨げるトラップや魔物の呪い対策ですね。
なお、体内での魔力の操作には支障がありませんので、〈高速再生〉を持つ私には必要ありません。
魔力の回復も、私の場合自然回復の量が多いことに加えて、スキルによる促進もありますから。これは以前も話しましたね。マナポーションは、一応持ってますが基本過剰になります。
ブランは元々の回復量は多くないので、ポーションを大目に渡して、スキルもしっかり覚えさせました。
休憩時の回復促進スキルが〈瞑想〉で、活動時が〈呼吸法〉です。これらは、やり方に決まったものはなく、流派によって様々です。ブランに教えたのはもちろん川上流のそれ。
私もずっとやってるんですが、何故かスキルにならないんですよね。ブランはなってるのに。
というわけで、色々調べてみました。
そしたらなんと、【寂しい人】の新しく見えるようになった項目にあるではありませんか!
これは、ステータス上の他のものとは重複せず、より強力なものが優先されるようです。通りでスキルにならないわけですねか。
…………【寂しい人】がさらなる有能さを見せてくれたことに、何とも微妙な思いを感じてしまいます。
まあ、現在は〈武王〉のそれが優先されてますが。
おっと、話が逸れました。
ともかく、最終チェックも済みましたし、攻略に踏み出しましょう!
階段を降り、昨日も通った道を辿って二階層へ移動します。
スケルトンなんて雑魚はスルーです。
二階層へ降りれば、チラホラと暗い赤色の炎が見えるようになります。Eランクのウィル・オ・ウィスプです。
「ブラン、下の階に行く前にもう一度アレ、斬ってみなさい」
「うん。わかった」
手近にいた一体の人魂を指して、ブランを促します。
生体の気配に敏感なアンデッドですが、逆に言えば、命の気配さえ消してしまえばそうそう気づかれません。なにしろ人魂に目はありませんからね。高位になれば魔力も感知してくるのですが。
そんなわけで、獲物のすぐそばで呑気に話していられるんですよ。
おっと、ブランが“気”の操作を始めましたね。
速度は、浅い層なら及第点、といったところです。
続いて、精度。どれだけ均等かつ薄く、そして安定して刃に“気”を纏えているかですが……。うーん、まあいいでしょう。
やや分厚く、ムラが見られますが、そこはスキルレベル的にできている方です。揺らぎが見られるのは減点ですがね。
とはいえ、アンデッドを狩るには問題ないです。疲れやすくはなりますが、今は私がいるので、実践の中で鍛えさせましょう。
密度はまだしょうがないので、これから徐々に総量を上げて操作精度も上げさせるつもりです。
「んっ……!」
声を出して、ですか。珍しいことです。気合が入ってますね。
「まあ、及第点ね」
「うん……」
「お、落ち込まないで! 大丈夫、スキル覚えてからそんなにたってないんだから仕方がないわよ!」
だから元気出してくださいっ!
ほら、私の天使?
「……うんっ」
ほっ。よかったです。まったく、天使にあんな顔をさせた過去の私、許すまじ!
なんてちょっとした事件もありましたが、順調に攻略を進めて、翌日には九階層まできました。
間では、五層で屍が増えたくらいで何事もなく、サクサク来れました。臭いが酷かったので、階下へ逃げるように探索を進めたとも言えます。
寝るときは、突き当たりの部屋を封鎖し、[洗浄]を乱打する事で解決しました。人の居る小部屋には、魔物はポップしませんからね。
次の第十階層は、所謂ボス部屋です。
『階層の守護者』が正式な名称、通称フロアボス、或いは階層主と呼ばれる中ボスが待ち構えている階層です。
フロアボスは階層の最奥、次の階層への階段の直前にいるはずです。
この階層にもゾンビがいるようで、鼻が効く私たちは最速でボス部屋にたどり着きました。
「ここがボス部屋ね」
「うぅ、はにゃがぁ……」
ブランは私の数倍鼻が効くので、中々に辛そうです。
「出たら、何か探しましょう。最初のボスはスケルトンナイト三体のはずよ」
「ん……、わかっあ」
うん、コレはどうにかせねばなりませんね。
めっちゃ涙目になってます。
くっ……! 思わぬ落とし穴です……!
鼻を全力で(?)摘むブランを横目に、ボス部屋の重厚な扉を開きます。
さてさて、扉の向こうには情報通り、剣を持ち簡素な鎧をつけたスケルトンナイト一体と、同様の鎧と槍を装備したスケルトンナイト二体が待ち構えていたわけですが。
そもそも、スケルトンナイトはスケルトン→ソードorスピアスケルトン→スケルトンナイトと来た3段階目、ランクD〜D +のアンデッドです。私が手を出さないまでも、ブラン一人で瞬殺だったと言っておきましょう。
その後現れた帰還用の魔法陣を起動させ、私たちは速攻で迷宮を後にしたのでした。
もちろん[洗浄]を入念にかけて。
次回は転移装置でここまでショートカット出来るので、続きの十一階層から始められますが、兎に角臭いをどうにかする手段を探さねば!





