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12/10^16のキセキ〜異世界で長生きすればいいだけ……だけど妹たちに手を出すなら容赦しない!〜  作者: 嘉神かろ
第3章 二つの輝き

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第13話 禁忌に触れた末路

本日一話目

3-13 禁忌に触れた末路

 階段を降りると、洞窟のような場所に出ました。

 アンデッドは瘴気を放つ性質があります。その為、洞窟内には薄っすらと靄がかかっているようです。

 高位のアンデッドほど濃い瘴気を発するのですが、逆に言えば低位のアンデッドの発するそれは薄いということ。

 まだ一階層ですので、視界への悪影響はほとんど無いですね。


「一階層に出るのはスケルトンくらいだ。二階層に行くと低位のウィル・オ・ウィスプが出てくるが、[生活魔法]でも撃退できるくらいの雑魚だから安心しな」


 おや、意外とちゃんと教えてくれますね。油断させる為でしょうか?


 ちなみに、わざわざ『低位の』とつけているのはウィル・オ・ウィスプがEランク相当からAランク相当まで幅広く存在するからですね。日本だと、鬼火や人魂と呼ばれるもののような魔物なんですが、ランクによってその炎の色が違うんです。ちゃんと調べたわけではありませんが、おそらく温度でしょう。並び的に。

 (リン)の炎色反応?

 ココは異世界でウィル・オ・ウィスプは魔物ですよ?


「ええ、ありがとう」


 その後も洞窟迷路を進んでいきますが、まだ一階層です。スケルトンなんてEランクモンスターはどうでもいいですし、アイテムも目ぼしいものはありません。

 それに、私たちが手を出す前に男どもが片付けてしまいます。


 今回は下見なので、そんなに深く潜るつもりはありません。

 ブランに霊体系の斬り方を教えるために、二階層のウィル・オ・ウィスプだけみて帰るつもりです。

ですから、さっさと動いて欲しいんですけどねぇ?


 そんなことを考えている時でした。


「……そろそろいいか」


 始めに声をかけてきた男が呟くのが聞こえます。

 そして、何やら巻物に魔力を通しました。


「クククッ。迷宮では、何が起こるかわからない、よな?」

「……どういうこと?」


 一応のってあげます。


「こういう事だよ!」


 そうして、巻物に刻まれた魔法陣が起動しました。……あれは単一の魔法を発動するための〈スクロール〉ですね。消耗品です。


「[召喚]の〈スクロール〉……。何のつもりかしら?」

「察しが悪いねー。そんなんじゃ、冒険者、やってらんないよー? まぁ、もう冒険者どころか人生もやっていけないけどねー!」


 そういいながら、煙玉を使ってきます。

 煙の少ないタイプですが、今の状況なら十分という判断でしょう。



◆◇◆


 煙が晴れ、現れたのは無数の血吸屍鬼(ブラツドサツカー)。最下級の、ヴァンパイアに連なる魔物。ランクはD。

 アルジェたちが、彼らの思う通りの、Cランクのペアでしかなかったなら絶望的な状況だ。

 だがこれは、『吸血族』であるアルジェを相手にする上では、悪手以外の何者でもなかった。


 かつて、『吸血族』はヴァンパイアと似た性質を持つために迫害されていた。

 実際には人間である『吸血族』と、体内に魔石を持ち、生き物の血を糧として瘴気を発する不死者(アンデツド)であるヴァンパイアは全くの別物だ。


 しかし、厄介なことに“中級吸血鬼(ミドルヴァンパイア)”以上の吸血鬼(ヴァンパイア)には理性があり、瘴気を隠す術があった。これが両者の見極めを困難にしたのだ。


 その後二種族が全くの関連性を持たない別物であることを他種族が理解したために、迫害の歴史は幕を下ろした。

 もちろん儀式の中で人の血を吸うこともあった。だが、結局のところ血は、『吸血族』にとっては嗜好品に過ぎず、それは人の物ではないという事に他種族が理解を示し、アンデッド特有の高い不死性と、その身に纏う邪悪な気配や血の気のない肌から他種族でもその二種族を見極められるようになった為に彼らは受け入れられたのだ。

 だからこそ、『吸血族』は“吸血鬼”と呼ばれることを忌避し、それが蔑称となった。


 そして、その長い苦しみは、『吸血族』の遺伝子に“吸血鬼(ヴァンパイア)”への深い憎悪が刻みこんでしまった。


 幸いだったのは、『吸血族』のその高潔であろうとする種族性故に、他の人間種族にはその矛先が向けられなかった事だろう。

それは同時に、彼らの誇りを著しく貶めた“吸血鬼”への激情を強めるものでもあったが。


 ともかく、体を構成する遺伝子に刻まれたそれは、転生体であるアルジェにも例外なく作用する。


 つまり。


◆◇◆


「誰が、やっていけない、ですって?」

「へっ! そんだけのブラッドサッカーに囲まれてて……囲まれ、て……」


 その粋がっていた男どもの視線の先で憎き吸血鬼どもを細切れにしてやります。

 最下級とはいえヴァンパイアの名に相応しい高い不死性を持っているはずの血吸屍鬼が、私の剣に斬り刻まれ、呆気なく灰へと変じたのですから、その表情はなかなか愉快なことになっていますよ?


「『吸血族』の真祖たる私に向けて、よりにもよって血吸屍鬼? 馬鹿なの?」


 まったく、馬鹿にしてるんですかね?

 殺してほしいんですね? 痛めつけて欲しいんですね!?

 いいでしょう。望みを叶えてあげます!


「き、『吸血族』の真祖?」


 土壁で逃げ道を塞ぎ、ゆっくり、近づきます。

 ふふふ、逃がしません。逃すわけがありません!!


「なん、で、そんな大物が……」

「『狂戦姫』……」

「ようやく気付いたのね」


 もう、おそいですけどね?

 今刀を薙げば、二人ほどの首を飛ばせるでしょう。しかし、そんな勿体無いことはしません。


「ねぇ?」

「ひっ……!」


 どう痛めつけてあげましょう?


「どういう風に死にたい?」

「い、いや、だ……。嫌だ!」


 あらあら。道なんてないのに、どこに逃げるつもりでしょうね?

 おや、粗相をしちゃってますね。恥ずかしい。


「たす、た、助けてくれ!」

「そんなに叩いてもダメよ? あなたじゃ壊せないわ」


 私の言葉は聞こえてないんでしょうね。 

 男は尚も泣き叫び、土壁を叩き続けます。


 アハハ!

 素晴らしいダンスですよ!

 でも、その歌はダメですね。


「もう、煩いわね。ちょっと黙ってなさい?」

「あが……っ!?」


 せっかく土壁の近くにいたので、壁から岩の棘を出して顎下から口を縫い付けてみました。

 うん。静かになりましたね。


「それじゃあまずは、あんまり動き回られても面倒だし、足、斬っちゃいましょうか?」


 男たちが悲鳴をあげる間も無く、彼らの両足を切り飛ばします。


「「「あ゛ぁぁぁぁぁ!!」」」


 うーん、ホントにどうしてくれましょう?

 あ、そうですね。アレがいいです。


「ほら、プレゼントよ?」


 転げ回る男どもを固定して、胴体を覆い隠す大きさで人間数人分の重さの岩を乗せてあげます。

 こうすれば、自然死したように見せられるそうですよ?


「ぐ、ぐるじい。だずげ、でぐれぇ゛!!」

「俺、だぢガァ、悪がぁっだ!」

ゔぁうぉゔ(たのむ)!!」

「い、や、よ」


 全く、どうして助かると思うんでしょう?


「迷宮では、何が起きてもおかしくない。でしょう? あなた達はこんな浅い層でうっかり死んじゃうのよ」


 そうそう。苦しんでください?

 一人の頭を踏みつけながら告げてあげれば、苦しみのオーケストラを聞かせてくれます。

 ふふ、いい声ですよ?


………

……


 随分苦悩の叫びも小さくなりましたね。

 いい気味です。


「でも、そろそろ飽きてきたわね」

「「「!!」」」


 一通り踏んづけた後に呟けば、男達は希望を見出したかのように目を輝かせます。

  まったく、馬鹿ですね?


「うん、もういいわ。死になさい」


 一人ずつ首を飛ばしてあげました。

 なかなか素晴らしい、絶望の表情でしたよ?


………

……


「姉様、落ち着いた?」

「……ええ」


 ぬぁぁぁぁぁぁぁ!!

 やってしまいました!

 よりにもよって! ブランの! 前で!!


 くぅ! 『吸血族』の血が恨めしい!

 何が『苦しみのオーケストラを聞かせてくれます』ですか!


「…大丈夫。テオが言ってた。『吸血族』は吸血鬼相手だとああなるって」


 うぅ。そんな優しい目で見ないでください……。それはそれで辛いものが……。


「姉様、そろそろ、いこ? 霊体系の斬り方、教えてくれるんでしょう?」


 あう、そうでした。いいかげん行かなければ……。


「そうね。行きましょうか……」

「うん。姉様、大好き!」

「さぁ、さっさと行くわよ! 待ってなさい、ウィル・オ・ウィスプ!!」


 私がブランに良いところを見せるために、生贄になってもらいますからね!

 首がなくても首を洗って待ってなさい!







「……シンが言った通り元気になった。よかった」



ブランが、ブランが…!

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