第7話 自由の王
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3-7 自由の王
謁見の間に入ると、正面に見えたのは玉座に座る壮年の男性。
王者の覇気を感じさせる威風堂々とした方です。この国の王に相応しい実力が垣間見えます。
この国の形式で王が既にいるという事は略式の謁見という事です。
王の左右に控えているのは王妃様とローズの兄弟姉妹ですね。
彼ら彼女らが勢ぞろいするのは珍しいこととの事。全員が何かしらの実力者です。
左右の壁に控える騎士たちの練度もなかなか。おそらく近衛でしょうが、全員スキルレベルが5はありそうです。中には6に届くような者も。
スキル自体の格にもよりますが、普通、スキルレベル6というのは一国の騎士団長レベル。その部下でさえコレですから、侮れません。
さらに、王座の一段下、王のすぐ足元に控える二人。
左側の一見若そうに見える男性は、ダークエルフ。今の私には届きませんが、それでもかなりの魔力量を感じる彼は、この国の宰相です。〈魔力操作〉のレベルは7。魔導スキルも持ってますね。
この国の現宰相は魔導師たちのトップでもあります。
これだけ見てもかなりヤバイのですが、まあ頑張ればどうにかなりそうです。……あの宰相の反対側に控える女性、騎士団全てを束ねる元帥さえいなければ。
アレは、一種のバケモノ。人外です。
正直勝てる気はしません。
辛うじて視えたスキルでは、〈剣神lv4〉、〈制魂解放lv4〉、〈咸卦法lv6〉、〈体術lv10〉。
〈剣神〉は私の〈刀帝〉の剣版最上位スキルなのはご想像の通りです。
〈制魂解放〉は〈限界突破〉の最上位スキルでリスクもリターンも下位スキルの比ではありません。
〈咸卦法〉は[魔気合一]という気力と魔力を混ぜ合わせる技術を用いて行う〈身体強化〉の最上位スキルです。この[魔気合一]の難易度は恐ろしく高く、歴史を見ても使えた英雄は片手の指に収まります。
魔法使いな子供先生の生徒の、火星のお姫様が使うアレみたいな感じです。耐性までは上がりませんが。
一見レベルが低く見えますが、最上位スキルということは、少なくとも一つ下の階位のスキルをレベルMAXまで上げたということ。
ホント、バケモノです。
いえ、スキルを見るまでもなく分かっていたことです。
今は王に集中しましょう。
事前に教えられた位置まで歩き、跪きます。
ブランはガチガチですが、どうにか転ばずに私に倣うことができました。
「面をあげよ」
その言葉に従って顔のみを前へと向けます。
「『狂戦姫』アルジュエロ・グラシア、その仲間、ブラン・グラシアよ。此度のこと、大儀であった」
王は厳かに言い放ちます。
今この場で発言は許されません。再び深く、こうべを垂れるのみです。
勝手な発言は不敬罪に問われてしまいます。正式版ではいくらかやり取りする場合もありますが。
王が頷く気配を感じました。謁見はこれで終わりです。
滅茶苦茶短いですが、略式ですからね。褒美を出すわけにもいきませんし。
私達はそのまま、宰相さんの合図に従って退場しました。
◆◇◆
「緊張した……」
待たされた部屋とは別の部屋に通された後の、ブランの第一声です。
メチャクチャガチガチでしたからね。むしろよく失敗なく乗り切れました。
ブラン、よく頑張りましたね! 流石私の天使です!
「すぐ終わって良かった」
「略式だったからね。それに、公爵家で親類とはいえ、一貴族の事で王が公的に褒美を出すわけにはいかないし」
貴族につけ上がらせるきっかけになり得ますからね。
「へぇ……?」
ブランはよくわかってない様子でしたが、取り敢えず納得はしたようでした。
それから待つ事しばらく、ローズたちが部屋に入って来ました。
「待たせたな」
そう言って軽い感じで声をかけて来たのは、先程謁見したリベルティア王です。
「いえ」
後に続いて王太子、第二王女、第一王女、ローズが入ってきます。護衛は無し……。
全員が先に着くと、すぐに給仕さんたちがお茶とお菓子を用意してくれました。
「ここからは私的なものだ。楽にしなさい。自己紹介も不要だ。ローズから聞いてるからな」
「はい」
王の言葉に私たちが、……私が僅かに緊張を緩めると、すぐにローズが口を開きます。
「ブランちゃん動きがカクカクしてたわよ?」
にやにや笑うローズにブランは恥ずかしげに俯きます。……可愛い、ローズ、グッジョブ!
「こら、ローズ。あんまりからかっちゃダメだよ?」
ローズを諌めたのは王子のうち、爽やかでフンワリした感じの金髪天然パーマの方です。
『猫人族』の血が濃いようで、可愛らしい三角耳が付いてます。
「失礼。僕は第二王子のルーカス=アルフォンス・ド=リベルティア。アルって呼んでね」
「はい、アル殿下」
「おい、アル。父上と私より先に自己紹介するんじゃない」
「あはは、ゴメン。兄さん」
やっちゃった、と苦笑いしながらアル様が謝っているのは三白眼の男性。髪はシルバーで耳が尖ってますから、『闇森妖精族』でしょう。細身のルーク様に比べて少しだけ筋肉質です。
「よいよい。儂はユリウス=ケーサル・キンガー・ド=リベルティア。この国の王なんぞをやっとる」
「私はジュリウス=シーズ・アリーヤ・ド=リベルティア。王太子だ。宜しく」
ふむ。ユリウス陛下は『人族』の血が濃いようですね。髪はルーク様と同じ金髪ですが、目は、どちらかといえば鋭い。ジュリウス王太子殿下の目は陛下似ですか。
「私はね〜、アイリス=エヴァ・ド=リベルティア。第一王女よ〜」
ゆる〜い感じのアイリス殿下は……多分『水妖精族』?
肌の色は普通の『人族」に近く髪は青っぽいんですが、水みたいな質感です。
「アイリスでもエヴァでもどっちでもいいわよ〜」
「それでは、アイリス殿下、よろしくお願い致します」
ゆるゆるですねぇ。
しかし、この国の王家には様々な種族の血が入ってると聞いてましたが、ほんとなんですね。
ん? そういえば王妃様がいない。
「だ〜れだ?」
へ!?
嘘、いつの間に……。
「これ、ローラ。初対面でいきなりは無いだろう」
「ふふふふ」
今の陛下のセリフからするに、
「王妃さま?」
「そーよ? ブランちゃんっ!」
だそうです。
敵意が一切なかったので反撃せずに済みました……。危ない危ない。
「ビックリさせてごめんなさい? 私はローラ・ド=リベルティア。よろしくね」
なんでも、元々彼女が諜報部を統括していたらしく、彼女自身そちらを得手としているのだとか。
一見わかりませんが、『吸血族』である私と近い気配を感じますので『闇妖精族』でしょう。つまりローズと同じです。
あ、私が推測で話してるのは、流石に王族相手に無断で〈鑑定眼〉を使う気がないからです。当然ですね。
「はい。王妃殿下」
「んーもう! 殿下とか堅いわよ。呼び捨て……」
「は流石に不味いぞ?」
「なら、様ぐらいでいいのよっ! プライベートだし? タメ口でもいいくらい!
ね? みんなっ」
……なるほど。ローズとアイリス殿下を足したら王妃殿下ですね。
間違いなく御三方は親子です。
「お母様もそう言ってるし、いいんじゃないかな?」
「私も構わん」
「ローズちゃんばっかり狡いと思ってたのよね〜」
「儂も問題ない。というわけで、王命にしよう」
え、えぇ……。軽すぎません?
って、週一で誰かしらに街で会える時点で、今更でしたね……。
「……わかりました。とはいえ、最低限の敬語は使わせてもらいます」
「ま、それは仕方ない。ローズのように褒美として与えるならともかくな」
自由ですねー、ここの王族。
ブラン、そんなにガチガチになる必要は無さそうですよ?
早く慣れた方が身のためです。
「さて、そろそろ本題に入ろう」
「本題ですか?」
「ああ。そなたと直に話したいという事もあったがな」
何でしょう?
やっぱりローズに案内された機密事項関係がまずかったんですかね?
「なに、悪いことではない。姪を助けてもらったであろう? 公的に褒美をとらすわけにはいかんが、私的には問題ない。というわけで、なにか希望はあるか? 儂らとタメ口で話す権利でも構わんぞ?」
「いえ、それは要りません」
あ、なんでみんなそんなに残念そうなんですか!?
ローズはドヤ顔辞めなさい。ウザいので加重の刑です!
「ぐふっ、またっ……」
あれはしばらく放置するとして、願いですか。
……現状、一つしかありませんね。
「では、元帥殿と一戦、剣を交えさせてください」
「……ほう?」
「本気か?」
「……ちょ、ねぇ…………」
「ええ、本気です」
これでも私、【戦闘狂】な『狂戦姫』ですからね。
「……よかろう。アリエルを呼べ」
その声に従って、壁に控えていた侍女の一人が部屋を出て行きます。
「ねぇ……、おーい?」
「噂通りの【戦闘狂】、か」
「ええ。それが全てでも優先事項でもありませんがね」
フフフフフ。あぁ、楽しみです。
あのジジイと同じか、近い領域にあるであろう、剣の神。早く戦いたいですね……!
思わず魔力が高まってしまいます!
「わ〜。凄い魔力ね〜」
「むぅ……、これほどとは」
「う゛……なんか……だん、だ、ん……重く…………!」
「精霊種の兄さん達には辛いね、これは」
「抑えてもら……えそうにはないな」
「姉様がこうなったら、……もう無理」
なにやら呆れでブランが王族と普通に話せるようになったらしいですね。この時。
今の私にはそんな事気にかけられませんが。
あぁ、早く早く早く早く!
早く来てください! もう、待てません! フフフフフッ!
「アルジェー……、あ、るじ、ぇさーん……」
この、溢れんばかりの思いを、どうか、一瞬でも早く、あなたに届けさせてください!
愛しき人よ!!!
「もう、ダメ…………(バタっ)」
咸卦法、調べても中国語のサイトしか出てこない…。せめて知ってる漢字の割合が高ければ大体の意味はとれるのに、全然わからない字ばかりなんです…。
日本語もあるにはありますけどオール「ネギま!」…。





