第22話 暴走:side アルジェ
GW,毎日投稿、二日目です!
2-22 暴走:side アルジェ
ここは、どこでしょう?
先ほどまで、訓練場でシンと模擬戦をしていたはずですが……。
まったく見覚えのない場所です。
まぁ、あってもおかしいですか。何しろ、何もない、真っ暗な空間ですからね。
うーん、しかしどうしましょう。
動けはするんですけど、だからどうしたって、感じです。
……おや?
あれは何ですかね? 明るい靄のようなものがあります。
え?
ブランとテオとシン?
戦ってる?
何と?
……私?
いったい、どういう事でしょう?
「気づいたかの?」
「!? どうして、ここにいるのよ?」
「なんじゃ、儂がおったらまずいのか?」
当り前じゃないですか。だって、あんたは……。
「いえ、ありません。…………師父」
「今は修行中でもなかろう。いつも通り呼べば良い」
「……ジジイ、質問に答えなさいよ」
「しっかし、すっかり女言葉が板についたのう。カッカッカ!」
「…………」
「……はぁ。久しぶりの孫と祖父の再会じゃと言うのに、つまらんやつじゃのぅ」
「……本当にジジイなの?」
「なんじゃ、疑っておったのか。正真正銘儂じゃ。川上流第十三代師範川上源龍斎じゃよ。なんなら、弘人の恥ずかし〜い思い出でも語ってやろうかの? アレは、弘人が十三歳の夏じゃったかの? 四川の方に行った時……」
「あ゛あああああああ! わかった! わかったから! ジジイだ! そのこと知ってるのはジジイだけだ!」
「ふむ、わかればよいのじゃ」
「それで?」
「まったく、相変わらずせっかちなやつじゃ。同じじゃよ、お主と。転生したんじゃ」
「は!? 何言ってんのよ? 私が死んだ時、アンタまだ生きてたでしょう」
「そこら辺は知らん。儂に聞くな。取り敢えず、儂が転生したのは、今から数百年は前じゃ。『龍人族』としてな」
……以前、ジジイが転生してたら、何て考えましたけど、本当にしていたとは……。
しかし、この時差は何なんでしょうね?
「まぁいいわ、それで、ここはどこなの?」
「ここか? お主の精神世界じゃが?」
何当たり前のこと聞いておるんだ? みたいな目で見られても、普通わかりませんから……。まったく、このクソジジイは……。ふふふ。
「じゃあなんでジジイがココにいんのよ? 夢オチはなしよ?」
「ふんっ! 弘人、お主が未熟だからじゃ!」
「……どうゆうことよ?」
「まったく、嘆かわしい。わからんか。貴様がうじうじ、うじうじ悩んどるから、お主の剣に呑まれたんじゃよ。アレはなかなか狂った神の力を宿しとるからのう」
「なっ……。じゃあ、やっぱり、今ブラン達が戦ってるのって……」
「お主じゃな。荒れ狂う神の力を体現する禍佗神流の継承者がこの体たらく。全くもって嘆かわしいかぎりじゃ」
川上流を継承した記憶はありませんが、大事なのはそんな事ではありません!
「ちょ、どうやったら戻れるのよ! ブランが、私の可愛い天使が!!」
「(……シスコンが新しい溺愛対象をつくりおったか。あの子の代わりかの?)まぁ落ち着け。そんなに複雑な話ではないからの」
「誰がシスコンよ!」
「…… 師の心を読むでないわ! ……まあよい。さっきも言ったじゃろう。お主が悩んどるからからあの剣の力に心の隙を突かれたんじゃ。ならさっさと悩みなど捨ててしまえ!」
悩みを捨てろなどと、……このジジイ、分かってて言っているのでしょう。
「そんな簡単なものじゃないでしょう」
「簡単じゃよ。あの子、ブランじゃったか? ブランを、お主はなぜ助けた? 何故家族として迎え入れた?」
「そんなの、決まってるわ! あの子に幸せにいきて欲しかったからよ!」
「ほれみろ。始めから、お主の中にも答えはあるじゃないか。……今を精一杯生きればよい。あの子を幸せにする事だけ考えておればよい。お主がそれを、大切な思い出としておけるように。そして、その時に後悔せんようにのう」
「ジジイ……」
「ま、老いぼれの戯言じゃ。全て真に受ける必要はない。この先の長い時間でお主の最終解答をみつけるのじゃ。……お主の妹もじゃが、何より、お主が幸せになるのじゃぞ」
「……当たり前、よ」
本当に、懐かしい。まだ何ヶ月も経ったわけじゃないのに。私は、俺は、このいつも厳しいクソジジイの、時たま見せる優しい笑顔が大好きだったんだ。頬が濡れた感じがしますが、気のせいです。ここは、“精神世界”、ですから。
「ほれ、そろそろ時間じゃ。妹とお友達はそろそろ厳しそうじゃぞ? さっさと鎖を断ち切らんかい」
「ええそうね。……ありがとう」
「かっかっか! 気にするな! あぁそうだ。エルフの女王に伝言を頼まれてくれるか?」
「? ええ、それくらいなら。でも生きてるの?」
「あやつは先祖返りのハイエルフじゃ。まだまだ寿命の半ばじゃよ。あぁそういう意味では経験を聞くのもよいかもな。それで、伝言じゃが『ぶった切ってしまって悪かった』というだけじゃ」
「了解。それじゃ、ね」
「達者での」
私たちに、多くはいりませんね。
……しかし、何をぶった切ったんでしょうね?
◆◇◆
「……行きおったか。これでよかったんじゃろ?」
源龍斎は、主人の消えた精神世界で、何者かに話しかける。
「……ええ。問題ありません」
「なんじゃ、何か言いたそうな顔しおってからに」
いつのまにかそこに居た管理者は、不思議な者を見る目を眼前の老人に向けていた。
「いいのですか? 我々があの者を利用している事は承知しているでしょう」
「なあに、どうせ彼の世界は滅びるのじゃろ? あの子に戦を経験させてやれるし、ちょうどよかったんじゃ。それに……」
「?」
「あの子をあまり見くびるでないぞ? “古の支配者”たちよ」
老人から向けられた鋭い視線に、神であるはずの管理者は、確かに、悪寒を覚えた。
背筋がゾッとする感覚。まさか“人”からそのようなものをうけるなどとは考えていなかった管理者は、もう消えてしまった、老人のいた場所をただ、見つめているだけだった。
◆◇◆
「くっ! 今ので矢は最後です!」
「あーもう! 強化されすぎだろ!?」
「うぅ、やっぱり姉様強い……」
あら? 本当にギリギリでしたね。三人ともボロボロです。
んー、もう少し遊びます?
おっと、ブランの結界ですね。これに捕まるのは面倒です。
「てか、なんで誰もこねぇんだよ!」
「訓練場の機能、忘れたんですか!?」
「だぁー! もう!」
おっと。地面壊さないで欲しいんですが?
「…………」
「おい、妹ちゃん! 立ち止まっ――っと!」
ちっ。もう少しで顔にそれっぽい傷を作れたのに!
「ダァァァ、クソッ! 急にリズムが変わったぞ!!」
「……(じー)」
……あら? ブラン?
とりあえず、魔法が鬱陶しいテオには雷をプレゼントしましょう。
なーに、魔法への耐性が高いエルフなら死にはしませんよ!
風属性でエーテルを操作して静電気を起こし、火属性で増幅します。
瞬間、凄まじい稲光と轟音と共にテオに降り注ぐ、数条の雷。
うーん、実際の雷が発生するプロセスを辿ってみましたが、初めからある程度のエネルギー持たせて静電気に魔力を直接変換した方が威力は上がりそうですね。かと言って上げ過ぎれば費用対効果的に微妙です。
「な、おい! テオ!」
「くっ……。大、丈夫、です……」
お、思った通り耐えましたね?
「……(じー)」
次は重力でも増幅してみますかね?
光属性でそのまま彼らの周辺の重力を上げればいいでしょう。
「くそ、さっきまで魔法なんてつかってこなかっただろうが! ってなんだ!?」
「突然、体が重く……!?」
「これも嬢ちゃんの魔法か?」
まだ余裕そうですね?
ブランはちょっと苦しそう?
まだ重力上げられますが、効率悪いですね。これ。御倉行きで。いや、ブランの修行には使えますか。
「(びくっ!)」
「ブランさん!? 今度は一体何を!?」
「うんう、何か、凄い悪寒が……」
ブラン、勘が鋭くなってきました?
良い傾向ですね。フフフフフ
あ、そういえば、前にシンに『爆殺姫』なんて言われましたね! ちょうどいい機会です。お望み通り爆殺してやりましょう!(※シンが言い出したわけではありません)
「ちょ、あれ、スタンピードの時のやつか!?」
「た、退避ー!」
「…………姉様、だよね?」
……あら、何でバレてるんでしょ?
とりあえずこの魔力塊はポイしましょ。
「やっぱり戻ってる」
「……はぁ!?」
「ブランさん……それは、いったい」
「姉様、もう正気に戻ってる」
集まる視線。そんな熱い視線を送られても、困りますよ?(ポッ)
「……いつからだ?」
「テオの矢が切れたあたり」
「……なぁ、テオよ」
「……えぇ、シン」
なにやら真っ黒なオーラをただ寄せながら二人が近づいてきます。
「ちょ、落ち着きなさい。さっきの私より禍々しいオーラ放ってるわよ!?」
「我々は落ち着いてますよ? ねぇ? シン」
「ああ、そうだな、テオ」
じゃあその気持ち悪いオーラと笑いを引っ込めてもらえませんかね? 目が笑ってませんよ?
シンも、ヒャッハーしてないじゃないですか?
「さっきの雷、死ぬかと思ったんですよね?」
「俺もさっき、顔面斬られかけたな」
「……私は体、重くされた以外なにもされなかった」
「当然よ! 私がブランにそんな酷いことするはずないじゃない!」
「うん、知ってる。……訓練以外では」
「「(じとー)」」
「(ついっ)」
それはもうリオラさんにしこたま怒られたんで、許してもらえませんかね?
ジリジリと二人が寄ってきます。
そしてジリジリと退がる私。とんっと壁に当たる背。
「え、えぇと……」
「「この、戦闘狂が!!!!」」
「ごめんなさーい!」
その後罰として、もう谷やら山やらできちゃった訓練場の整備をさせられました。……魔法なしで。
――もう、迷ったりなんかしません! 絶対に!(泣)
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<ステータス>
名前:アルジュエロ・グラシア /F
種族:吸血族(人族)
年齢:18
スキル:
《身体スキル》
鑑定眼 言語適正 (魔力視) (神聖属性適性)→光属性適性 縮地 吸血lv6 高速再生lv7 気力操作lv4(2up) 大剣lv7(1up) 刀術lv8 体術lv7 淫乱lv8(1vp) 威圧lv5(1up) 魅了lv5(1up) 隠密lv4 解体lv2 舞踏lv3(1up) 見切りlv4 身体強化“気”lv4(2up) 気配察知lv4 演算領域拡張lv5 高速演算lv3(1up) 並列思考lv3(1up)
《魔法スキル》
ストレージ 創翼lv6 飛行lv5 魔力操作lv9 火魔導lv6(1up) 水魔導lv6 土魔導lv6(1up) 風魔導lv7(1up) 光魔導lv6(1up) 闇魔導lv5 神聖魔法lv4 (死霊魔導lv1) 隠蔽lv MAX 身体強化“魔”lv5(1up) 魔力察知lv2 物質錬成lv5 付与lv4
称号:(転生者) 吸血族の真祖 (12/10^16の奇跡) 強き魂 (魔性の女) (副王の加護) 寂しい人 うっかり屋 戦闘狂 鬼師匠
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