ファーストバレンタイン
ぬぁあああ! 間に合わなかった!!!
バレンタインss書こうと思ってたの忘れてて、さっき書き始めましたが、流石に14日中は無理でした……。
勢いで書いて推敲もしてないので、誤字とかあったらごめんなさい!
今日もお城の談話室に、本のページをめくる音が響きます。それと、暖炉ではぜる薪の音。
今この部屋にいるのは私と使用人の子数人だけで、スズやブランの姿はありません。
使用人の一人が入れてくれた紅茶を口に含み、そのスズやブラン達がいる窓の外へ視線を向けます。
どうやら、今日の訓練を終えたようですね。
「最近、スズはブランとコスコルの指導ばかりしてるわね。偶にはスズに双剣以外の指導をするのもありかしら?」
……返事はなし、と。この子たちにももう少しフランクに接して欲しいんですが……。
まあアリスとコスコルの時も時間がかかりましたし、気長にいきましょう。
「ただいまー」
「ただいま」
暫くすると、その三人とアリスが談話室に帰ってきました。
訓練組はお風呂で汗を流していたらしく、少々髪が濡れて頬に赤みが差しています。
コスコルだけ普段通りなのは、先に上がって待っていたからでしょう。
コスコルとアリスは入り口でお辞儀をして、使用人の列に加わります。
「ふぅ、あったかい」
スズが緩みまくった声を出して机に突っ伏してる姿に、思わず苦笑いを漏らしてしまいます。それはそれとして。
「二人とも、さっさと髪を乾かしてしまいなさい。風邪ひくわよ?」
今の体なら、多分大丈夫ですがね。
「ん〜、ならお姉ちゃんよろしくー」
まったく、仕方ないですね。って、ブランもですか。本当に仕方ないですね。
「姉様、本音は?」
「可愛いし嬉しいしお姉ちゃんウキウキ……んんっ! いいから早く来なさい!」
ええそうですメチャうきうきしてますが何か文句でも!?
気を取り直し、魔導で二人の髪を乾かしていきます。
「あ〜、お姉ちゃん、髪乾かすの上手くなったよね」
「そりゃあね。今は自分も女なんだし」
「そかそか。それにしても、今日はホント寒かったー」
そう言われて窓の外、そのさらに奥の結界の向こうへ目を向けると、白い雪の降る空が見えます。
「今年だけよ。来年には私の魔力で気候が安定するから」
まだこちらへ引っ越してきたばかりですし。
「そうなの? それはそれでちょっと残念」
「うん……」
まぁ、降らせようと思えば降らせられますから、時々結界内にだけ降らせてもいいですかね。
「そういえば、あっちじゃそろそろバレンタインじゃない?」
「そうね、それくらいかしら?」
まだ正確な暦がない世界ですから、大体ですけど。
「バレンタイン?」
「うん。女の子が好きな人にチョコを送る日だよ」
「へぇ。……バレンタイン」
これは、興味を持ちましたね?
「スズ、あなたチョコ作るの得意よね?」
「もちろん。チョコは、エドさんに頼めば沢山手に入るよね?」
「ええ、その筈よ」
エドは私が支援するようになってから、自分の店をかなりの大商会にまで発展させましたから、少なくとも仕入れる事はできる筈。転移者だったリベルティアの建国王がチョコを広めていたそうですし。ダメでも色んなコネを使うまでです。
「お姉ちゃん」
「スズ」
互いの目をまっすぐ見て、そして頷きます。
可愛いブランの為、全力を尽くしますよ!!
翌日、アリスと私たち姉妹は、城の厨房に立っていました。幸い、必要な量のチョコやその他材料は直ぐに確保できたので。
ちなみにアリスとスズ以外は初のエプロン装備です。妹二人が可愛すぎて既に昇天しそう……。
「さて、お湯、は魔法で直ぐ用意出来るから、チョコを細かく刻もうか」
「細かく刻めばいいのね? はい、ブランっ!」
「んっ!」
ブランの持つ包丁が宙に白線が閃き、私の投げたチョコが細切りになって皿に落ちます。うん、バッチリですね!
……何故かスズとアリスがジト目を向けてきています。
「……まあいっか。楽しそうだし」
「いいのですか……?」
しっかり共同作業してるだけなのに、何が気になるのでしょう? この二人は。
とにかく次ですね。
「お姉ちゃん、湯煎するなら、こっちのボウルにお湯だして」
「了解。っとこんなもの?」
「うん、ありがと!」
そこにスズが、一つ目のボウルより気持ち小さいボウルを浮かべます。お湯がチョコの中に入らないようにぴったりサイズのボウルを使うのだとか。流石スズですね。
そのボウルへ先程ブランに刻んで貰ったチョコを投入。ゆっくり溶かしていきます。
「手慣れてるわね」
「そりゃ、向こうじゃ毎年作ってたしねー」
このとろとろに溶けたチョコを型に流して冷やせば完成。思ったよりチョコ作りって簡単なんですね。
「いきなり難しいのは作らないって」
それもそうですね。
スズが溶かしたチョコを小さめの器四つに分けていきます。
使う型は私がスキルで作ったもの。形は、丸とか四角とか、まぁテキトーです。
「……せめてハートとか、もう少し可愛いのないの?」
仕方ないですね。
「ん、ありがとっ」
次は相談して作ったほうが良さそうです。
それぞれチョコを型に流しこんでいくのですが……これどこまで入れたらいいんですかね?
まあテキトーでいいですか。スズのを見ながらで……これくらい?
ブラン、意外と不器用なところもあるんですね。結構零してます。器の淵からも垂れまくってますね。可愛いです。
スズ……は出来ると知ってます。意外と女子力高いんです。可愛いです。
アリスも、元王宮勤めですからね。手際良くやってます。ハートが多め。コスコル用だそうです。相変わらず惚気てきますね……。
「……ふぅ。こんな所かしら?」
「うん。後はこれを冷蔵庫で……」
「その必要はないわよ?」
というわけで、チョコの周囲の温度を下げつつ時間をはやめれば……。
「三分間クッキング、なんてね」
「……魔法ってほんと便利だね」
ですね。
さて、それじゃあ食べてみましょうか。
……うん、美味しい。
地球とほとんど同じレベルのチョコが食べられるのは、リベルティア建国王のおかげですね。
スズも満足げです。
「……ん、美味しい」
ブランは頬を赤らめ、珍しくハッキリ分かるくらいに口元を緩めています。天使です。
その様子を見て、スズと私は頷き合いました。
おっと、そうです。
「アリス、先にコスコルに渡して来ていいわよ。たぶん首を長くして待ってるから」
「……はい。ありがとうございます」
アリスが彼女の作ったチョコを器に入れて厨房を出ていきます。
ちょっとソワソワしているあたり、あの子も可愛いものですね。
「それで、お姉ちゃんはいつジル義兄さんに渡すの?」
「……ゴホッゴホッ! ス、スズ、突然何を!?」
「姉様、渡さないの……?」
ブランまで!?
ま、まあ、あちらはバレンタインなんて知らないでしょうし、お世話になった事もあります。労いの意味で渡してくるのも吝かではありませんが。
そう、あくまで労いです!
「はいはい。それじゃ、今から行こうか?」
「うん、それがいい」
「仕方ないわね……」
というわけで、サクッとジネルウァ様の所に[転移]です。
「っ!? と、アルジェか。それにスズとブランも」
「やっほー、ジル義兄さん」
「こんにちは」
ジネルウァ様は執務室で仕事をしていたみたいで、室内に他に人の気配はありません。廊下には人が控えているようですが。
「はい、これバレンタイン!」
スズ、せめてもう少し前置きを……。サクッと渡してます。ブランもスズに倣ったので、後は私の分だけですね。
「これは、チョコか?」
「うん。ほら、お姉ちゃんの分も!」
「え、えぇ。……はい、私からの分よ」
自然に渡せてましたよね?
変じゃ無かったですよね!?
「ほう、アルジェからの贈り物か。これは嬉しい」
「そう、なら良かったわ」
余計な事を聞かれる前に、さっさと帰りたい……!
「……そうだ、思い出した。バレンタインか。アルティカ様と師匠が話していたのを聞いたことがある」
なっ……!? くっ、ジジイめ! 余計な事を……!!
「そうかそうか。バレンタインか……。アルジェ、食べてみても?」
「毒味はいいのかしら?」
「ははは、君がその気なら、そんな回りくどい真似をする必要もあるまい。悔しいがな」
……スズがニヤニヤして。ええそうですよ。ただの強がり、誤魔化しですよ!
「……ふむ、美味しいな」
「そ、そう」
それなら、まあ、良かった。
味が関わりそうなところはスズがやってますから、当然ではありますけど……。
それからなんとか、気をしっかり保ったまま自分の城まで戻りました。
最後だけなんだかどっと疲れましたね。ふぅ……。
「ブランちゃん、どうだった?」
「ん、楽しかった」
「そっか、良かった!」
……まぁ、この笑顔を見たら疲れなんて全部吹き飛びましたが。
「……そうね、来年も作りましょうか」
「そうだね。今度はもう少し手の込んだやつ」
「うん!」
読了感謝です。
その内この世界使って別キャラ主人公の話書こうかと思ってます。
書き始めたらここになにか短編を投稿して、その中で知らせるつもりですので、その時はよろしくお願いします。





