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12/10^16のキセキ〜異世界で長生きすればいいだけ……だけど妹たちに手を出すなら容赦しない!〜  作者: 嘉神かろ
第七章 奏でるは人と竜の災歌

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第九話 真紅舞い散る

評価ありがとうございます。

7-9 真紅舞い散る


 再生を終えたレテレノを見据え、高速で思考を巡らす。

 現状分かっている能力は、九つの魔眼の内三つと、〈付与〉、思念体の作成能力、かなり高位の鑑定能力、高レベルの〈神聖魔法〉、そしてあの樹木結界だ。

 魔眼は、拘束、炎の雨、暴風の三つが分かっている。


 樹木結界は恐らく、土属性の『理外の(アウター)スキル』。これは、いくつか対策があるので然程警戒する必要は無い。


 怖いのは残りの魔眼か。

 あの数の魔眼の、力のバランスを保つには一定の法則があって然るべきなのだが、それがわからない。

 地竜の一種というレテレノの種族を考えても、めちゃくちゃなのだ。


「姉様、スズ姉様! 何かくる!」


 そこまで考えた所で、ブランの声が聞こえた。

 スズはブランの声が聞こえる前には動いていたらしく、無傷だ。

 私も〈超直感〉に従って回避行動をとったが、間に合わない。

 左腕に鋭い痛みを感じる。

 鮮血が舞い、腕が袖からずり落ちていく。


 直ぐに〈怠惰なる地底の王(ツァトゥグァ)〉の物質操作で支えて再生する。


 今のは、四つ目の魔眼の力か。向かって右側の、まだ使われていなかった最後の一つに魔力が集まっているのが見えた。


 〈吸血〉を発動しながら、私はレテレノの直ぐ下へ転移する。

 妨害はしてきたが、空間支配能力は私の方が上らしい。

 そのまま飛翔する勢いでレテレノの膝に剣を突き立て、走る。

 愛剣は容易く古代竜の鱗を引き裂いていく。


 勿論レテレノも黙って見ているわけではない。

 その爪を振るい、暴れ、魔眼を使い、私を振り落とそうとしてくる。


 その全てを躱し、上へと駆ける。


 時折私と逆の足元へと攻撃をしているのはスズがそちらにいるからだらう。


 その脚の半ばまで来た時、〈超直感〉が警鐘を鳴らした。

 すかさず転移で退避し、陣を描く。


「スズ、ブラン!」


 そして発動。

 私の血でやつの頭上に描いた魔法陣が銀光を放つ。


 そこから降り注ぐのは全てを無へと帰す黒。

 [虚無(イネイン)]だ。


 少なくとも、これで大きなダメージを与えられた筈。

 だがそれは私たちの願望でしかなかった。


 レテレノは複数の障壁で[虚無]の到達を遅らせると、極光のブレスを吐いた。

 僅か数秒の溜めの後に放たれたそれは闇に衝突し、やがて飲み込む。


「あれは、まともに受けたら一発で死ぬわね……」


 とは言え、収束され一方向に限定されたものだ。数秒の溜めが必要な事も考えれば早々食らう事もあるまい。

 今の一撃で総量の一割近くの魔力を消費しているし、乱発はしてこないだろう。


 などと思っていたら、暴風が炎の雨をのせて襲いかかって来た。

 [恒星の(ルミナス・)裁き(ジヤツジメント)]を複数併用しつつ、もう一つの魔法の準備に入る。

 炎と暴風を超えた閃光は確かにダメージを与えているが、微々たるもの。


 あの巨体だと、避けるという発想は無いらしい。


「だったら、コレも食らっときなさい!」


 レテレノの頭上に転移し、その四方より遠隔で術式を発動する。


 別々の方向から自身へと向かってくる新星の怒り。レテレノは障壁を張ることしかできない。


 その障壁も、スズが〈勇者〉に内包されていた[絶対切断]によって破壊する。


 私のオリジナルの中では最大威力の魔法を四発同時だ。流石の古代竜でも堪らなかったらしい。


 一発は右前脚の半分を抉り、一発はその背の鱗を砕く。

 そして残りの二発が左後脚の上半分を消し飛ばした。


 切断された部位はスズが回収する。


 更に、私の影に隠れていたブランがレテレノの折れている方の角に着地。

 そのまま回り込み、謎の切断効果を持った金眼へとその刀を突き刺した。


「――ッ!?」


 人の可聴域を越えた絶叫が樹海に響く。


(イケるっ!)


 その思考がきっかけとなったのかはわからない。

 少なくとも、油断ではあった。


「――ァァァァァアアッ!!」


 物理的な破壊力を伴った咆哮が、私たちを吹き飛ばす。

 ブランとスズは大体同じ位置。

 私は更に上空へと。


 体勢を立て直し、駆け出そうとしたスズとブランが膝をついた。

 更に地面から木の根が生え、二人を拘束する。


 スズは直ぐに拘束を解き、後ろから迫る存在に反応した。


 一瞬動きが止まる。


 その間レテレノがしていたのは、エネルギーのチャージ。


 二人目掛けて、[虚無]すら飲み込んだブレスが放たれる。


 私は構築していた魔法の制御を手放し、急いで二人の前へと転移した。


 三人でブレスに対して障壁を張り、私は大剣を盾にする。


 視界が染まる。


 見えるのは、盾にした大剣の影のみ。


 ――光が収まった。


(な、なんとか耐え切った……。二人は……)


 後ろをチラリと振り返る。


 そして見てしまった。


 その惨状を。


 私の右側に横たわるのは、右半身を抉られた黒髪の誰か。


 左は、左腕と、頭の半分以上が消し飛んだ黒装束の誰か。


 真っ赤な液体が地面に広がっていく。


 二人は、死んでいた。



読了感謝です。

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