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12/10^16のキセキ〜異世界で長生きすればいいだけ……だけど妹たちに手を出すなら容赦しない!〜  作者: 嘉神かろ
第六章 アーカウラの深き場所

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第六話 青い空に雲は見えない

ほのぼの回

6-6 青い空に雲は見えない


 一瞬の浮遊感の(のち)、まず目に入るのがボンヤリとした、足元の魔法陣から発せられる光。そして地上へと続く階段です。


 その階段を登り、迷宮の管理をしている建物を抜けて外へ出ます。


「ふぅ。やっぱり地上がいいね」

「うん」

「あら、そう?」


 私は二人とは違って地下で暮らす種族だからですかね? 特に地下で息苦しいという風には感じませんでした。


 建物の周囲にある広場を抜け、建ち並ぶ屋台の間を少し歩くと、見えて来るのは縦横八メートル程の門。

 一軒家が丁度入る程度の大きさの門が備え付けられているのは、迷宮区画を区切る灰色をした石の防壁です。


「おかえりなさいませ、マスター」


 門を潜ってすぐの所で、アリスとコスコルが出迎えてくれます。


「ただいま、二人とも」

「ただいまー!」

「ただいま」


 二人と合流し、壁に沿って歩きます。

 時刻は、一つ目の太陽が天頂を過ぎた頃。今日は街の食堂で昼食をいただく予定です。


「おーい! 『戦乙女(ヴァルキリア)』のお嬢ちゃん達ー! 今日もいい天気ね! 一本食べてかない⁈」


 迷宮の敵に対するスズの愚痴を聞きながら歩いていると、そんな声が耳に入りました。声の主は、薔薇の模様が付いた屋台の店主です。


「ありがとう! 今日は予定が決まってるから、遠慮するわー!」

「そーかい、また来てちょうだいねー!」

「ええ!」


 ふむ、どうやらまだ焦らなくて良いようですね。

 では予定通り、食堂へ向かいましょうか。


 薔薇の屋台を過ぎてすぐに道を逸れ、街の外縁部方向へ向かいます。

 いくらか歩いた所で人が減ってきたので、自分たちに[浄化(クリーン)]をかけました。装備にも付与されていますが、念のためです。

 このタイミングで、唯一鎧を纏うスズが私服に着替えます。〈ストレージ〉を応用した早着替えなので、人目を気にする必要はありません。便利ですね。

 なお、コスコルは初めから私服です。


 冒険者向けの商店が建ち並ぶ区画を抜け、私達の泊まっている宿屋のある辺りを超えると、一気に生活感の溢れる通りになります。

 一般の民家が増え、商店も食材や日常品を扱った店が目立つようになるんです。


 目的としている食堂は、その一般の区画に少し入ったところ。来るのは二度目です。


「いらっしゃい!」


 ドアを開けた時のチリンチリンというベルの音に返事をしたのは、この食堂を経営する夫婦の娘さん。まだ幼さの残る少女で、所謂看板娘です。


 ざっと広くはない店内を見渡して、六つあるテーブル席の内の一つに座ります。

 小綺麗な店内の、カウンターを含めた三分の二ほどの席が埋まっており、着ている服は皆それなりに綺麗です。中古だとは思いますがね。


 冒険者に伝手があるらしいこの食堂、迷宮産の野菜や肉をつかったそのメニューは多くありませんが、その分かなり安いです。


「ふぅ、改めてお疲れ様」

「お疲れー」


 席について、一息。ブランも頷いています。


 それから娘さんに注文をし、雑談に移ります。


「こっちの話はだいたいスズがしちゃったけど、そっちはどうだったの?」


 アリスとコスコルへ視線を向けます。


「やはりAランク迷宮は一筋縄ではいきませんね。私だけでは手数が足りなくなっていたでしょう」

「防御力の低い相手でしたから、私の暗器術でも倒しきれましたが、一人なら今頃身体中穴だらけになっていました」


 なるほど。『禁じられた知識の園』は数で攻めて来るタイプの迷宮なんですね。


「そういえばさ、あ、料理来た」

「おまちどー」


 木製の机がコトリと音を立てます。来たのは、野菜炒めですね。


「ありがとう」

「他のも今持ってくるからね!」


 元気ですね。

 先に野菜炒めを食べている間に、他の料理も来ます。


「うん、美味しい!」

「そうね」


 ブランも、お肉を頬張りながらコクコクと頷いています。アリスとコスコルも一つ首肯。かなり腕が良いですよ、ここの夫婦。


「それで、スズは何を言おうとしてたの?」

「あ、そうそう。……アリス達が行ってる迷宮さ、色んな秘密が知れるって聞いたんだけどどうなの?」


 スズは少し声を落として聞きます。


「そうですね。確かに一般には知られない知識が多くあるのですが、全てマスターに聞いていた内容でした」


 同じくコスコルが声を落として返します。


「そうなんだー。じゃあ、行かなくてもいいかな?」

「そうね。どの道時間があるかはわからないわよ? まだ向こうに動きは無いみたいだけど」


 竜魔大樹海の古代竜(エンシェントドラゴン)、レテレノのことです。


「それまでに、強くならないと」


 決意新たに、といった感じで拳を握りしめるブランは相変わらず天使です。でも。


「焦る必要は無いわ。着実にいきましょう。あなたは普通より強くなりやすいんだから、大丈夫よ」

「……うん」


 無理をするのは良くありませんからね。


「さて、二、三日ゆっくりしたらまた潜りましょうか」

「そうだね」

「わかった」

「では、私共もその日に攻略を再開いたします。アリス、いいかい?」

「もちろんです」


 みんなやる気十分ですね。

 それでは、今はこの食事を楽しむことにしましょう。



読了ありがとうございました。

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