3話---鎖の少女
シルの属性は「火」と「水」
火と水は本来なら相殺し合う属性のはずなのだが、シルは違った。シルの火と水は融合して水の色が火の色になり、水の形であった。
「俺の属性が一つになったとき………あの力はなんなんだろう」
「シル~シャワー空いたよ~」
「おう、ありがとう」
今は考えても仕方ない。前に進むだけだ。とりあえずシャワーを浴びた。女の子の匂いがした……。
そのあとはなぜか一つしかないベッドをみんなで一緒に寝るはめになったのだ………。
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シルは夜中、小さな物音で起きた。
(ん………なんだろう。この二人でもないみたいだし……)
シルはベッドから出て外を見た。外には魔物がいたが違う音だと感じていた。廊下に出ると誰かが階段を降りていく音がした。その音の先へ行くとその足音は外へ出て行った。シルは外へ出てその人をつけてみた。
(こんな夜中に誰だろう。背も低いし危ないだろう……)
するとやはり魔物がその人に襲いかかった…ように見えた。いや、正確にはその前に魔物が吹っ飛んだのだ。
「な、なんて強さだ……属性か……!?」
その時シルの背後からも魔物が襲いかかってきた。シルはしゃがんで攻撃をかわし、一か八かで唱えた
『ウォーターアーム!』
シルの右腕が水に変わり魔物を弾き飛ばした。
「だれ!?」
つけていた人に気づかれたみたいだ。シルの方へ歩いてくる。
「……新手か!」
そう言うとその人はシルのいる方に向かって攻撃してきた。
ジャラッ! ジャラジャラ!
「鎖…?まさかフェーンズ町の人か!」
「逃げるのか!」
「あまり戦いたくないが……」
シルは鎖をよけて唱えた
『フレイムアーム!』
今度は左腕が火の腕に変わった。
「あんた……属性持ちの魔物…?それでも問答無用よ!」
鎖の人はシルの足首を鎖で捕らえた。シルは鎖を火で溶かし後ろへ下がった。
「へぇ……私の鎖を溶かすなんて………私も本気を出すわ!」
『カオスイリュージョン!』
そう言うと鎖の人はまた攻撃してきた…が、今度の鎖は何かが違った。鎖が冷たく強度がましたように見えたのだ。
「氷が鎖と一体化しているのか…!?」
「よくしゃべる魔物ね!」
シルは氷の鎖をかわすだけで反撃ができなかった。属性の効果を発揮すると飛躍や移動速度が上がった。しかしそれは相手も同じみたいで逃げれば猛スピードで追いかけては攻撃してきた。
「くっそぉ。ローブで顔があまりわからないし、これじゃ俺の体力がもたないな。」
シルは龍をイメージしながら唱えた。
『業火の龍!(デッリンフェルノ・ドラグーン)』
シルのフレイムアームから無数の火の龍が出ていった。その龍は鎖の人の氷の鎖を避けながら追尾していった。
「ちっ……………!?」
「言い返すよ。逃げるのか?『アクア・グランデ!』」
シルは身体能力上昇効果をうまく利用して後ろに回り込んでいたのだ。そしてシルのウォーターアームが少し大きさを増し水流を荒くしながら鎖の人の全身を捕らえた。鎖の人は火の龍を始末していたので両手が塞がっていた。
「くぁっ!」
鎖の人の体が水流に負けて吹っ飛んだ。
バシャンッ
「な、なんでよっ」
鎖の人が地面に落ちなかったのはシルが水の腕で鎖の人を受け止めていたからだった。
「君はフェーンズ町の人じゃないのか?なら戦う理由はないよ。俺は魔物じゃない」
「で、でも腕が水とか火じゃない……」
「これは後で説明するよ。君も変な鎖出すくせにね?」
そうして一度シルは鎖の人と一緒に宿屋へ戻った。
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「君の名前はノレスって言うのか」
「えぇ、正しくはノレス・デルダート15歳よ。まぁノレスでいいわ」
「そうか、よろしくな。まずはなんであんな時間に外に出たのさ」
ノレスは悲しそうな顔をして言った。
「父さんが私を守ろうと魔物にやられたの。それから魔物を駆逐してやろうと思って。夜のことだったから寝れないのよ」
「そうか……俺の幼なじみも同じ状況だ。悲しいとこ悪いが鎖と氷。あと「カオス・イリュージョン」ってなんだ?」
ノレスが言うには鎖は騎手団にいたとき使っていた武器で属性を習得したみたいだ。氷は町のシンボルで想像したら習得できたらしい。
「想像だけで……属性習得を……?」
「そうよ、氷に触れてはいないわ。一面炎で氷はなかったもの」
またわからないことが出て来たと思うと頭が痛くなる「カオス・イリュージョン」は父さんが教えてくれた魔法の名前らしい。
「父さんは魔法の言葉だと言って私に教えてくれたのよ。それで唱えてみたらうまい具合に鎖と氷が融合したのよ」
どうやら属性を融合するコマンドのようなものみたいだ。ノレス父さんの何気ないセリフが発動のセリフになるなんて………
「とりあえず私、頭冷やして寝るわ」
「あ、もう外には出るなよ?」
「はいはーい」
そう言うとノレスは自分の部屋へ戻っていった。俺も寝よう。全然寝れてないからな……。ベッド一緒に寝てることを一瞬思い出したが疲れたので気にせずにすぐ寝た。