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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第5章 タスクフォース8492
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6話 ビギナーな冒険者達

【視点:3人称】

いつもと違って手作り感が残る室内と勝手が違う寝具に違和感を感じながらも、一行は無事に就寝することができ、翌朝は予定時間に目を覚ました。遮音性の低さゆえに朝食を準備する音が微かに聞こえる環境も、彼等にとっては新鮮なものである。

身支度を行いながらも「朝食は何が出るのでしょうか」と楽しみな感情を表しているハクだが、昨夜の事例があるためホークとしては「可もなく不可もなく」というのが内心である。とはいえ、それを口にするのは無粋であるために、当たり障りの無い答えを返していた。


不思議なもので、朝食と会話という名のイベントは、時間が過ぎるのも早くなる。その2つがセットとなっている現状も例に漏れず早1時間ほどが経過していたようで、ホークは少しだけ慌てていた。本日は冒険者登録を行い、さっそく簡単な活動を開始する予定である。

女性陣は何かと用意があるとのことで、000が使用している大部屋に、000とディムースの隊、そしてホークが集まって打ち合わせを行っていた。ホークの指示で、リュックはヴォルグ達の部屋に居るようである。


ある程度の意識確認が終わったところで、ディムースが「そういえば」と話を切り出す。内容は、英語に関してのことだった。

この世界において、英語と言う言語は存在していないことは8492の全員が知っている。現にハクやエンシェント、ハイエルフは英語を話すことができない上に、知識が豊富な狐族姉妹も、英語と言う概念を認知していなかった。


しかしそうなると、多少なりとも疑問点が芽生えてくる。ホークの許可を得て、ディムースは沸き上がった疑問を口にした。



「昨夜に姉妹から受けたレクチャーの内容ですが、冒険者ランクを表すAとかBって、コレどう見てもアルファベットですよね?チラっと聞いてみましたがGから先は何ソレ状態でしたし、そのせいで寝つきが悪く8時間しか寝れませんでした。」

「寝たことを忘れているだけだ問題無い。それを言うならば、ギルドやパーティー・ランクだって俺達からしたら英語だぞ。」

「あっ。そうですね大尉、自然すぎて気がつきませんでした。」

「そこは自分も気になってたけど、固有名詞みたいなものじゃないかな。日の丸国で言うところのSHINKANSEN(新幹線)とかね。まぁでも、アルファベットは確かに気になるかな。」

「単に「英語」と括れないところが、ややこしいですね。自分も彼女たちに対しては、できる限り横文字を使わないよう気を付けてはいますが、やはり慣れというものが……。」

「口に出しちゃったら説明すればいいだけさ。皆もそうだけど、気負う程の事でもないよ。」

「そう言っていただけると助かります、総帥。」



ホークとディムースの会話にマクミランも頷き、このあたりは全員が認識をすり合わせた。ちなみに冒険者ランクを現すA~FとExがアルファベット表記となっているが、これも固有の「記号」とされており、文字ではない。

のちにホークが受付嬢に聞いて発覚するのだが、これらの「記号」は初代ギルド長が決めたことだが、記号が作られた発端などは不明らしい。女神の件を知っているホークは「なんとなく」理由を察し、その会話を流したのであった。



「よーし、持つ物持ったなー。時間だ、合流するぞ。」

「「「イェッサ。」」」



ホークの軽い掛け声に、全員が元気良く返事を返す。女性陣やヴォルグ達と合流後、宿の主人の見送りと共に、一行は事前に説明を受けた冒険者ギルドへと足を向けた。



======



「あれ?シビックさん。」

「ようこそ、ホークさん御一行!冒険者デビューということで、先に行って待ってました!」



冒険者ギルドの扉をくぐったホークは、既に見知った人物が居ることに気が付いた。横顔だったもののすぐに気づき、思わず声に出たぐらいである。

とはいえ、瞬時に判明したのも仕方のないことだ。ギルド内部には、従業員を除くとシビックの他に2名しからおらず、活動が始まる朝時だというのに静かな空気が漂っていた。地方の物静かな街という現状が、この施設にも表れている。


そんな中で施設の説明を完璧に行わんと張り切るシビックに顔を向けているものの、ホーク一行は横目で屋内の観察を行っている。張り切る彼を見て苦笑する受付嬢だが、そんな彼の苦悩も理解できるのであった。

ようは街興しのために頑張っているのだが、ティーダの街のように辺鄙な位置取りの場合は難しいものがある。この世界においては、交通手段と言うものが極端に乏しいため、「遠出旅行」という概念すら存在しないほどだ。


そのため、「ティーダの街出身の冒険者は凄い!これが経歴よ。」といったような、簡潔で明快な噂話が必要となる。もちろん、そのような業績を達成できる冒険者は、世界的にみても極稀にしか出てこない。

結果として、有名な冒険者というのは大規模の街から排出されているのが実情だ。それでもティーダの街のように僅かな望みに掛けている地方の街は、希望者に対しては積極的に勧誘を行っているのである。



「それでは、こちらがランクを証明するプレートです。皆さんFランクからのスタートとなります、頑張ってください!」



各々は若干興奮気味の受付嬢からプレートを受け取り、ヴォルグ夫妻を除く全員が手に取った。金属製のプレートであり、個人を区別するためか、宿屋で見た数字らしき文字が刻まれている。

その後は受付嬢から、反社会的な行為を行わない、しかし盗賊の討伐などならば殺人も許される、などの簡易的な説明が行われる。ようは「常識的な行動範囲に留めた上で社会に貢献できるならば、ある程度は許される」という確認であり、その点はホークも理解していた。



「それでは続いて、皆さんが集団で行動するのでしたら、パーティーのお名前を決めて頂きたく思います。こちらは強制ではございません。時間がかかると思いますので、後日でも構いません。」

「いや、既に決めてある。タスクフォース8492、これで登録願いたい。」

「かしこまりました。今後、ギルドや他の街へ入る際には、パーティー名が明記されたこちらのプレートを同時に申請して頂ければ、皆さんが正規の冒険者と判断されます。新規化入者や離脱者が発生した際は、最寄のギルドで申請してください。」



続いてホーク達が説明されたのは、初めて受領することになるミッションの内容だ。とはいってもFランクしかも初陣なだけに、内容は非常にイージーなものとなっている。

ありがちな内容ではあるが、薬草の収集だ。ホークはサンプルの1つと1m四方ほどの麻袋を受け取り、薬草採取の依頼書をマクミランが受け取っていた。昔ながらの皮紙のような紙に、内容が簡潔に記載されている。


マクミランは依頼書の内容を読み上げ、全員で採取場所へのルートを確認していた。今回の方針では、簡易な依頼内容でも気を抜かず確認するというのが1つとなっている。

書類の怖さを知っている、彼等らしい項目だ。ディムースなどは透かしで何か書かれていないかなどチェックするなど、用心深すぎる程だ。



そして一行は街の入り口へ移動し、街から出るために警備兵にプレートを提示していた。すると、建物の奥から一人の人物が姿を現す。



「おう、昨日ぶりだな。その書類を持ってるってことは初任務か、頑張れよ。」

「先日は世話になった。我々タスクフォース8492、冒険者パーティーとして全員Fランクからのスタートだ。手柔らかに相手してくれ。」

「何が手柔らかにだよ。あんた等ならば特別にCランクあたりから始められそうな気もするが、それはそれで事例がないから荒れそうだな。」

「なに、取り決めには従うさ。FだろうがSだろうが持つ実力に変わりはない、全力をもって依頼を遂行するまでだ。」

「おお、珍しい考えだが良い心がけだ。その通りだ、全力で初依頼をこなしてくれ。」



田舎かつ平和なために他にやることも少ない警備兵一行に見送られ、一行はフィールドへと歩みを進めるのであった。



=====



「マスター、この付近ですね。」

「そうだな。よし、それでは手筈通りに行動する。薬草の数に指定はないが、目標は一人当たり5つとしよう。」

「主様、えーっと5の倍数ですから……」

「125よ姉様!主様、125個の採取目標ですね!あっ、ヴォルグ様とハクレン様も含めると135か。」



昨夜に学んだ算術を駆使できて喜ぶ狐族姉妹を見て、任務開始前と言うこともあり、ほんわかした空気が一行を包んでいた。今の姉妹を見た反応は「あら、かわいらしい」という内容がピッタリだが、口に出す者は居なかった。見守ることが一番だと、本能的に判断しているのである。



「その通りだリール、目標個数は135と設定しよう。また、この付近には弱いとはいえ魔物が居るとのことだ。各位、警戒を怠らず……って、さっそく何か降りてきたな。マール、あれは分かる?」

「はい、パッサーの群れです。見ている分には愛くるしい魔物で、子供や巣を攻撃しない限りは、こちらを襲うことはございません。」



一行の前に広がる草原に降り立つ、かわいらしい手のひらサイズの小鳥の群れ。パッサーと説明したマールだが、鳴き声・色・姿かたちの影響により、見てくれ的に「大きな雀みたいだな」というのが8492全員の共通認識だ。

そして、何故か目が合うホークとディムース。そしてホークが自然と口を開くのだが、この二人は他の隊員と違い、その感想の先から別の文言に辿り着いているのであった。



「ディムース。」

「イエッサ。」

「一羽でチュン?」

「二羽でチュチュン!」

「三羽揃えば?」

「牙を向く!!」

「なんでさ。」



「チュチュンがチュンだろ。」と、彼はディムースのヘルメットに軽く手刀を入れる。もちろん互いに痛みは無いのだが、ディムースは大げさに衝撃を表現した。



「よし、おふざけもここまでだ。本作戦においてはタスクフォース8492を3つに区分する、わかりやすい順に区分するぞ。まず、マクミラン率いる第二分隊12名。」

「ハッ。」

「これは000そのままだな。次、ディムース率いるアルファ歩兵連隊の分隊6名、第三分隊だ。」

「イエッサ。」

「そして第一分隊を貰う自分の小隊が、ハクとヴォルグにハクレン、リュック、リーシャ、マール、リールの8名だ。」

「はいっ。」

「頑張ります!」

「第一分隊は自分が指揮を執る。全員に共通する事項だが、勝手な行動は厳禁であり小隊ごとの指揮官に従って欲しい。それでは行動開始だ、1時間後に集合するぞ。」



全員が返事を行うと、それぞれ北・北東・東へと展開し、採取作業を開始する。各々が周囲警戒や薬草探索、採取などのジョブを担当し、効率よく行われていた。

それでも、採取依頼が出されるだけあって、そう簡単に見つかるものではない。まだ成長しきっていない小物の薬草には手をつけなかったこともあり、ノルマを終え集合したのは1時間後ピッタリとなっていた。


それでも、3つの分隊は特に問題もなく薬草を採取する。最終的には150個程の採取が完了し、各々はノルマもクリアしていた。


そして街へと戻り、採取完了の報告をギルドで行う。纏まった数の薬草が手に入り、ギルドの職員は「在庫が潤う」と呟き喜んでいた。

もちろん、それに伴いタスクフォース8492に対し報酬が発生する。報酬の小金をホークが受け取ると、一行は街へと繰り出した。

ランク詐欺もいいところです

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