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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第5章 タスクフォース8492
95/205

5話 ひとまず腰を下ろそう

祝:エスコンが「日本ゲーム大賞2018フューチャー賞」を受賞!おめでとうございます。


*ややテンプレ要素入ります。

【視点:3人称】

佐渡島(仮名)から方位3-4-0に飛んだ大陸にある、海沿いの街、ティーダ。以前ガルムとメビウスの二人がオークキングを掃除した際、その出現によって大混乱していた小さな街だ。

広さとしては2km四方程あるのだが、建物は密集していないため人口が多いと言うこともない。外壁と言えば木の板で作られた囲い程度であり、前回ホーク達が急襲した盗賊の要塞と比較すると、子供の玩具程度のものである。


人の声で騒がしいということもなければ、静まり返っているという程でもない。文字通り穏やかな雰囲気に包まれる街の入り口を観察しながら、一行は門を潜った。



「ようこそ、ティーダの街へ。今日は遅いからな、冒険者登録は明日やるといい。宿の希望などはあるか?と言っても、3軒しかないのだがね。」

「ご覧の構成だ、貸し切れるとありがたい。」

「わかった。じゃ、付いてきてくれ。」



彼はそのままホーク達を案内し、西日になりつつある空の下、整備された道を進んでいく。装備の詳細は不明なものの明らかに素人ではない集団を見て、住民達は何処の軍が来たのかと老兵に問うものの、「この街から旅立つ冒険者達だ」と軽く流されていた。

住民達も老兵と同じく「その年齢から?」と言いたげな表情だが、ホーク達は全く気にしておらず、宜しくどうぞと回答している。高圧な態度ではないながらも決して下手には出ない不思議な言葉選びをするホークの言い回しは、対峙した住民に対して穏やかな波紋を広げている。田舎街らしくこの波紋は今晩中に街全体に広まることになるのだが、彼等がそれを知るのは翌日の話である。



=====



「着いたぞ、ここだ。」



住民を相手していた時間を除いて東門から5分ほど歩くと、一軒の木造の建物の前に着いた。周囲の家よりも明らかに大きく、2階建ての構造となっている。

しかしながら、宿屋であるような看板は掲げていない。目視判断では、大きい家にしか見えないだろう。疑問に思ったホークが話を聞くと、小さな街であるが故の工夫が見えてきた。


他の宿に関しても30人ほどが宿泊可能である宿が1つ、そして旅館的な風情ある宿が1つ。この2つだけでも客を捌くことは余裕なのだが、万が一に備えての予備役的な宿となっているようだ。

客が居ない時の維持費に関しては、街を挙げて支援している。なんとも合理的な話だなと8492のメンツは感心すると共に、新たな事実に再度関心することとなる。



「ところで、突如として25人と2頭で押しかけたわけだが、問題は無いのか?」

「初日に関しては、ある程度は勘弁してくれ。一応、緊急の客が来た場合にも寝泊りできる程度に整備できる手順は作っている。」

「ほぉー。」



一行は宿の扉をくぐると同時に、街を有名にしたいという住民の考えの強さを実感したのであった。



「おーい、部屋用意してくれー。」



静かな部屋に、老兵の野太い声が木霊する。随分とフレンドリーだなというのが全員共通の第一印象だったのだが、先ほどの会話を思い返し、慣れたものなのだろうなと納得していた。

そんなことを考えているうちに家の奥から駆け足で男性がやってきて、雰囲気は急な模様替えを行った。



「おおっ?随分と大勢だ―――ってホワイトウルフ!?お、おい大丈夫なのか!?」

「落ち着け落ち着け、大丈夫だ。問題があったら連れてこねぇよ。」



誤解はすぐに解け、その後、老兵により8492の経緯が説明された。なるほどなと納得しながら話を聞いている宿の主だが、問題無しと分かっても、やはり気になるのかヴォルグ夫妻とチラチラと横目見ていた。

経緯の説明が終了すると、老兵はお役御免とばかりに踵を返した。跡に残ったのは宿主と客であり、会話の内容も自然とその手の話になり、宿の主は話を切り出しホークが答える。



「さて、前置きが長くなりましたが、ようこそと言ったところですかな。今回は、どのようなご用命で?」

「今この場に居る一行の宿泊の場として借り受けたいのだが、可能ならば貸し切りで願いたい。期間は30日を一括りとし、延長するならば随時更新と言う形でどうだろうか。」

「畏まりました。よくご利用頂く追加事項ですが、朝晩の食事は合わせて銀貨1枚。夕食後にお体を洗う水場の使用料が銅貨10枚でございます。」

「理解した、それも追加で頼みたい。そうなると全員分で……1日あたり銀貨277枚と銅貨50枚か。ホワイトウルフの分は含まれていないけれど、思ったより安いな。」

「そうですね総帥。」



ディムースを見て呟いたホークの一言で、場が静まり返る。一同、理由は全く理解できていない。

それもそのはず。ホーク達からすれば「その程度の計算で」となるが、こちらの世界出身者からすれば、「難しい計算だから、ちゃんと計算しろ」と言ったような認識になっているのだ。



「……マスター、意見申し上げます。貨幣に関するのことですので、しっかりと計算してから」

「いやいやハク、ちゃんと計算してるって。」

「えっ?し、失礼致しました。ですが、あの計算を紙に書かずに、ですか?」

「ん、まぁ。分かりやすい計算だったから、答えはすぐに出せたよ。」

「総帥様、可能でしたらご教授いただきたく思います!」



裏では店主がアセアセと計算をしているのだが、既に全員の目線から外れてしまっている。

ホークが言った暗算の話に食いついたのは、知識が食べ物と言わんばかりのマールとリールだった。目力が凄く、それに負けたホークは小数点からの解説を始めることになる。銀貨1枚は金貨0.001枚で表現できることを理解させ、次の説明に入った。



「えーっと、一人当たりの宿泊料金が銀貨10枚、それに朝晩の食事銀貨1枚、今夜の水場の使用料が銅貨10枚。銀貨11.1枚が25人だから数値的には227.5。この数値を貨幣に戻すと、銀貨277枚と銅貨50枚だ。」



偉そうに言ってるけど、もしかして間違ってる?と言いたそうな表情でホークが後ろを向くも、その程度の暗算は8492の隊員は全員ができている。そして間違っていないため、全員がOKの類のサインを返していた。

もしかして乗法とか小数点の概念がないのかなと、ホークはメモ用紙とボールペンを取り出し11.1*25を筆算し説明している。皮紙に指揮を書いている店主とは違って異常なほど真っ白なほどの植物繊維ベースのメモ用紙をしているホークだが、全員の意識が計算式に向いているため、ペンと用紙を指摘する者は居なかった。


結局のところは蓋を開けてみればアラビア数字表記が無かったようで、そこからの説明となった。文字は違えど0~9で表され9の次にカウントアップするシステムは十進記数法と同じなのだが、この世界の数字は、逆にホーク達にとっては未知の物だった。


以前から数値に触れたことのあるハクは「なるほど」と関心しており、頭の良い姉妹は理解できたようで目を輝かせて見入っていた。なお、ハイエルフ兄妹とヴォルグ夫妻は完全に?マークとなっているが、この点は仕方のない事だ。

ちなみにホークの暗算は、11.1*30-11.1*5で導き出したものである。このあたりのフレキシブル性能は、乗法が持つ大きなメリットの1つだろう。



「おお、本当に銀貨277枚と銅貨50枚だ!いや恐れ見ました……。」



その一方で、計算を行っていた店主も結果を出した。かなり時間がかかっているものの、答えはホークと一致している。しかし、支払いはそこで終了というわけではない。



「あー店主。計算終わって満足してるとこ悪いんだけど、それ1日分。とりあえず、30日の契約だったかと……。」

「……。兄さん、何枚ですかい。」

「銀貨8325枚だから、金貨83枚と銀貨25枚だね。ただし、これはホワイトウルフの分が入っていない。自分達と同じ基準で換算すると、おおまかに銀貨9000枚だ。貸し切りだし多人数で色々と迷惑かけると思うから、これ1枚でどうだろうか。」



そう言って、ホークは一枚の貨幣を取り出した。



「お?おお、白金貨でございますか!いやー、このあたりで目にすることになるとは。ともかく、頂いたからには精一杯の努力をさせて頂きます、ごゆっくりお寛ぎください。」

「その代わりっちゃなんだけど、水場の水を暖めても問題ないかな?」

「?は、はぁ。お湯でございますか、特別問題ございません。」



とどのつまりが風呂場にしてしまっても問題ないかというホークだが、許可が下りて一行は一安心。元祖8492の隊員はともかく、初めて風呂と言うシステムに触れた狐族やハイエルフ達も、今となってはお湯に浸かる心地良さに溺れてしまっているのだ。



「それでは全部屋を整備いたします。それまでは、こちらでお寛ぎください。」



飾り物の材質は安物ながらもセンスが光るややお洒落なホールで、一行は会話を弾ませていた。狐族姉妹は先ほどの計算を反復しており、時折ホークに疑問点を訪ねている。ハクも興味があるのか、姉妹が繰り広げる光景を観察していた。

宿屋のご婦人も戻ってきたようで、集団に挨拶を行っている。伏せているヴォルグ夫妻を見た途端に例によって一歩後ずさっていたものの、ホークに事情を説明されると、ハクレンと目線の高さを合わせてまじまじと見つめていた。



「母さんごめん、今戻った!」



そんな時、再び開かれる表扉。一人の茶髪の青年が飛び込むようにやってくるが、言葉からしてこの家の住人なのだろう。

ハキハキとした口調と短めの茶髪、同じく茶色の瞳は、見るからに好青年という印象だ。仕事帰りなのかやや汚れた服装は、仕方のないことだろう。



「ああ、今戻ったのかい。お客様がお見えだよシビック、父さんを手伝っておくれ。」

「わかった。さて、ようこそですお客さ―――ってホワイトウルフうううう!?」



「母親は何をしていたんだろう」とばかりにソファーの足元を覗き込んだシビックは、まさかの魔物に後ずさりした。それを見て「まーたこの流れかよ」と呆れ不貞腐れるヴォルグ夫妻だが、口にするわけにもいかないので、耳を伏せ一層床に突っ伏し感情を示した。

とはいえヴォルグ自身が発案者であるだけに、今更「やっぱり辞めましょう」とも言い出せない上に、打開策が無い状況であることも、また事実。それを見たマクミランが「仕方ないさ」と宥め、ヴォルグ夫妻は多少ながらも機嫌を取り戻すのであった。



=====



その後、足早に部屋の用意が整い、一行はそれぞれの部屋に腰を下ろした。部屋の規模は2人~5人まで様々だったものの、区分けは適宜行われている。ヴォルグとハクレンも1階の一室に藁を敷いた部屋が用意され、居心地良さそうに堪能している。


そんな中でホークとハクはハイエルフ兄妹と共に、兄妹が寝泊まりする部屋で椅子に腰かけていた。



「何人か人間に出会ったけれど、どうだった?」

「ご配慮ありがとうございます。やはり嫌悪感は抱きましたが、思っていたよりは、むかっとしませんでした。」



これも8492の皆様のお陰です。と軽く頭を下げる兄妹だが、ホークは拒絶反応のような例外の事象を心配している。何かあったら遠慮なく言ってくれと兄妹に伝え、自分たちの部屋へと戻っていった。



一行が荷物を整理し終えたタイミングで、7時頃となり、夕食となったため全員が食堂に集合していた。

突然の宿泊となった初日のために凝った料理は出されなかったものの、焼き魚の類が目を引いていた。


ホークいわく、味としては可もなく不可もなくのようである。普通に食すことができるので安心した一行は、港町の料理に舌鼓を打つのであった。

第一章閑話で出てきた人物の登場です、Cランク冒険者のため実力もソコソコ。

さて、ホーク達は……?

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