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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第5章 タスクフォース8492
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4話 いせかいのまちへ

【視点:3人称】

第6世代戦闘機のお披露目飛行がもたらした熱も覚めやらぬ頃、佐渡島(仮名)陸軍基地より4機のオスプレイが飛び立った。目指す進路は3-4-0で北北西、大陸にある街となっている。


飛行時間は30分程となっており、天候も晴れ~曇りで良好。運ばれる側からすれば丁度いい時間であり、気持ちの良いフライトだ。

とはいえ30分程度の時間は、お喋りをしているうちに、あっという間に過ぎ去ってしまう。案の定、ホークが狐姉妹と情報交換を行っているうちに、着陸地点が見えてきたようだ。



「フォーカス1-1より総帥。目標地点到着まで残り2分、そろそろ用意願います。」

「了解。2番機以降も順調だな、予定通りに行こう。」



準備と言ってもオスプレイから降りるだけなのだが、ホーク一行は、念のために忘れ物が無いかを確認している。ブラックバードの索敵支援の連絡を受け、4機編隊のフォーカス輸送部隊は、海上超低空から陸地へと近づいていた。

現在のところ有視界の範囲内にも人間の反応はなく、目視されない状況だ。前回のようなアサシンでも居ない限りは問題なく、現に彼等は何事もなくヘリを降りた。


降り立った場所は、以前8492航空隊のヘンタイ2名が爆撃した近くの街、ティーダに近い海岸線。近いと言っても10kmほど離れている上に西側を進んでも深淵の森以外は何も無いので、通行人も滅多に居ない。それでも「みてくれ」の問題か、一定距離まではある程度の道が整備されている。

海岸線の草原に着陸し、全員がすぐさま機体から外に出た。ホークが軽く親指を立てて挨拶は終わり、編隊は再び海上へと消えてゆく。当たり前のように行われている荒波に叩き落される程の超低空飛行は、ちょっと航空機を知っている者ならば、見ているだけで乾いた笑いが出てしまうほどだ。


各機から降りたメンバーが集合し、点呼も確認。消耗品関係はホークの宝物庫の中にあるので重装備ではないことが理由か、各隊員が持つ愛銃が目立っている。

とはいえそれ以上に戦闘服やヘルメットが目立っているので、大した問題ではないだろう。黒髪黒目黒戦闘服のホークも、「厨二発症してますね」とディムースにからかわれていた。



「やかましいわ。んなことよりあと1時間で日暮れだ、沈む前に街に入るぞ。」

「何か問題でしょうか。私は、似合っていらっしゃると思いますが。」

「いやハク、もうその話は掘り返さないで……。」

「しっ、失礼しました。」

「似合っていると言えば、エルフが弓とか細い剣を持っていると絵になるよな。」

「そうですね隊長、それっぽい……いや、本物か、こりゃ失礼。」



冒険ということでリュックは細めの剣、リーシャは弓を持ってきておりそれぞれ腰と背中に装着している。派手さはないがエルフの手により洗練された武器であり、二人のルックスと相まって、文字通りお似合いとなっている。


一行は街道に到達し、ゾロゾロと進んでいく。ハクの追撃によってやや気落ちしているホークとは対照的に、8492隊員のテンションは上がりっぱなしだ。その一方で最低限の周囲警戒は行っているところが、なんとも職業病らしい光景である。



「主様、もうしばらくで街が見えます。我々は、後方に居た方が宜しいでしょうか?」

「いや、揃って行こう。人間の歩みに揃えていれば、ある程度は害が無いって判断してくれると思う。襲撃だと判断して先制攻撃されると、色々と面倒だからね。」

「心理戦ですか、なるほど承知しました。」



人間と接する時の立ち居地を悩んでいたヴォルグが問いを投げると、具体的な答えが返ってくる。毎度の事ながら対応しやすい答えに安堵し、フェンリル王夫妻も自然に振舞っていた。



「そんなことよりも、後ろで舞い上がってる奴等の方が、よっぽど危険物に見えるよ。」



そう言われ夫妻が首だけ後ろに向けると、なるほどと納得し、見なかったことにした。マクミランを除いて、歩調などが明らかに不審者のソレとなってしまっている。実行者がガタイの良い大柄な男連中であるということが、不審者に見えてしまう眼鏡のフィルターを強くしている。



とはいえ、陸軍以外のメンツも問題が無いわけではない。本人達に罪は無いものの、冒険者や商人など、街に接した活動を行う点においては問題だらけでな構成となってしまっている。


フェンリルとホワイトウルフ、エルフとハイエルフを判断できるような生き物は早々居ないというのはホークも知っている。とりあえずこの2組がバレる可能性は低いだろう、とのことだ。

とはいえ彼の妻に関しては元王女であるのと最強クラスの剣士ということで群を抜いて怪しいところはある。その点は「バレたらバレた、だ。」と割り切っており、その時は足早に撤退し、再び引き篭もるか、他の小さな町に行こうと提案していた。


そんな中、マールが聞き忘れていたことがあったようで、ホークへと質問を行った。



「あっ。申し訳ございません総帥様、肝心なことを相談し忘れておりました。高確率で問いかけられると予想されますが、職業は何を名乗られるのでしょうか?」

「なるほど。ヴォルグ達の件もあるし、テイマーで良いんじゃない?」

「仰るとおりですが、テイマーとサマナーは最下級ジョブというのが世間の認識です。面倒事にならければ良いのですが……。」

「主様、あまりにも暴言が酷い場合は町ごと葬り去って「次言ったらメシ抜きだぞ。」厳守致します。」



素直で宜しい。と、ホークはヴォルグの頭に手を置き、少し強めに撫でた。力加減が丁度良いためヴォルグもこの行動を気に入っていたりするのだが、それは彼の中だけの秘密である。



「それでは到着次第、皆様で宿に……あっ。主様、失礼ですがお金の方は……。」

「あ、それも聞こうと思ってたんだった。銀貨何枚で金貨になるとかいう貨幣の区切りと、ある程度の相場について教えて欲しい。」



ホークが説明を受けた内容として、この世界の貨幣には銅貨、銀貨、金貨、白金貨の4種類があるらしい。それぞれ100枚で1ランクアップするという、かなり簡潔なシステムだ。例外として白金貨100枚で大白金貨になるらしいが、流通量が極小過ぎて貨幣としてカウントされていないようである。

ちなみに冒険者や商人などの証明書が無い人間が街に入る場合、人族ならば一人当たり銅貨50~銀貨1枚が相場とのこと。通常のランチというやつも、その程度とのことだ。


騒がしい後ろを差し置いて説明を聞いた彼は、嫌な予感がして、1枚の白金貨をマールに見せる。すると、彼女の顔が引きつった。



「こ、ここここれは大白金貨でございます!街中でのご使用はお控えください、誰もお釣りが払えません!!」

「あ、やっぱり?だから10億も増えたのか……。」



彼が以前に気兼ね無しに突っ込んだ貨幣は、そのレアな大白金貨だったのである。そして宝物庫には、ソコソコの枚数が収納されている。現地では決して蓋を開けないと、彼は硬く誓ったのだ。


なんだかんだで決めきれていなかったことが決定すると、一行は街の入り口100mほど先まで迫っていた。

そして彼らの予想通り、警備兵と思わしき集団が慌てふためいている。明らかに魔物も混じっているが人間らしき姿も多数あり、襲ってくるような気配は皆無。おかげさまで、どのように接してよいのか、誰も判断ができないのだ。


そんななかで、ホークは軽く両手を挙げながら近づいていく。その動作で混乱は多少収まるかと思いきや、目視距離に来たために余計に混乱が増しているのだから問題だ。


異様な出で立ちのむさくるしい男集団の中に、目を奪われる程の美女4名と美男子1名が混じっているのだから無理もない。コントラストで言えば白と黒ほどの差があるため、強調の度合いは歴然だ。

そしてトドメにホワイトウルフとなり、結果として「わけのわからない危なそうな連中」という答えを相手にもたらしているのだ。そんな答えになったため、互いに武器を構えながら警備兵と集団が対峙した。


警備兵は身内でヒソヒソ話を続けるも、やがて奥から、やや年配気味の老兵らしき人物が現れた。一歩前に出たことを確認すると、ホークも同じく前に出る。そして、集団同士の「話し合い」が始まった。



「……ようこそティーダの街へ。で、良いんだよな、あんちゃん。」

「その通りだ、歓迎に感謝する。この2匹はホワイトウルフだが、住民に危害を加えることは無い。逆に侵略者が居れば、真っ先に立ち向かってくれる。」

「そ、そうか。見慣れぬ服装だが……盗賊や侵略の類ではない、よな?」

「その問いに対する答えは言葉でしか示せない、そして言葉など信用ならんだろう。そもそもにおいて、見分けが付くのか?」

「自分で言うのもなんだが、ある程度は『匂い』でわかる。あんた等からは匂いは感じられないが、逆に今までに無い感覚だ。あんちゃん等、一体この街に何しに来たんだ?」

「旅路の休憩も含まれているが、このメンツで冒険者登録をと、思ってね。」

「冒険者登録?言っちゃなんだが、今更か?」



老兵と同じタイミングで、他の警備兵達も顔を合わせて話している。タスクフォース8492のメンツは、とうに登録を済ませて活動していて当然と言う年頃だから、その反応も無理はない。

とはいえホークも、この反応は予想している内容だ。そして当然ながら、答えも準備済みである。



「なに、自分たちは冒険者と言う縛りに括られない活動をしていたものでね。数少ないテイマーだが、ホワイトウルフなんか連れ歩いていた日には目立つだろう?」

「あ、ああ。しっかりと育ったものはB~A級と言われている魔物だからな、戦力は相当のモノだろうよ。」

「そういうことだが所詮は素人集団だ、限界はある。そろそろ、潮時というやつだ。」



話をする間にもホークはヴォルグの頭を撫でるなどしてスキンシップを取っており、警備兵達の警戒心を落としている。老兵が彼らの様子を事細かに観察するであろうことを逆手に取った、ホークの作戦だ。



「……なるほどわかった、悪党の類ではなさそうだな。この街で冒険者になってくれるなら登録料は要らん、皆入ってくれ。」

「ん?どういう理由だ。」

「なに、街の基準なんて有名かどうかでほとんど決まる。この街出身で高みに行って貰えれば、街が栄えるというやつだ。」



「だってさ。」と言いながら、ホークは後ろに振り返る。「ホワイトウルフが居るんだから既にBランク確定じゃないんですか?」などというディムースの野次を叩き落しながら、初心を忘れるなとホークは活を入れた。

そんなやり取りを見ながら、老兵は口元を軽くゆがめる。一歩横に引くと、右手を街へと向け、集団を迎え入れた。



「では改めて。ようこそ、ティーダの街へ。」


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