表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第4章 おいでよ!第二拠点の森
86/205

20話 余韻と疲れ

短編集のような感じになりました。

2019/8/26 寝る前のシーンに少しだけ加筆しました。

【視点:ホーク】

「総帥、基地に近づいてきました。着陸のために雲の下に降下します、揺れに気をつけてください。」

「了解、空域は冬型の気圧配置だ。釈迦に説法だろうが、突風に気をつけてくれ。」

「ハッ。」



月明かりが届かない雲の中に突入すると、横揺れが強くなった。管制塔との通信を聞いていると、どうやら今の気圧配置は西高東低、冬型の気圧配置ってことらしい。等圧線の間隔もやや狭めで、それにより風が強くなっているようだ。

しかし雲の下に下りてきたということは、基地が近いということの証でもある。コクピット越しに基地の明かりが見えたと思うと、瞬く間に距離が詰まっている。両脇のプロップ・ローターが徐々に上を向き始め、垂直離着陸モードに移行した。



《コントロールタワーよりフォーカス1-1から1-6、着陸を許可する。各機、順次ヘリポートに下りてくれ。》

《了解、順次着陸を開始する。》



エンジン音に混じってランディングギアの展開される音が聞こえ、主脚部がロックされた衝撃を感じる。横風の影響でややフラつくなか高度が下がり、前方の誘導員の腕が頭上でクロスされたタイミングで衝撃が発生し、ヘリポートへと着陸した。

その後はエンジンを停止して後続機の着陸を待ち、安全を確認して後部ハッチが開かれる。例によって歩兵部隊が待ち構えてくれていたが、杞憂と言うことで下がってもらった。入れ替わるように、一人の男性が歩いてくる。



「間違いない……かつての、同胞でございます。」



自分の後ろや他の機体から降りてきたハイエルフ一行の姿を見て、リガルが、やや声を震わせて断言した。リーダーらしき男性と手を取り合い、無事で何より、と声をかけている。

そんな光景を見ていたら、ようやく一段落という気持ちが芽生えてきた。ふと横を見ると、ハクが穏やかな顔でこちらを見ており、思わず似た表情になってしまう。反対側に並んだヴォルグとハクレンに声をかけ、自分達も歩き始めた。


とりあえず、彼等の汚れた体の清掃と服の新調だ。輪の外に集まっていたハイエルフ一同と担当兵士に指示を行い、飯もまだらしいから、炊飯部隊には簡易な食事を作るよう指示を出しておこう。薄味鳥ソボロの乗ったトーストとサラダとか、いいんじゃない?

と言ったら横で目を輝かせる奥さん一名、一貫性があるのは良い事です。そういや鳥のソボロは食べたことがないか、1名分追加でお願いします。え、ヴォルグ夫妻も?じゃぁ3名分追加で……って自分も腹減ったな、夜食だけど1枚貰おうっと。



======



「ハァ……ごちそうさまです、おいしゅうございました。」

「まったくですハク様。これほど手軽に作れるというのに、この旨さ。反則技もいいところです。」



「ネー♪」なんて女々しい会話を展開するハクとハクレンを尻目に、自分は半分までカジったトーストの残りを胃に収める作業を続行している。みなさんメシが旨いのはわかるけど、ちゃんとよく噛んで食べなさい。

さて。食い終わったら、本日最後の一仕事だな。保護した一行のところに歩いて行こうとすると、「これほどの食事を毎日!?」などと驚きの声が聞こえてくる。何度も耳にしてきたけど、ドヤ顔したくなる気持ちが芽生えてしまうから困り者だ。


そんなどうでもいい感情はともかく、ごちそうさまでした。集団も食事終了直後のようで、近づくと全員が立ち上がり礼をしてくる。とりあえず座らせ、情報を集めよう。



「えーっと、とりあえず落ち着いたかな?たぶんそこの連中が皆さんに教えてると思うけど、この基地の総帥をやっているホークだ。今回の救助対象は、ここにいる全員だね。一応健康状態は確認させてもらったけど、軽い睡眠不足っていう点以外は、特に異常は無い。休めば十分に回復する程度だ。あと、ハイエルフは分かるんだけど、そっちは自己紹介してもらえるかな?」



気さくに接したつもりなんだけど、狐耳の着物集団は身を寄せ合い身体を震わせ、アタフタしている。はじめて人間見たときの小動物、って印象だ。背も低いせいか、失礼ながらシックリきてしまう。

取って食おうってワケじゃないんだよ。とりあえず、自己紹介ならぬ種族紹介をして欲しいんだよ。これじゃ、か弱い小動物を囲っている悪者に見えるじゃないか。



「総帥様、恐らくですが家臣の方々の衣類が原因かと……ここは、我々にお任せください。」



えっ、原因それ?……了解、とりあえずハイエルフ一行を前に出そう。女性の方々、宜しくどうぞ。

あ、ほんとだ反応が違う。あれかな。ナイトビジョン装備やヘルメットの関係で、自分達でいうところのエイリアンとかプレデターに見えたのかな。こっちからしたら鎧と同じなんだけれど、捉え方の違いは気を付けよう。


おっ、どうやら自己紹介の話も了解が出たようだ。できるだけ刺激しないよう、聞き専に徹してみるとしよう。



=====



「い、以上でございます。」

「お、おう。了解、ある程度は理解できた。」



オドオドと始まり、なんとか種族紹介が終わったけれど、けっこう特殊な種族だった。名前こそ「狐族」と、まぁ随分と分かりやすいものだったが、どうも女性しか生まれないらしい。

なので、子孫を繁栄させる際は人族の元に嫁ぐとのこと。狐の嫁入り、ってやつですかね。子が成長したら親元を離れ、この集団のように纏まって暮らすらしいが、女性しか生まれない点などは呪いじみたパターンもあり得るので、あまり深く掘り下げない方が良さそうだ。



「マスター、補足説明を致します。狐族は様々な知識に長けた種族であり、8492の皆様でしたら、有効に利用できると考えます。」

「ん、そうなの?」

「はい。彼女達が持つ知識量の豊富さは、フーガ国に居ります還暦の賢者ですら脅かす程と言われております。」



おお、そりゃ凄い。引きこもりの自分達からしたら、願ってもみない存在だ。文字通り、即戦力として活躍できるだろう。ハイエルフと同じように講義をしてもらっても良し、活躍の場は少なくない。

ハクが言っていたけど「利用」とか「使用」って表現するとモノを扱うみたいになっちゃうから、協力という言葉で統一するよう、あとで指示を出しておこう。



「そ、その点でしたら、お任せください!」



先ほど種族紹介を行った女性も、そう答えてくれている。棚ぼたという表現はおかしい気もするけれど、同時に助けて正解だったな。


ともかく、現状は皆さん8492の隊員に従う気があるようなのと、ハイエルフ側と同じく村は全滅しているようなので、とりあえず保護するということで決定。臨時の指揮系統として、ハイエルフ長となっているリガルの下に入ってもらおう。

住居は……今のところハイエルフ側に居てもらい、公園南部の居住区も整備を始めよう。ハイエルフとは生活スタイルも違うだろうし、向こうから要望がない限り、別けた方が良いかな。



「ん、もう10時か。保護した一行は空いてるコテージに案内して、そろそろお開きにするぞー。夜勤者は、担当任務を頑張ってくれ。」

「「「ハッ。」」」



宴会の後片付け的なノリで保護した一行を、未だに名前が決まっていないアッパーライトパークに案内し、そこから先はリガルにお任せ。空き家の不足に関しては、時間が解決してくれる。

ってことで頑張れよ、ディムース筆頭の建築班。案の定、「凝りに凝った装飾を再現するのか」と部隊内で押し問答していたが、だから初期の頃に言ったじゃないか。差別は良くないから、平等に仕上がるように作るんだぞ。



======



「っ―――もーダメだ。」



まだ寒さが残る時期だけれど、風呂が沸く時間を待っている余裕はない。帰宅した直後にシャワーで簡易に汗を流し、軽くドライヤーをかけ自室に戻ると無意識にベッドに向かっていたようで、そのまま倒れ込んでしまった。

正直なところ、非常に疲れている。それ以外の感想は出てこない。できることならば、ヘリポートに着陸してから自宅に直行したかったぐらいだ。


捉われているのがハイエルフだけかと思っていたら狐族が居たのはいいとして、地点Bにて出くわしたアサシンに、まさかの金属製バリケード。そして橋下にスキマニアしてくるヘンタイ2名。

本当、イレギュラーだらけな戦場だった。こちとら久々の現場だってのに、状況把握の難易度が高すぎだよ。いつも見ていた戦果報告書で知ってたつもりではいたけど、あいつら、いつもあんな環境でドンパチしてるのか……考えるより、身に付いたスキルを活かして条件反射で行動したほうが効率の良い世界だね。卓上の御託なんざ、文字通り役立たなかった。



「ん?」



うつ伏せで枕を相手に溜息を付いてしまうと、ダブルベッドの空きスペースに倒れ込む音。自分の時よりも軽い音だが、思わず顔がそちらに向いてしまう。



「ふふっ。お疲れ様です、マスター。」



両腕を顔の前で折り畳み、にこやかな笑顔を見せる妻が居た。自分が言うのもなんだが、寝間着着用でナイトキャップを着用しており、スヤァの準備は万全のようだ。

しかしまぁ不思議なことに、疲れの数割は、この笑顔を見ると吹き飛んでしまう。思わず、こちらも似たような表情になってしまった。



「はは、お疲れだよ。まだまだってのが、よく分かった。今回は、頭の螺子が外れたパイロット2名に助けられたよ。」

「出番が無いと嘆いていた彼等ですが、それでも突入できるよう指示をしたのはマスターです。私でしたら彼の言葉を意識して、遠方での早期警戒を命じていたでしょう。」



……なるほど、そういう思考もあり得るか。あの場で待機を命じたのは自分の直感だが、単に慎重すぎると言うだけ―――。

イカン、そんな考えすら満足に行えない。自然と瞼が落ちかかっている。とりあえずドタバタして伝え損ねていたことだけは伝えておこう。



「――――――――――。」

「―――嬉しいです、マスター。そのお気持ちだけで、私は全てにおいて安心できます。」

「―――すまん、今にも眠気に負けそうだ。」



完全に落ちる前に自分の本音は言ったし、とりあえず詫びだけ入れておこう。その日最後の記憶は、ハクが呟いた「おやすみなさい」だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ