18話 Assassin2/2
後編です。
【視点:ホーク】
「全員動かずそのままだ、静かにしてくれ。」
静かに開いた、扉の先。
蝋燭の薄明かりに照らされる独房に居たのはエルフ20人と―――あれは犬、いや狐か?人間の姿だが獣耳と尾のある人物が、40人ほど確認できる。ハクと同じように、亜人という種族だろう。巫女服のような和服を着ているが、簡素なものであり高級感は全くない。
こちらに気づく瞬間に自分の鼻に指を当て、声を出すなとジェスチャーする。ビッグアイの偵察や歩兵スキャンでは付近に兵士は居ないものの、壁に耳あり障子に目ありというやつだ、油断できない。
「小声で話すぞ、自分は部外者だ。ワケあって君たちハイエルフの救出に来たのだが、ここに居る連中で全てか?」
「い、いえ。女性たちは、他の場所に……。」
「こちらで確認できている女性は22人だが、合っているか?」
「っ!?え、ええ。」
念のため聞いてみたが、ビッグアイからの報告通りだ。今のところ、全員が無事である可能性が高い。男側すら無事ということは、少なくとも命は落としていないはずだ。
「よし、それでは……と話を進めたいが、そこの亜人と思わしき集団は、どうする。」
「っ!?」
彼女たちは突然話しかけられ、驚いた様子を見せた。
とはいえ、そんな反応も仕方ない状況だ。ワケのワカラン真っ黒な男が来たと思えば、突然『この要塞から助ける』などと言っているのだからね……。自分が向こうにいた場合、同じように疑っていると確信できる。
とはいえ、悩んでいる時間も無い。先程廊下で聞いた「つまみ食い」を行いに敵兵士が戻ってくるパターンもあり得るため、答えはすぐに出してもらおう。
「言わずとも分かるはずだ。時間が惜しい、すぐに答えを出してくれ。」
「は、はい。こ、ここに居ても皆離散となり奴隷になるだけです。お願いします、どうか私達、狐族一同も……。」
問いかけると、全員が薄汚れた床に礼儀正しく正座し、額を床に付けるほど頭を下げた。相当のお願いだと、間接的に言いたいのだろう。
「宜しい、意図は受け取った。言っておくがハイエルフと狐族の双方、こちらの指示に従わない場合は置いて行くもしくは死んでもらう。助かりたい命が最優先だ、わかったな。」
「「は、はい。」」
よし、とりあえず従ってくれそうな雰囲気だ。しかし狐族もセットとなると回収用のヘリが足りない、要請しておこう。
《至急、ホークよりフォード1。》
《こちらフォード1-CIC。》
《回収人員が増えた、追加は約40名。》
《了解しました。更なる追加を想定して、フォーカス隊の他分隊を準備させます。》
此方から言おうかと思ったのだが、通信兵が言いたいことを言ってくれた。発言を減らしてくれる配慮は助かる、錬度の高い人員だ。鍵をあけ、囚われた人員を誘導しようと思ったが、合計すると60名以上。かなりの大移動となり理論的にも流石に無理があるし、気づかれた場合に女エルフ側が対処できない。
とは言っても他に隠れる場所もないので、予備の無線機を渡して牢獄に隠れたままで居てもらう。何かあればハクやフェンリル王一家が突入し、プランBとなるだろう。
自分は再びビッグアイ1の誘導を受け、ハイエルフの女性が囚われたエリア、ポイントBに移動する。報告では、街の中心部に有る大橋の下とのことだ。
《ホークよりディムース、ポイントAの脇で待機だ。ヴォルグ、限界位置まで先導してやってくれ。》
《了解。ヴォルグ、頼んだぞ。》
無線越しに、お任せをという言葉が聞こえてくる。気配探知に対して、レーダーの逆探知のようなことができるのは知っていたので、ここはヴォルグに活躍してもらおう。フェンリル王ともなれば、逆探知性能もかなりの精度のはずだ。
《総帥、前方20m、建物の角に敵兵士が潜んでいます。サボりでしょうか、先ほどから動いておりません。》
《どこにでも居るものだな。了解、迂回ルートは?》
《承知しました。ルートを選定し更新します、MAPをご確認ください。と、状況更新。10メートルほど前進して左手の路地に入り待機、哨戒をやり過ごしてください。》
《了解。》
一方の自分は、ポイントBへ向けて移動中。見えてきたのは、東西に流れる川に対して南北にかかる大きな橋だ。大きな橋と言っても事前の計測では長さは70m程度しかなく、幅が150m程と広い設計だ。作りはしっかりとしており、建物と比べると建築技術が高く見える。
橋の下は両脇を通れるようになっており、中心部までは80m弱の距離になり決して短くない長さだ。移動中に見つかっても、何ら不思議ではない。用心する必要がある。
《ビッグアイ、橋の上に4名確認。東と西の端にそれぞれ2名。巡回か、監視か。》
《先程から動きがありません、監視と思われます。橋の下部へのルートを選定します、お待ち下さい。》
数秒でMAPが更新され、最も驚異の少ないルートが選定された。橋の上で話し合う兵士を避けながら東側へと移動し、川縁の1m程しかない歩道へと到達する。ここからは橋の下なので、誰か来ない限りは、橋の下の警戒兵を殺しても目撃される心配は無い。
とはいえ、ソレを排除しても意味が無い。中心部にはあからさまにバリケード……と言うよりは防壁が敷設されており、力技でなければ突破は難しいだろう。
ビッグアイの偵察では、捕らわれた女エルフが南側の川縁を通って橋の下に連れていかれたことが分かっている。確実に、居場所は目の前だ。
《ホークより状況報告。捕らわれたエルフが居ると思わしき橋下の南側通路にバリケードを確認、恐らく水中にまで伸びている。》
《バリケード……金属反応はコレだったか。了解しました、突破できそうですか?》
《ネガティブ。暗視スコープで確認したが、報告通り金属製と思われる。道を戻って反対側を確認したい、誘導できるか。》
《承知しました、橋の出口付近に熱源反応なし。しかし橋の上に敵兵が2名おります、視界からは外れていますがご注意を。》
《了解。2秒後、橋の下から出る。》
「「っ!?」」
……これほどまでに心拍数が跳ね上がったことは、本当に久々だ。
橋から出ようとしたタイミングで、外側から来た何者かと鉢合わせたのだ。ついさきほどのビッグアイ1からの報告では出口に敵影無しとのこともあって、まったくもって想定外だ。服装からして自分と同業者だろうが、ソレに気づいたのは数秒後の話になる。
すぐさま構えていたP320のトリガーを引いて脳幹を打ち抜き、声を出される前に息の根を止める。ゲームで慣れていたと思ったが、やはりグロいな……。
そう思った瞬間、そんな感情を封殺する事態が発生する。相手アサシンが構えかけたダガーが手から滑り、チャポンという音を立てて川に落ちたのだ。
「ん?おい、今何か川で跳ねなかったか?」
「ああ。でも魚じゃねぇか?ここいらの中型魚は、雨の日は活発になるって言うだろう。」
「そうか……。」
まずい、橋の上に居た輩が気づいたか。確信は無いが、音の出どころを確認に来る可能性がある。
橋下に逃げ込めば哨戒兵士とバッティングし、ここで待てば橋上の兵士に確認される恐れがある。まったくもって、動くことができない。殺したアサシンの襟についていた文様らしきバッジだけ回収し、再び陰に隠れる。
死体はゆっくりと川に沈めたが、雷雨と夜間のため血の色は確認できないだろう。浮いてくる気配もないため、この点に関しては処理できたと仮定しよう。
《敵アサシンと思われる脅威を排除……どう言う事だビッグアイ、何故ここまで気づかなかった。》
思わず無線越しに、小声で怒ってしまう。言った直後に発言に対して後悔したが、それも後の祭りだ。
しかし、なぜビッグアイ程の実力者が、敵をここまで接近させたかが分からない。普段なら、絶対にあり得ないことだ。
《私の錬度不足です、サーマルレーダーを切り替えていたタイミングで接近したと思われます。ですが申し上げます。そのアサシンですが、サーマルレーダーに反応しておりませんでした。》
《なんだと……!?》
「橋の下か?念のため確認するか。おい、見張りと掩護を頼んだぜ。」
「わーったよ。相変わらず生真面目だなお前は。」
非常にまずい、これでは1分もすれば死体が発見される。水の色までは判別不能だが、陸地に残った血痕は話が別だ。下地のタイルらしきものの色が明るいため、これは松明程度の光でも発見されてしまう。
とはいえ、今更だが血痕を隠す時間はない、進もうにもバリケードが邪魔だし対岸には哨戒中の警備兵がいる。敵のアサシンのことは予想できたかもしれないが、まさかサーマルに映らないとは思ってもみなかった。
今プランBに移るのは非常にまずい。自分単騎ではバリケードも突破不可能だし、援軍到着までは人質の安全を保障できない。歩兵スキャンの結果からするにポイントBの警備兵は1-2名だ、バリケードを突破さえできれば何とかなるが、手立てがない。対物ランチャーは持っているけれど、一発で吹き飛ばすのは不可能だろう、これも手詰まりだ。
クソッ、いや考えろ。それだけが自分の取柄のはずだ。
こんな時、マクミラン達ならばどうする……何か、手はあるか……。
CODマルチの冷血パークは厄介です。確かBOのブラックバードだと、冷血持ちもMAPに表示していましたね。




