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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第4章 おいでよ!第二拠点の森
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14話 誇り高き決意

【視点:ホーク】


なんだ、この記録は。


当時航空基地で提示されたデータを読み漁り、そう呟いて、かなり真面目に眉間にシワを寄せたことは覚えている。自分で言うのもなんだが、あの時の反応は当然だ。

明らかに睨む必要のあった内容は、同盟を結ぶ相手ならば喋らなければならない。話すことによりこちらの腹の内を見せるわけではないため、口に出すことだけならば容易なことだ。



「……先程の内容に関係した話だ。返答次第で、情報を1つ提供できる。これを知っているのは8492のとある部隊と私だけだ。ここで話をした上で他国に漏れたならば、国王かエンシェントが原因となる。内容を漏らすならば、家臣だろうと気を付けてほしい。」

「是非も無いホーク殿。おそらくその情報とは我が国の危機、特に我に関することであろう。」



……ほう。内容は欠片も話していなかったが、よくぞ内容が分かったな。

恐らくは、自分の話がクーデターの類であることも察しているのだろう、そんな目をしている。流石国王だけのことはある、腹の内の探りあいは得意と言うことか。



「なに、ただの勘だよ。何か、我の知らぬことがあるとは察することができた。良ければ話してもらえんか?」

「そうか。では、遠慮なく話すぞ。」



以前見たデータに記録されていたこと全てを話すと、3人の顔が青褪める。早い話が「身内に明らかな敵がおり、スパイ活動を継続中」ということなのだから、無理もない反応だ。フーガ国が他国の情報を得ていても同じ見た目となるが、ケストレル国王やエンシェントも内容を知らないとなると、それである可能性は非常に低い。

エンシェントも言っていたが、この距離を飛行するとなると大量の魔力が必要になる。そのため飛んでいるのは上位のドラゴンだろうが、自分は目の前の3人以外に見たことが無い。とはいえ、同ランクのドラゴンが複数人いることは予想できる話だ。


話ついでにその内容を聞いてみたのだが、やはり当該クラスの竜人は存在するとのことだ。当然ながら地位的にも位が高く、それほどのものが見せる動きとなると、背後には相当に大きな勢力が控えているはず。

蓋を開けてみて「他国との井戸端会議だった」ならば杞憂だけど、この手の中身を国のトップが知らない場合って、大抵が良くないことなんだよね。



おおげさに聞こえるかもしれないが、現状は最悪一歩手前の状況であり、クーデターが発生する可能性が高まっている。ハクはここに居るため問題ないが、両親とエンシェント、その他ハクに関する家来の命の保証はできない。相手側にも動きが無い故に40日前の情報を話したが、最新情報であり全てが事実だ。



「以上の動きからするに、反乱の際は、位置関係からして北の邪人国が同調することが予測される。北の帝国に関しては、距離があるためにフーガ国へ来る可能性は低い。仮に邪人国が攻めてきたとして、勝ち目はあるのか?」

「―――ハクの時のように、魔力を封印されなければ、な。」



質問に加減をしても意味が無いので、聞きにくい事を聞いてみたところ、一番の問題点は国王も理解していた。自分達が兵器を使えなくなるとのと、同じ内容のことだ。

一芸に長けた者というのは、一芸が無くなればただの凡人だ。ハクのように高レベルで纏まっていても、最も得意とする点が封印されては、本来の実力を発揮するには程遠い。


そして、それ程の者。つまり自分達で言うところの超エース級など、おいそれと存在するものではない。実力に長ける竜人といえど、魔法が封じられては、ドラゴンの姿になったところで大きな的だ。

図体の大きさと巨体を空に飛ばすことのできるパワーがあれば、物理攻撃にて応戦することもできるだろう。しかし、5年前の戦争でも同じことが起こったはず。結果を見るに、その状況に追い込まれれば力不足ということだ。



「だがフーガ国は、北の邪人国と戦争になろうとも、アイサフ8492の力を借りるつもりはない。」

「父上!?」

「力を借りるのは容易だが、最初から強大な力に甘えるほど我々は軟ではない。まずはじめに、我々で実践可能な対処法を考察・実行する。それが、誇り高き竜人が暮らす我が国における王の仕事だ。」

「っ……。」



ハクは言い返せないようだが、言っていることは立派だし、同じ竜人であるハクも身に染みて分かっているのだろう。場所が超満員のコンサート会場ならば、スタンディングオベーションが起こっているだろう。

しかし、「理想と現実はかけ離れる」とはよく言ったものだ。娘であるハクを嫁に貰っている自分としては、何故彼がこのような答えに至ったのかが、最重要の課題となる。



「敵は勇者の知識を得た邪人国だ。当然、竜人への対処法も学んでいることだろう。加えて5年前の戦いで戦力が大きく削られた今、焼き直しになる確率は低くない。それでも、か?」

「あの時、国と娘を天秤にかけ国を選んだ。故に中途半端な覚悟では続けまいと、覚悟している。」



―――なるほど。その一文で、意図していること全てが理解できた。ならば今、否定できる要素は微塵も無いな。



「承知した。I.S.A.F.8492は、その考えを受け入れよう。」

「マスター!マスターならば、フーガ国にとって最良の展開をご提案できるはずです!何か手を示して頂ければ、5年前のようには」

「誇り高きフーガ国は、発生するであろう脅威に対峙することを選択した。私達はその意見を尊重し、厳粛に受け入れなければならない。」

「っ……。」

「ハク。宗教にしろ政治にしろ、相手の国に自身の考えを押し付けることは争いにしか発展しない。これはよくある話だぞ。I.S.A.F.8492は国ではないが、それに匹敵する勢力は所持している。」

「―――承知、しました。」



絞り出されるように呟かれた、悔いの残る声。自分も全く後悔が無いかと言われれば、答えはノーだ。できることなら今すぐにでも出陣し、害を成す芽は摘み取りたい。

しかしそれを行えば、待っているのは「アイサフ8492は侵略者」という悪評の類のみ。これは他国が行っても同様だ。世間体を考慮した場合、「部外者は事後でなければ介入できない」というのは、クーデターを起こすうえで最大のメリットだろう。



「―――だが、我が民が虐げられることだけは回避したい。我が政権が潰えた時は、どうか奪還をお願いしたい。」



この通りだ、と、ケストレル国王は額を地面につける。密会だろうと一国の王が額など付けるべきではないと思うが、ハクもエンシェントも、それを止めることはできなかったようだ。


正直、彼が言っていることは無理難題だ。要は「クーデターが発生して、現政権が持ち堪えている間にフーガ国へ進軍。クーデター軍を倒し、政権を奪還してほしい。」ということになる。

現政権が続いているときに殴り込むと竜人のプライドにダイレクトアタックすることになるから、避けなければならない。その上で全てを丸めて抑え込むとなると、こういう対処しかないのだろう。


ホント頭からつま先まで、ややこしい話だ。けれども、国民を思うからこその配慮の表れであることも、また事実。

様々な要素が絡む、文字通り複雑な話だ。大学でこの手の内容を講義していたら、間違いなく机に突っ伏し寝息を立てているだろう。戦争には付き物の話だ。誰が加害者で、誰が被害者か。正義とは何か。


挙句の果てに正解なんて無いのだから、生き物には始末に終えない内容だ。できることなら、考慮したくない。



そんな無秩序に理があるとしたら、ただ1つ。勝った方が、正しくなるという結果だけ。弱肉強食とは上手く言ったものだが、全ての命に存在する運命みたいなものだろう。



「承知した。I.S.A.F.8492の名にかけ、戦闘となった際は、必ず勝利することを約束しよう。」

「感謝致す。」



フーガ国も似たようなものだが、こちらも引きこもりの軍勢だ。どうせその時も暇だろうし、大規模戦闘はエース達の望む場所。ハクの手前もあるし、あえて否定する理由は無い。

自分の答えに、国王は安堵の表情を見せる。彼が、勝利という終着駅を望んでいるのは明らかだ。


しかし1つ、今ここで決めておきたいことがある。



「1つだけ決めておきたい。仮にそうなった場合、次の政権は誰が持つことになる?」

「む、そうだな……。」



ハクが次の権力者に該当しないのは、国王も身に染みて分かっているだろう。一度追放されている上に政権を降りた家系となると確実にダメだし、自分に嫁いだこともあり、不適合の度合いは尚更だ。



「……無理難題とは心得ている。それでも頼めんか?エンシェント。」

「まーた我に押し付けるかのぉ……。」



多分今まで聞いた中で一番大きな溜息を付く彼だが、それを見た国王も、なんとも言えない表情になってしまっている。場の空気が物語っているが、こっちとしても割り込みづらい相談だな。

ま、理解できなくも無い。エンシェントからすれば、ハクの追放の時も相当に苦労しているはず。それに匹敵する難題がもう一度くるのは明らかなのだから、流石にため息も付きたくなるのだろう。


一方の国王からすれば、一番信頼できる人に託したいであろう内容のはず。そんな話をエンシェントに行っているのだから、そういうことなのだろう。

自分自身が治める集団を託す仲間が居るというのは、単純だが凄いことだ。エンシェントも後頭部を手でかきつつ、なんだかんだで断るつもりがないようだ。



―――そんな奴が居るってのは、少し、羨ましいな。



「ほとぼりが冷めるまで、じゃぞ。考えるだけで、玉座というのは居心地が悪い。」

「毎度すまんな。」



なんだか物凄く大事なことがアッサリと決まった気がするけど、他所は他所ってことでスルーしておこう。下手したら、自分が治めろ、なんて飛び火しかねない。それだけは断固ゴメンだし、そもそもにおいて、約束したのはクーデター軍の壊滅だけだ。

とはいえ、ハクの本心は、そんなことが起ころうとも父親が国王を続けることだろう。先ほどは表向きもあり彼の決定を尊重したが、有事の際は、決定打を受ける前に対策してやりたいところだ。


そうなると、後々に「なんで8492がフーガ国に居たのか。侵攻ではないのか。」という論争が起こりやすいものだが、軍隊がそこに居た理由は、見返りを求めない前提で「付近の散歩ついでのエンゲージ」とか言っておけば、どうにでもなる。ようは筋道の問題だ。



なお、ここまで全て架空の出来事に対する予習程度の考えだ。ある程度の考えを出しておかないと気が済まない、自分の悪い癖の1つだね。


シリアスな話ばかりしていては、文字通り、疲れる。気付けば日が沈んでから随分と時間がたっており、窓から空を見上げれば、辺りはすっかり星々のコンサート会場となっていた。

せっかくの客人ならぬ客竜も居ることだし、昨日出したのと比べて1ランク上のウイスキーでも振舞っておこう。問題に目を向け対策を練り痛めた心は、アルコールの力を借りて修復だ。

安定の酒オチですが、万能薬「アルコール」。

……この点は、何故か納得できてしまいます。

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