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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第4章 おいでよ!第二拠点の森
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13話 北方のエース

シリアスパートの続きです。時系列的には8492の勇者討伐~現在程度です。

(現在は)名称不明な北のエースのお話です。


タイトルを13話に変更しました。

【視点:3人称】

大陸の中央、北端から南部までを収める国、邪人国。南西にも邪人の国があるせいか、「北の邪人国」と言うのが一般的な名称で、「北邪人国」などとも呼ばれている。

領土こそ広けれど中央部は山々が聳えており、とれも暮らせるような地形ではない。南端にあるシルビア王国とも山で隔たれており、陸地続きとはいえ孤立した地形だ。


そのため実際に都市や街があるのは、北部もしくは南部のみ。国の中央部は山脈が聳え立っており、主だった街はなく、小さな集落がいくつかあるだけだ。

このような厳しい地形にあるため、作物の生産量は満足と言えず、尾びれを付けても乏しい状況だ。そのためか、衣食住の全てを求め、邪人国は度々、昔から他国へ戦争を仕掛けていた。



大なり小なり、現在もその傾向は変わらない。良くも悪くも、未だに時代が変わったことに気づいていない。過去から続く邪人としての誇りと正義が、他の民族に後れを取ることを許さない。



とはいえ近年は世界的に平和を望む傾向が強く、戦争と呼べるほどの戦いは、竜人がシルビア王国を攻めて以来、起こっていない。大陸西部において、上部1/3しかないアフリカ大陸を支配している南の邪人国が北進を狙い、西の帝国と小競り合いを続けている程度だ。


邪人の中には魔物を使役できる者も数多いが、全ての魔物を使役できるわけでもない。そのため、というわけではないが、邪人国も度々、魔物による被害を受けている。

それでも、魔物の使役が可能となると、戦闘における自国民の参加数を最小限に留めることができる、ということだ。その利点は計り知れないものの、それをもって、やっと他国と同等の暮らしを送ることが出来るほど、置かれている環境には厳しさが滲ん出ているのが現状だ。



国を挙げて「強い邪人」なんて言葉を掲げているせいもあり、戦闘職の道に進む者が多く、物理魔法共に武に長けた人物が多いのが特徴の種族だ。人族と姿かたちはほぼ同一であるものの肌の色はやや青白く、見た目だけで判断できる。

戦術に関しても、地上歩兵、翼竜隊、魔導部隊と人族と似通っているが、これに先ほどの、使役された魔物が加わることになる。また、勇者の知識が元となって最近開発された、魔導翼竜や魔導船などが実践投入間近となっている。


要はレシプロ機と同等レベルの戦闘機と鋼鉄でできた船のことなのだが、この世界を基準にすれば、まさに革命的な乗り物である。動力源が魔力であるために、前者は魔力と武術の両方が求められるが、幸いにも邪人国において適合する者はソコソコの人数が居る。

なお、動力源が違うだけで、推進力の発生方法は、8492が持っている船舶や戦闘機と全くの同じとなっている。船にはスクリューや舵があり、機竜には昇降舵や方向舵などが備わっている。


当たり前だが、電子制御の類は一切無い。木製車輪のランディングギアだけは付いているものの、着陸時の故障率の高さが、課題となっているようだ。



これらは邪人国内においても、表向きには秘匿された兵器となっている。挙句の果てには炸裂魔法を使った魚雷もどきも存在しているが、当時の勇者が出し渋って詳細を説明していないため、なぜ船に対して垂直に接触すると爆発するかを説明できる人物は存在していない。

知識が無いために当然ながら空対地爆弾などには応用が効かないのだが、魔法によるアシストで工作制度の低さを補っているのは、この世界らしい解決策だ。動力も普通の魚雷と同じで、スクリュー軸にて推進する。



これらの兵器は秘匿兵器ということで、当然ながら外部にも存在を知る者は皆無である。

そして武器が持つ火力故に、今までの伝統であった、翼竜騎士を脅かす存在となっていた。



それは当然、邪人国における翼竜隊にも、当てはまる。

機竜のテスト飛行に同行し、実際に行われた戦闘機動を見て、「いよいよ世代交代の時期なのか」と、金色の瞳と短髪を持つ女性が溜息を付いていた。




北邪人国、第27翼竜騎士飛行隊副隊長。それが彼女の正式な肩書だ。周りからは『青い翼の片翼』なんて二つ名で呼ばれている。

普通の翼竜と比べると、やや青みがかった鱗を持つ、隊長騎が操る翼竜。そんな翼竜を従える彼に青いリボンを貰ってから、彼を補佐する立場で、彼女は戦場を飛んでいる。


滅多に居ない女の翼竜騎士だからと下手に見られていたが、今では王からも表彰を受けることがある程に成長してきた過去を持つ。表現するならば、叩き上げのエース級だ。

職も竜騎士である上に美貌も人柄も良く、様々な意味で人気者となっている彼女である。しかし、彼女が所属する隊の隊長が見せる反応のせいで、自然とライバル意識を向けてしてしまっている人物が居た。



そう……西の帝国にて腕を振るう、彼女と同じ女の翼竜騎士、エスパーダ。

西の帝国と言う大国の誇りを持って飛ぶ、その国の英雄だ。彼女とは直接戦ったことはないものの、赤い長髪が特徴で、かなりの腕前と判断できる情報が、この国にも何度か入ってきている。



「見ろ。褒め称えるべき戦果だ。」



その情報が入るたび、彼女の前で騒ぎまわる男が居た。まるで自分の部下が成し遂げた戦果のように彼は喜び、英雄を見る子供のように目を輝かせ、凄い凄いと褒め称える。

自分自身が最優秀の翼竜騎士である称号を授与され、同等のことをやっているというのに、その自覚は無いようだ。



「あんまり言ってると、また「愛国心がどうの」って怒られるわよ。」

「うるせぇ。俺はただ、このエスパーダって奴の業績に感心してるだけだ。国なんて関係無ぇやい。」



自覚の無さと喜びように苦笑しながら一応注意を入れる彼女だが、テンションの上がっている彼を見る目は、優しい恋人そのものだ。たった二人の飛行隊とはいえ、お互いに意思疎通が容易にできる程となっている。

幾たびの戦場を共に飛び、共に困難を乗り越えてきた仲。精鋭の彼と比べると叩き上げの私程度では経験が違いすぎるけれど、それでも、彼のことを考えて飛ぶ戦場が、彼女の生きがいとなっていた。


そんな二人の元に、一通の命令書が届けられる。夏が終わり、秋の気配が影をちらつかせた季節だった。



「ん?命令書?」

「ええ、隊長宛てです。中身はなんでしょう?」

「……ふむ。なに、2部隊の戦闘訓練だ。新米の訓練指導もあるが、お前は西の既存部隊を躾けてやってくれ、一度に終わらせるぞ。」



命令書を指で弾いて彼女に渡しながら、彼は「大した命令ではない」と呟き、翼竜が居る社屋へと歩いていく。

相変わらず考え付いたら、すぐに実行するのだな。と苦笑しつつ聞いた彼女は、特に否定することなくあとに続く。


新米を鍛えるために南部の基地で活動を行っていた彼は、勇者が治めるシルビア王国からの増援要請を受け、演習を中断して進軍を開始した。

自身が仕える邪人国の他国侵攻に関しては疑問符を浮かべている彼だが、実力は確かであり、根は生粋の忠実な騎士。そのため国民からの人気も強く、国としては、その疑問符を罰することができない状況だ。


彼にとっては、いつも通りの容易な戦闘。魔導飛行船の大軍や古代神龍の大群でも出てくれば話は別だが、魔術、槍術共に世界最強の名で知られる彼の腕をもってすれば、時間はかかるだろうが1軍隊程の大軍すらも相手できる。

それが、今まで積み上げてきた戦果から導き出される戦力だ。事実それに似たことを行っており、伝説に名を残すほどの英雄と謳われている。他国すらもその腕前を認めており、伝記になること間違いなしと、書物家が詰め掛けて来るほどだった。




―――その伝説は、『鳥』によって潰えた。彼女が守るべき、青い翼を持つ隊長は、もう居ない。




彼ならば、どんな敵が来ても無事だろうと、相棒である彼女が気に止めなかったことが理由か。


彼の最後を見た者は、誰も居ない。あの場に居た者の全員が、鳥の攻撃によって命を落とした。墜落し左手を失いながらも帰還したシルビア王国の斥候から、全滅したとの報告を受けただけだ。

後日ツラを出してきた司令官の報告に対して彼女は耳を疑い、手を出すことは禁忌と心得ながらも、激怒した。


「勇者軍が小規模軍勢を相手に苦戦していたため、援軍に向かわせた。」それが司令官の言い訳だ。

普通に考えれば、小規模相手に苦戦する勇者軍で無い事は明らかに分かることだ。小規模の相手だからと侮った司令官が、何の策も練らず、偵察すら行わずに中規模部隊を突撃させたのだ。完全な油断、慢心である。


知っての通り、結果は全滅。その司令官はクビになり国民から蔑まれ自殺したが、失った部隊が戻ってくることはない。北邪人国の航空戦力は、たった1日で大きく縮小することとなった。

その原因は、彼のせいではない。また新米の兵士達が、圧倒的余裕を想定して練習がてらと進軍したことは、彼のせいではない。



「―――隊長……。」



今日も今日とて机に突っ伏し、時間が過ぎる。誰も居ない室内で不本意に呟いてしまうも、誰に届くこともなく、彼女の声は消えてゆく。

翼竜の世話は続けているものの、冬と言うこともあり、空に上がることはなくなってしまった。この時期は地上においてランスもしくは魔法の鍛錬を行うことが多いのだが、それすらも身が引き締まらない程に落ち込んでしまっている。


とはいえ、彼女も本心では理解している。敵を倒すために飛んでいる以上、当然ながら、その逆が起こってしまっても不思議ではない。



しかしながら、彼のために飛んできたと言っても過言でないことも、また事実。

ショックという冬眠から目覚めることが出来ないまま春を迎えようとしている彼女に、更なる試練が待ち構えていようとは、当然ながら知る由もない。


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