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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第4章 おいでよ!第二拠点の森
78/205

スカイアイ

時系列としては4章9話と10話の間ぐらいです。

【視点:3人称】


第二拠点から南の海を越えていくと見えてくる小さな島、佐渡島(仮名)。第二拠点が出来て以降、当初あった陸軍施設は大幅に小さくなり、第二艦隊が出払って居る時は、閑古鳥が居座る島である。

いつまで佐渡島なのかと8492の全隊員が疑問に思っているものの、忘れられているのか大した問題ではないので放置されているのか、未だに変わる気配がなく定着してしまっている。今では「むしろ佐渡島が良い」なんて声も、チラホラと聞こえてくるぐらいだ。


しかし、航空隊だけは話が別。陸軍海軍と違って佐渡島(仮名)拠点のみに巣を構える彼等の基地が休まることはなく、毎日必ずどこかの部隊が訓練もしくは演習を行っている。

ジェットエンジンの轟音が小波の音色を消し、微かに鼻をつく燃料の匂いは潮風すらも打ち消す程に特徴的だ。しかしそれに比例して、構成される飛行隊も最低クラスですらエース級という、強烈な仕上がりとなっている。


そんな彼らが行っている基本的な活動は、衛星と偵察機による偵察活動だ。記念すべき全部隊即時出撃待機命令を「昼メシのため」に使った経歴を作ってしまったことに気づき酷く落ち込んだ、エドワード大元帥が仕切っている。



「すまん、少々会議が長引いた。」



その彼が、偵察部隊からの情報を収集、分析しているCICの一角に現れた。

どうやら会議が長引いたようで、やや駆け足での登場となる。その姿を見た作業員が立ち上がるも、彼はすぐに座らせ作業に戻らせた。



「大元帥、お疲れ様でございます。」

「そっちもご苦労だ。で、気になる動きってのは?」



しかし、一角に居る部隊は別である。その部隊がエドワードを呼んだため当然のことなのだが、彼等が座ることはなかった。



「これです、ご覧下さい。集めた飛行物体のデータログを漁っていたのですが、先日総帥からお話のあった西の帝国、北の帝国、あと以前からマークしていたフーガ国に関して、妙な動きがありまして。」

「これは……。」



彼等が行っているのは、ガルムとメビウスが接触した「西の帝国」に関する偵察だ。とはいえ内政レベルでエージェントを送り込めるはずもなく、その点はホークがエンシェントに委任している。

とはいえ今のところ大きな動きもなく、動きがあるとすれば、西の帝国が8492と同盟を結びたがっているという点のみだ。北の帝国を筆頭に、その他の国はダンマリを決め込んでいる。


しかしそうなると、偵察部隊が得ている情報とは合致しない部分が出てくるのだ。飛行物体を捉えた記録の全てではなく極一部だが、明らかに不自然と思われる事象が顔を出している。



エドワードが見たのは、西の帝国、その南部の大陸、北の帝国、シルビア王国北部の山脈を越えた先から飛び立つ単騎の翼竜。そして仕舞いには、フーガ国から飛び立つドラゴン。


詳細な容姿までは捉えられないものの、金髪銀髪茶髪や体格の違いなど、まさに様々な種族と言えるだろう。それらが定期的に大陸の中央部に集まり、数時間後に元の地点へと帰路についているのだ。西の帝国を注視していた影響や、首脳会議で得たホークからの事前情報もあり、まさかこのようなデータが得られるとは、思ってもいなかったのである。

精密な偵察ということではなかったため「単に何かが飛んでいる」程度のデータの集合体であり、飛行物体の詳細までは分からない。これを解明するとなると、実際に飛行中の物体を衛星かブラックバードで追跡する必要があるため、かなり運の絡む偵察となるだろう。



「申し訳ございません、迂闊でした大元帥。視野を広くして、もっと早くデータを解析するべきでした。」

「後悔した所で仕方あるまい、とにかく明らかに異質だ。至急総帥に連絡、お伝えするぞ。」

「ハッ。おい、第二拠点のCICに繋げ。」

「了解。」



===========



「……なるほど。飛行コース、速度変化からするに飛び立っている輩は毎回同一のようだ。」

「ええ。高度もほぼ同一です、仰る通りでしょう。」

「とはいえ、頻度と集合位置は疎らで先読みは辛いか。」

「そうですね……追跡となると、運の要素が大きくなります。」



その報告を受け、ハクに「野暮用」と言いつつF-14Sで佐渡島にやってきたホークは眉間に皺を寄せた。体系をゴツく見せるGスーツと飛行中のテンションを維持しているせいもあり、8492隊員も緊張を維持したまま応対している。



「報告感謝する。私も最近得た情報だが、位置関係を説明しよう。西の帝国南部にある大陸、アフリカ大陸の北1/3が切り取られたような大陸だな。それと、シルビア王国の北の山脈を超えた先から北までの一帯は、邪人の国が支配している。」

「邪人、あの時勇者側に援軍に来た……えっ、ですがそうなると、何故このメンバーが?」

「そうだエドワード。しかし現時点において、その答えは分からない。」



和解でもしたのかと一瞬脳裏をかすめた考察だが、ホークがエンシェントから得ている情報とは一致しない。むしろそうなると、彼が嘘を付いているか、何らかの謀略が動いているという想像ができてしまう。

状況論ではあるが、後者の確率が圧倒的に高いだろう。飛行物体の動きは、まさに密会へ向かうにふさわしい飛行コースと離着陸位置を取っていた。


ともかく、現時点では様々な情報が不足していることは全員が理解している。上空の寒気が強くなり、雪が本格的に降り始めてからは開催されていないようなので、8492としても精密な情報収集ができない状態にある。

ホークの指示で「偵察活動続行、大陸中央部に注意」ということで継続事項と判断された。



「それと総帥。別件ですが、こちらを。着ている衣類からして、大陸北部、仰っていた邪人の国と思われます。」



映し出されたのは、金属製の飛行物体。形は翼竜に似ているが2周りほど小さく、比較するとコンパクトだ。騎士と思わしき人間の搭乗位置も同じである。

しかしながら、到底生き物とは読み取れない。武装こそ見当たらなけれど、これでは戦闘機と言うジャンルが合致するだろう。プロペラは見られず、ジェット戦闘機のように推進力を利用して飛んでいると思われる。



「この世界バージョン戦闘機、ってところか。光の反射からしてバイザーらしきものも装備しているな、速度も時速500㎞程だろう。見ろ、上昇中にも顔の上半分で光が反射している。」

「ああ、だからこの速度で飛行可能だったのですね。」



速度に関しては解析で導き出していた偵察部隊だが、風防なく時速500㎞を出せていた理由までは不明だった。光の反射からそれを看破したホークに感心し、理由に納得することとなる。

確かにこの程度の速度なら、バイザーがあれば風圧には耐えられる。アクリルかどうかまでは不明だが、バイザーと呼んで差支えは無いだろう。



「翼竜の機械バージョン……名づけるなら、ドラゴンマシーン……は無いな。機竜ってところですかね。」

「機竜で良いだろう、文章にしても分かりやすい。」

「了解です。その機竜ですが、飛行ルートからしてテスト飛行って感じでしょうか。実践投入されれば、純正の翼竜騎士とかいう連中にとっては厄介でしょうね。」

「だろうな。機動性も似ているうえに最大速度は1.5倍。総帥が仰るように顔面への防御も対策済みとなると、厳しいだろうな。」

「なに。ドライバーが旋回Gに耐えられなければ、時速300㎞も500㎞も似たようなものだ。圧倒的性能というのは、戦術の目を曇らせる。機体制御から飛行ルートの決定をすべて一人で行う機竜に対し、意思のある翼竜の方が、上手になる場面も出てくるだろう。」



なるほど、と隊員は納得する。その内容は自分達にも当てはまるのだと、静かに気を引き締めた。



「この件に関しては飛行頻度が判明すれば問題無い。媒体が金属製なら近接信管も使用可能だ、我々に対しての脅威度は低いだろう。空の連中は、金属製の獲物が現れたと喜びそうだな。」



「敵対する前提ですか」と苦笑する偵察員だが、彼等も空のエース達の性格は分かっている。状況からしても敵対の流れは回避不可能である上に、ウマが合うとも思えないので、心配するだけ無駄骨というやつだ。

8492がこの世界に来てから常時作戦行動中な偵察部隊だが、今後も引っ張りダコな状況は続くだろう。戦場では情報が最重要とは昔からよく言う話だが、これはミサイル全盛期でも同じである。


いかに相手の装備を知り、配置を知るか。指揮官が相性の優越を看破し、効率的な攻撃や防衛を行えるかどうかは、彼等が収集する情報に全てが掛かっているのだ。




「それでも空軍なら、事前情報無しで後手に回ろうとも無双するんだろうな」という思考が脳内を横切る彼等だが、自分たちの存在意義にもかかわる事なので、思いつかなかったことにするのであった。


一気に「きな臭く」なってまいりました。

自分で書いておきながら何ですが、どう転ぶか分かりませんね!

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