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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第4章 おいでよ!第二拠点の森
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9話 様々な驚き

ハイエルフ反省会

【視点:リュック】


……まったく、あいつは何がやりたかったのか。


不本意ながら同族である一人の若者が起こした問題行動は決着がついたものの、笑顔で放たれた「1日かけて、部族内で答え出してね。」という総帥様の一言で、全員の背筋が伸び、冷や汗が流れた。

裏を返せば、「本当に従う気があるのか」という問答、という捉え方もできる。もちろん自分達は従うつもりでこの地に来ているのだが、あの行動をご覧になったからには、疑いの芽が生えるのも仕方が無いし、全面的に、こちらが悪い。


しかし本当、あいつが取った行動は理解できない。新たに合流した同胞の中にいた美しい若者の気を引くにしたって、悪目立ちが過ぎる。それが理由で総帥様のご機嫌が正反対になった場合のことを考えないのかと、心底思う。

全体的な長となったリガルさんも、一時は顔面蒼白だった。問題の若者は圧倒的な力の差を見せられた上に彼自身の父親にボコボコにされ、現在は猛省している。二度目が起こる事は無いだろう。



とはいえ。



「この住居に居ると、そんな大事すら忘れてしまいそうだ。」

「ええ、正に快適の文字が相応しいです。」



不測の事態が起こった際には責任が来るであろうリガルさんですら、そう呟いてしまう。総帥様には失礼だが、自分も同感だ。

恐ろしいほどに洗練された住居は、魔法で強化された我々のものとすら比較にならない。魔法が使われていないというのに隙間風の類は一切なく、冬の到来が目前だというのに、ほんのりと暖かい。


軽く飛び跳ねてみるもトントンと軽く音が響くだけで、構造もしっかりとしている。それでいて木々に包まれているという安心感もあり、この住居だけで、我々ハイエルフにとっては宝物に匹敵する程だ。

水を使用する設備も合理的であり、共用だが「浴場」と呼ばれる施設も立派なものだ。冬の冷たい水を浴びることもなく汚れや汗を洗い流すことができ、子供の身体を拭くための温度調節も容易である。


調理場ですら同等だ、合理的で集団で作業しても使いやすい。総帥様いわく昔ながらの設備らしいが、我々からすれば一切の不足が無い最新そのもの。感想の方はリーシャが言っていたことだが、間違いは無いだろう。

自分達が知っている今現在の調理法は少ないが、その点もアイサフ8492の炊飯部隊の方々が指導に来てくれているようだ。



ともかく、これほどの設備を頂いたからには、相応の仕事をこなさなければならない。自分の仕事は総帥様との連絡係、何も無いときは小麦栽培の手伝いだ。

仕事に関する点は、長や他の者の意見も同じようだ。空き時間の簡易的な集会で、各自が意見を出し合っている。そして話は、自分達兄妹に絡んだ内容となった。



「と、とりあえず額を付けておいたが、あれで誠意は伝わるだろうか……。」

「ですが長、あれ以上のことは不可能かと。」

「そ、そうか。」

「正直なところ……これら一式を頂けたのは、想像以上でしたけれど。」

「う、うむ。ともかく総帥様は人格者のようだ、我々は懸命に仕事をこなそう。リュック、リーシャ。総帥様への対応、くれぐれも気をつけてな。」

「ハッ、厳に注意致します。」



言われずとも、と言いたいところだが、やはり長から直々に厳命を受けると、より一層気が引き締まる。リーシャと目を合わせ、お互いに頷いた。



「ところでリュック、リーシャ。一度戻ってきた時から気になっていたのだが、奴隷の装備は身に付けておらんようだが、こうして移動が成功しても身につけなくて良いのか?」

「あっ、その点なのですが……。」



総帥様には、綺麗に無視されたことを説明する。未だに蒸しかえることもなく、万が一奴隷を嫌っていらっしゃった場合、ご機嫌を損ねてはならないため、言うに言えない状況なのだ。

リーシャも半ば諦め顔で、自分の話に相槌を行っている。説明を終えると、長御一行も納得された。



「ならば、言われるまでは口に出さないほうがいいな。さて、その総帥様から言われているのは小麦や作物の栽培と、結界維持の手伝いだけか。リュック、何か戦力的なことは仰っていたか?」

「いえ、何も。ですがアイサフ8492は、5年前に竜人が負けた国を数時間で制圧した集団ですので、その点は……。」

「……そうだった、忘れていた。それに加えて古代神龍様、フェンリル王の一家、そして知己程度とはいえエンシェントドラゴン様とリヴァイアサン様と友好関係か。正に、無敵と呼ぶに相応しい。」



我々では邪魔になるだけですな、と、乾いた笑いが周囲を包む。話を聞くに、むしろ、その2つが霞むほどの強さを持っていらっしゃるのが、アイサフ8492と呼ばれる集団だ。

自分も実際の戦闘現場を見たのは洋上の1回だけだが、確かに、圧倒的かつ容易に、高ランクの魔物を倒している。勇者の国を倒したという実績も、十分に頷ける結果だ。実際に行うかどうかは別として、その気になれば、世界を制圧することすら可能だろう。



「それにしても、彼等は人間だというのに、あまり嫌な気持ちは浮かばんな。」

「ええ。やはり、彼らに対して嫌悪感を抱いた者は居りませんでした。私も同意見なのですが、本当に驚いております。」



魔法に長けた女性エルフの意見は、自分も同意。人間を嫌っていたはずの我々だが、第二拠点と呼ばれているこの施設の人間からは、嫌悪感は感じない。むしろ全員が優しく、気を使ってくれており、それでいて友達かのごとく接してくれている。

先ほどの施設紹介だってそうだ。女性が使うような施設の場面では、しっかりと女性の兵士が説明を行っている。もちろん、我々男は遠ざけているし、見えも聞こえもしない。


人間と一緒に暮らす、という諦めだけでは、到底説明のできない感情だ。約一名ほど例外がいたものの、この現状には全員が驚いている。

これならば、何のために悩んでいたのか分からない。議論したという過程が重要であるとはいえ、1ヶ月ほど続いた議論が、まるで無駄と思えてしまう結末だ。



「8492の皆さんが、よくわからない服のようなものを着ていることが原因ですかね?」

「流石にそれは無いだろう、8492の皆様が親身に接してくださっているからこその感情だと信じている。しかし一般の街で出会う人間には、また違う感情を抱く恐れもある。今ここで、人間に馴れておく事も重要だ。」

「そうですね、慣れに越したことはありません。」



この点に関しては、出席した全員が同意。今夜にでも、それぞれのグループに伝達することとなるだろう。



「その他、見慣れぬ乗り物やアイサフの各部隊についても、覚えねばなるまい。」

「総帥様は以前、大きく分けて陸・海・空の部隊が居る、と仰っていました。我々が覚えるのも、その程度で良いとのことで。」

「……この点が論争になることは把握済み、か。流石総帥様だ。」



自分の答えで、全員が、あの人には敵わないなと肩をすくめる。その点に関しては同感だ。

ともかく、ここでの暮らしは始まったばかり。負の遺産もあるけれど、1つ1つ、確実に乗り越えていこうと思う。


今日は、その答えをお出しする日だ。小麦栽培の全員で森を出て、合流予定となっている午前10時に向け、公園の西側、開けている草原(芝生)の場所まで移動する。総帥様御一行は、そこにいらっしゃった。



「次、マクミラン!」

「了解!そぉら行ったぞヴォルグ!」

「お任せを!ってハクレン!?」

「予測が甘いわよヴォルグ、もらったわ!」

「ああああ取られたあああああ!」



……皆さん交互に、何か円盤らしきものを投げて、フェンリル王一家とお戯れでした。



「次は私です、行きますよスコル!」

「了解ですハク様!」

「次は負けん!」

「親父、自分の息子に張り合うなよ……。」

「大人げねーなヴォルグ。」



そんな光景を見て、固まってしまった自分達御一行。ですよね、フェンリル王があんな行動と表情を見せていたら、誰だってそうなりますよね。

ものすごーく高速で、しっぽが振られている、よほど楽しいのだろう。ハク様も、眩しいほどの笑顔を見せていらっしゃる。ホーク様の前では、気が休まるのでしょう。



……申し訳ないけれど、国数個を容易に潰せる程の戦力の姿には、到底見えない。とはいえ本人たちに実行する気は無いし、まったく気にしていないんだろうな。

さて、そんなハク様も円盤を振りかぶって……



「ワオッ!?」

「っておおいどこまで飛ばすんだハクうううう!」

「あああ申し訳ありませんマスタァァァ!」

「お任せくださいハク様、とどけこの跳躍!」



円盤が、すごい勢いで急上昇。そして跳躍するヴォルグ様!

おお、お見事です。円盤を噛んで、綺麗に着地なさった。



「ビューティフォー...」



総帥様の拍手に釣られ、我々も拍手で続いてしまう。その音でこちらをご覧になり、「集合ー」と声をかけると、総帥様ご夫妻、ヴォルグ様一家、そして、草木に身を包んだ人が居る1部隊様が集合された。


まず始めに先日の侘びと一族としての決定を行い、自分達は頭を下げた。申し入れはすぐに了承されたものの、表情と受け答えからは、総帥様の心意が全く読めない。戦っているつもりは無いが、心理戦となると、相当に厄介なお方だ。

そして何事も無かったように、別の部隊と合流して小麦栽培場所の説明となった。恐ろしいことに既に土地の半分の整地が終わっており、見ただけで分かるほどの良い土壌が整備されている。


あとは、魔物避けの塀をどうするかお悩みとのことだ。高くするのは簡単らしいが、仰るとおり風通しと日差しが悪くなる。そのため、柵状の細いものが提案された。

とはいえ、元の隠れ家では柵での区分けなんて全くなかったし、魔物に襲われ怪我をすることも稀にあった。いくら深淵の森といえど、それぐらいの危険は背負うべきだろう。


双方の意見が全て片付けられ、自分達は整備完了を待つことになった。とはいえあの調子だと、2日もあれば出来上がってしまいそうだ。

魔導兵器らしきものを使っているらしいが、なんとも便利なものである。総帥様を手伝う、なんて大層な事はできそうにもないが、せめて一族が迷惑をかけないよう、自分にできることを進めて行こう。


犬 疑 惑 。

イヌ科イヌ属にとっては、異世界テンプレで言うところのリバーシですね。


P.S.

ブックマーク数100、評価ポイント300突破!

皆様のおかげです、ありがとうございます。

今後ともご愛読の程、宜しくお願い致します。

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