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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第4章 おいでよ!第二拠点の森
73/205

8話 自分達が魔法を見ると、こうなるよね

テンプレからの逆テンプレ

【視点:ホーク】

「待て!!」



西門を出て1分後、後ろから飛んできた強い声。ハイエルフの集団の後方か。

若そうな男の声で随分と気合が入っていたが、さて誰に向けられたものなのやら。



「聞こえているだろうホーク、待て!!」



自分かーい。



なんでしょーかと振り向くと、そこには金の短髪、リュックと同じ緑のエルフ的民族衣装。身長180cmぐらいかな?一人の男のハイエルフが、ズカズカとこちらへ足を向けていた。

何か言いたげだけど、これは聞かなくても勝手に喋ってくれるパターンかな。とりあえず、何だコイツという目線を向けておこう。



「我がハイエルフの長、リガル族長を騙し込み、リュック・リーシャ兄妹を垂らし込むとは何事か!!」

「「「「「……は?」」」」」



わお、間の取り方がピッタリ合わさった。とりあえずリーシャはともかく、リュックを垂らし込むとかいう一部の人種が腐りそうな状況は勘弁してくれ。

というか、今更かよ。何か文句ある奴は空母に乗るなって、あれほど言ったじゃないか。


それを思い出したこともある上に、自分・ハク・エルフ兄妹・ヴォルグ・ディムースの5人と一匹が「コイツ何言ってんだ」的な眼差しを向けている。モリゾーは表情が見えないけど、きっと凄い顔してるに違いない。無言だったコイツが一番恐ろしいけど、内心どう思っているのやら。

そんでもって、ハクのジト目が素晴らしい。と思ったけどアカン、ハイライト消えてるコレ殺意みなぎってる、殺気を出さないのは偉いけど抑えろ抑えろ。



「……おい小僧。思い上がりの発言1つで、仲間の全てが消えることになる可能性を理解しているか?」

「ハッ、全て捻じ伏せれば済む話だ!ナメるなよ人間!」



アッカーン、マクミラン先生いけません、彼はハイエルフなので恐らく年上です!

え、そんな問題じゃない?あっはい、黙ってます。


他のメンツも任務外だからか冷静さ/zeroのようで、タスクフォース全員がキレちまってるよ……。

そして、なんで君はこの殺気向けられた上で更に煽るんですかね。目の前のモリゾーさん御一行は数万の現代兵器軍隊を壊滅させるような小隊ですよ?無知って怖いなぁ。



「それでいてリーシャを奴隷にするなどふべらっ!?」



と思っていたら、彼の後ろから足払い炸裂。顔面から突っ伏して、速攻でマウントが組みあがった。しかし、リーシャが奴隷?誰一人として、奴隷の契約を結んだ覚えは無いんだけどね。

あれか?片思い中で取られて悔しい的なやつか?だったら肩でも組んで煽ったろー、と思ったけど既婚者がやっちゃイカンな、反省。一夫多妻がOKなのか知らんが、ツマラン理由でハクの機嫌は損ねたくない。


一度目を閉じ、半目で一同を横目で見ると、一斉に始まる土下座ラッシュ。正直、ここ十数秒で起こった内容が無秩序すぎて、誰にどんな言葉投げれば良いかわかんねぇよ……。


大人ハイエルフは連帯責任ということでどうでも良いが、空気を読んだお子様御一行の土下座は見ていて辛い。全員顔上げなさい、そして立ちなさい。



「何しやがんだ親父!コイツ程度俺が軽く「黙れ貴様ァ!!」ふべらっ!?」

「「「総帥様ァ、申し訳ございません!!」」」

「う、うん、一人ぐらいは、そういうやつもいるよね。罵倒対象は自分のことだし、強ち間違ってないから別に怒らないよ。ただまぁ、受け取り方は人それぞれだから注意は」

「ならば小僧、一度でも総帥に拳を当ててみろ。それすらできぬならば、金輪際口を開くな。」

「なんでさ……。」



マクミラン先生、受け取り方(物理)ですか、そうですか。なんで周りは賛同してるんですかね、わたくし8492最弱なんですけれど?当たっちゃっても知らないよ?



「マスター、案ずることはございません。防御や回避面においては、私が無事を保証致します。」



そんでもって、まさかの相棒にお墨付きを頂きました。推定超エース級に言われては、何も言い返せない。

この状況は、自分が引いたら全体の士気に直結するパターンですね……とりあえず、本気でやってみますか。



マクミランの合図で、いざスタート!

相手は一足飛びで間合いに入ってきて、右ストレート。続いてその右手を払い裏拳で……



……あれ?随分と余裕があるな。

スローモーションってわけじゃないが、相手の動きがクッキリ見える。拳がこれから通るであるだろう、軌道が予測できる。相手が繰り出そうとしている、次の一手が読める。なんだこれ。新手のプロモーションムービーか?



「……総帥、余裕綽々ですね。」

「総帥様、全く力が入っていないように見受けられますが……。」

「だってハクと比べると、ねぇ……。」

「当然です、マスター。」

「余所見してんじゃねぇぞ!!」



相手の攻撃を受け流しながら、ディムースやリーシャからの質問に受け答えする余裕もある。防戦一方で撃ち返す余裕は無いが、自分のことながら、随分と器用なことをやっているなと実感する。

相手さんは気合が入りすぎと言うか力みすぎというか、無駄な動きがとても多い。最初の頃の自分もこんな感じだったんだろうなと思いを巡らせながら、ヒョイヒョイと拳のラインから体をずらしていく。



「―――!」



ん?なんかボソボソと口にした―――って手から炎!?

魔法ってやつか、コレ大丈夫なのか!?自分には効かないけど、草木は燃え―――



「SUGEEEEEEE!!」

「うおおおおおマジかよ!アレ魔法ってやつか!?」

「ホントに何も無いところから炎が出てきたぞ!」

「ハハッ、手品みてぇだ!」



「……は?」



……と心配したのもつかぬ間、若者エルフが豆鉄砲を食らったように固まり、疑問符を発する。その後は石造のように動くことが無く、テンションマックスである8492の隊員を見つめている。豆鉄砲を食らったのは残りのエルフ一同も同様であり、「なんでこいつら騒いでんだ」と言いたげだ。

おかげさまで、決闘と呼べる雰囲気ではなくなってしまったわけなのだが。元々自分としてもやる気が無かったし、その空気を察したであろう近づいてきたハクに話を振ってしまおう。



「あー、魔法を見て、はしゃいじゃってるみたいだね。ハク、あの魔法ってどうなの?」

「えーっと……、そういえば、8492の方々は魔法をお使いになりませんでしたね。炎属性の基礎攻撃です。魔法は初心者のようですが流石ハイエルフ、威力は並と言ったところですね。」



その言葉で、若者の顔が赤く染まる。勢いよく突っかかっていったのに、駆け出しであることを看破されてしまったから恥ずかしいだろうな。あと、そのわりに8492隊員の視線が集中してしまっていることも拍車をかけているようだ。

一方他の観戦組みハイエルフ達は、「え、魔法使わないの?じゃぁあの乗り物は?」的な雰囲気になっている。一生懸命説明するリュックとリーシャだが、兄妹もまだ知識は乏しいし、受け入れられるまでには時間がかかりそうだ。


戦闘続行っていう雰囲気でもなくなり、自然とハクと会話が始まってしまう。興味本位もあるし、質問してみよう。



「今のが基礎なら、上級とか大魔法って存在するのかな。」

「ヴォルグ達ならば、上級魔法を使えるのではありませんか?」

「あ、なるほど。ところでハクは?」

「わ、私はホワイトドラゴンなので、使える上級は、回復系や聖魔法です。」

「誰でも使えるってワケじゃーないのね。」



どうやら、回復系と攻撃系は住み分けがあるらしい。ハク自身も基礎的なものなら使えるらしいが、上級魔法となると土俵が違うようだ。自分達からすれば魔法は魔法なので、あまり違いを意識していないのだろう。

ん?どうしたヴォルグ、何か言いたげだけど。



「恐らくですが……ハク様の基礎魔法、上級魔法の域に達していませんか?」

「そ、そんなことありませんよ。」

「怪しい……。」

「ヴォルグゥ?」

「ヒッ!」

「何を使いまわしの漫才やってんだ……。ともかくヴォルグ、こんな雰囲気だし、なんか1個派手なの見せてみてよ。」

「え、えーっと……それでは主様、このようなのは如何でしょう。上級魔法の中でも、最上位に匹敵します。」



そう発言したヴォルグが右前足を軽く捻ると、前方の一帯に大規模な氷柱が出現した。徐々に出現したというわけではなく、瞬いた一瞬で、だ。本当に氷でできているようで、範囲内の草木は凍り付いており一帯の体感温度が一気に下がる。力強さの割りに美しい魔法に、思わず自分も唸ってしまった。

動画や画像でよく見る雪と氷の混じった自然の景色とは違い、一帯には氷しか存在していない。人工的に生成したと言っても過言ではない景色は、なぜだか見ているだけでワクワクしてくる。



「「「「「おおおおおおお!!!」」」」」

「やべえ!ハンパねぇ!!」

「すっげーなぁ……。」



そして更にテンションの上がる、魔法なんぞ微塵も使えない兵士達。一方のハイエルフ一同は魔法の威力の高さに驚いているのか、半分以上の口が開いている。まるでカカシですな。

8492の隊員は携帯端末を取り出し、記念写真を撮り出す有様だ。仕舞いには偵察ヘリまで持ち出してきて、空から観光している。自分もちょっと見てみたいぞ、天気も良いし綺麗だろうな。



「ビューティフォー...」



そして噛み締める、例の人。ヴォルグ一家を溺愛してるし、尚更のこと感動している模様です。みんな、表現方法が自由で良いですね。

ところで、ハクの聖魔法って、どんなものなんだろう。火とか水、雷ならある程度は想像がつくけれど、この属性は想像できないな。



「ささ、次はハク様ですよ。」

「えっ!?」



と思っていたら、ヴォルグが良いタイミングで話を振ってくれた。ナァィス。



「是非一発、特大の聖魔法を!」

「ヴォルグの魔法で十分でしょう!」

「ハク様。主様も、期待されていると思いますよ。」

「あ、それ正解。」

「参ります。」



魔法を出し渋っていたけれど、チョロかわ。

と思った瞬間、何かの言葉をボソボソっと呟いた。そして瞬くと、眼前の景色が一転する。現れた光景に対する感想は、1つだ。



「……スゲェ、としか言えん。」



海上の風景に記されたのは、御来光と言わんばかりの光と雲の演出だ。その景色を見て、誰一人として言葉を発さない。

それにしたって……古代神龍と言われる所以か知らないけど、神々し過ぎませんかね。何か神聖なものを召喚しそうな雰囲気だぞ。



「……流石ハク様、これは凄まじい聖属性の上級魔法だ。S級のアンデッド属性が相手だとしても、見ただけで消し飛びますよ。」



そうコメントするのは、先ほど大氷河を見せてくれたヴォルグ君。そう言えばハクはホワイトドラゴンであり聖属性、本来ならば後衛が適任なのだろう。自分の前ではいつも剣を使っていたせいか、正直なところ実感が全く無いのが申し訳ない。



……あれ。そういえば、ハクが本気で戦っているところって見たことが無いな。自分とかマクミランを相手にして居る時は、M2機銃を弾いていた時のような俊敏さは無いし、双剣の片側しか使っていない。

M2の時は両手持ちっぽい方の剣だったし、たぶん本気の時は、そっちなんだろうな。


ハクの全力を見てみたい気持ちもあるし、そんな状況は危険だろうから起こしたくないという気持ちもある。難しいね。



なお、問題のハイエルフ君は戦意喪失し、コッテリと絞られたらしい。身内の問題は身内で解決、良い事だ。

最近ポンコツ成分が溜まっていたハクでしたが、少しは見返せた回でした。

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