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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第4章 おいでよ!第二拠点の森
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6話 洋上の箱庭

【視点:リーシャ】

無事に総帥様と合流でき、私たちは船と呼ばれる乗り物に乗って、海の上を進んでいる。

船と呼ばれる乗り物は知っていた。とはいえ、海に浮かぶ箱という程度だったし、見たことも無ければ、もちろん乗ったことは無い。それが、ハイエルフ全員に共通する事象ということは知っている。



「……こうして乗ってみても、本当に大きいってのが分かるな。」

「ええ……。一度基地で見て大きいのは知っていたけれど、この大きさは、予想外だわ。」



それでも、迎えに来た船、特に中央の船の大きさが桁外れだということは理解できた。これもまた、ハイエルフ全員に共通している認識でしょう。

私たちが隠れていた長年の変化が原因で、今の人間からすれば、あの大きさは普通なのかもしれない。それでも、私たちの知識からすれば、桁違いという言葉が相応しい。


冬が近いためやや荒れた海原に、まさしく鎮座していた、文字通り灰色の島。

強めの波を受けているにもかかわらず、まるで微動だにしていない。そういった意味でも、船と言われなければ島にしか見えないでしょう。



そんな島の中は、自然の要素など一切無いが、快適そのものだ。寒くもなければ暑くもなく、海の上に居るという感覚は無い。もっとも窓が無いので、洋上なのか地上なのか、昼なのか夜なのかすら不明だ。


まず私たちは、森の中で着いた汚れを取るために、男女の組みに分けられた。こちらは女性隊員が応対してくれるようで、このあたりの気遣いは嬉しい。たぶん、総帥様の指示でしょう。

海まで下りて汚れを洗い流すのかと思ったけれど、違うのかしら。無言の移動というのも辛いものがあるので、思い切って聞いてみましょう。



「えっ?暖かい水が出る、人工的な湯汲み場?そんなものがあるわけ……無い……ええっ……。」



そんな話をしている間に、現場到着。また1つ、私たちの常識が崩れ去った。驚きのあまり横を見るも、他の皆も口が開いている。

湯汲み場と言うよりは流水が出る施設だけれど、確かに流れている水は暖かい。冬だというのに、有り得ないことだわ。


シャンプーとリンスというなの洗浄液の使い方も学んだが、この2つは革命的な代物だと思う。魔法を使っていないと言うのだから、余計に凄い。人間だろうと亜人だろうと、女性ならば必須のアイテムだ。

一度の使用で普段とは違うことが一目瞭然であるため、自然と女々しい会話が始まってしまう。隠れ里に居た頃はほとんどなかった会話内容だけに、今更だけれど新鮮さを感じてしまった。



そんなことをやっていたら随分と時間が経っていたようで、女性隊員の声で全員が部屋を出た。シャワールーム、と言うらしい狭い部屋。覚えておきましょう、女の生命線です。



「あれっ?」



服の違和感に気づいたと思ったら、全員が同じのようだ。違和感も同様で、汚れやシワの類が明らかに無くなっている。

不思議に思って着てみるも、やはり肌触りが凄く良い。一体、なぜ?



「えっ、あの短時間で洗浄と乾燥を!?」

「簡易洗浄ですけどね。それでも、肌に当たる感覚は改善されたと思いますよ。」



ええ、仰るとおり!って、その前に、ありがとうございます。

水浴び前と比較したら、新品と言われても不思議じゃない。これで簡易洗浄なのだから、本格的にやるとどうなるのか……彼女達ならば、破れすら修繕してしまいかねませんね。


えっ、可能!?


……魔法にしか、聞こえない。


その時鳴り響く、ジリジリという甲高い音。タイセンセントウという言葉と共に各隊員と思わしき人物が駆け出し、緊迫した空気に包まれた。

私たちは安全のためにと一か所に集められ……理屈はわからないけど、空から見たモノが眼前に映し出されている。映像と言うらしいが、これもまた魔法にしか見えない。


どうやら海の魔物が接近していたらしく、呆気なく撃退完了。思わず拍手が沸き上がった。

さて、次はどんな驚きが……あっ、食事ですか。わかりました、ご案内お願いします。



=======



食堂、と呼ばれたこの部屋も天井は低く、自然の情景は一切無い。文字通り、ただ物を食べるための部屋、との言葉が適切でしょう。

席は自由とのことで、指示された区画に全員が着席した。すると、手際よく、料理が載っていると思われる皿の数々が運ばれてくる。


総帥様から説明があったけれど、運ばれてきたのは、パンと野菜、スープの3品。祝い事の時の様な豪華さで、思わず頬が緩んでしまう。


……あとで果物も出てくる、ですって?

どこかの貴族の晩餐会でしょうか。



しかしながら、パンと呼ばれた食材には違和感がある。縁は見覚えのある茶色だが、それ以外は白い。パンと言うのは食べ慣れた物で見慣れた物だと思っていたが、作り方次第で、あれほど綺麗なものになるのでしょうか。

野菜の上に少量載っているのは、ササミという肉らしい。総帥様が仰るには、脂肪分がほとんど無いので自分達ハイエルフでも問題なく食せるはずだけれど、受け付けなければ残しても問題ないとのことだ。


以前の鴨肉より食べやすいとのことで、どんな食感なのかと期待してしうまう。その下にある野菜も見ただけで新鮮さが分かるほどで、食欲が刺激される。その横にある黄色の飲み物と果物らしき盛り合わせは、視覚的な意味で新鮮だわ。

今までは食事と言えば摂取程度の感覚だったけれど、前回の料理を食べてからは、楽しみと思えるようになってしまった。物を食べて、おいしい、と感じたのは久しぶり。



集団の後ろから現れて料理を見ているのは……確か、ディムースさんだ。輸送時に、何度か指示を出していたところを見たことがある。恐らく偉い人なのだろう。



「……蒸したササミが載った普通のサラダ、コーンスープに果物盛り合わせ。これにトーストだろ?朝飯みたいじゃないか、随分アッサリしてんなー炊飯長。」

「献立は総帥のお考えだ、文句あんのかディムース。」

「ってアルファ2-1が言ってた。」

「ちょっ!?」



物足りなかったのだろうけれど、この内容は総帥様立案ということを聞いて、このような結果に収めてしまったのでしょう。思わず軽く頬が歪んでしまう、陽気なやり取りだ。


アルファツーワンと呼ばれた隊員が、ディムースさんに詰め寄っている。一切言葉は発さないが、「どういうことか」と意見したい表情と顔の動きだ。口を尖らせ、絶対に視線を合わさないディムースさんが面白い。

それをご覧になっていた総帥様も苦笑してらっしゃる。あら、何か発言されるのかしら。



「そう言うと思って、肉に慣れてる奴等にはオプションメニューを用意してあるよ。炊飯長、出しちゃって。」

「ハッ。」

「「「「「イイイイイヤッフゥゥゥゥゥ!!」」」」」



エンシェント様から「推察能力が凄まじい」と聞いていた総帥様だが、本当なのでしょう。オプションメニューというものが何かは分からないけれど、救済処置的なものだと思う。

殺伐とした雰囲気も一つの発言で解消され、何が出てくるのかと、8492の皆様も楽しみな様子を見せていらっしゃる。


そう思っていると、大皿が運ばれてきた。なんでしょう?


目玉焼きとベーコン、レタスにスライストマト。そんな言葉が聞こえてくる。どうやら料理ではなく、具材の類が運ばれてきたようですね。レタスだけは理解できます。

それを見た8492の皆様はヒャッホーと士気が上がっており、ハク様も軽く表情が緩んでいる。全く予想もつかないが、この具材を使う料理をご存知と言うことでしょうか。


どうやらそのようで、8492の皆様から「どうぞどうぞ」と先手を受けたハク様が、パンを手に持たれた。



……ちょっと待って。あのパン、今、白い部分が沈み込まなかった?



えっ、もしかして、私たち用の、このパンも……。



「や、やわらかい……それでいて、小麦の香りと味が凄い……」



既に食べていた兄さんが、目を見開いていた。それを切欠に私も含めた全員が口に含んだけれど、感想は皆同じ。これならば、仕事疲れの状態でも気軽に食せる。

聞こえてくる会話を聞くに、どうやらお肉を食べ慣れている方々の具材は、おなかに溜まるもののようだ。具材をパンで挟んで齧り付く、という上品さの欠片も無い食事方法だが、皆さん、本当においしそうに食べていらっしゃる。



「上品な風味にしたい奴は、この香辛料を軽く一つまみかけて食べてね。」



そう仰る総帥様の手元には、小皿が置かれている。仰ったとおりに香辛料が入れられており、何かの葉を細かく切ったようなものだ。

さっそく、お隣の方が軽く振りかけて食されている。確か先ほど、炊飯長と呼ばれていた人だ。



「あれ。総帥、この香辛料、もしかしてオリジナルの新作ですか?」

「おっ流石だ、よく気づいたな。実は、ハイエルフに貰ったハーブの類を少し使ってるんだ。」

「マスター、是非私も頂きたく。」

「ほい、かけすぎない様にね。」

「おお、そうでしたか。味覚に害がなく、ほんのり森の木々が感じられる良いハーブです。バランスが絶妙ですね。」

「総帥様。宜しければ、どのハーブを御使用になったのでしょう?私も、この香りは存じておりません。」



そう問いかけたのは、ハーブを育てている女性だ。恐らく彼女が、総帥様に渡したのだろう。

とはいえ、どうやったらこのようになるのかが分からないのは、全員の心境でしょう。私も、聞いておかねば。



「えーっと、一番色の濃いやつだね。素手で触らなきゃいけない、って注意を受けた奴だ。どれをどう使うか悩んだんだけれど、これぐらいに刻んだ上で数秒だけ火に通したら、良い香りがしてさ。」

「ハーブを火に、ですか。思っても見ませんでした。」

「料理ってのは、奥が深いからねぇ。実際に使われる引き出しの数なんて、天井知らずだ。そこの炊飯長に比べれば、自分なんて駆け出しだよ。」

「お言葉ですが総帥、私の戦場では負けませんよ。」

「はは、頼もしい言葉だ。ハイエルフ達からいくつか香辛料をもらってるから、また何か考えてみてくれ。定着できれば、ハーブといえど立派な生産業務になる。」

「燻製などにも応用できるでしょう、お任せください。」



そして、しっかりと私たちの今後を考えてくださっている総帥様。単に連れられて来て「あとは頑張って」と捨てられるのかと思っていたけれど、そうではないらしい。肩の荷が下りたのはリガルさんも同じようで、互いに表情が軽く緩んだ。

とはいえ逆を言えば、私たちはしっかりと、第二拠点のために働かなければならない。最低でも、総帥様に迷惑をかけないよう、気を引き締めなければ。



でも久々におなか一杯食べたせいか、眠気が……。

な、なんとか仮眠室まで……スヤァ……。

満腹で眠りにつく幸せ( ˘ω˘)スヤァ

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