4話 吹き飛ばせ常識
【視点:ホーク】
《至急、フォード1-CICより総帥。》
じゃぁ乗り込もう。となったタイミングで、フォード1の司令室から無線が飛んでくる。タスクフォース000の皆やハク達にも同じ内容が伝達されているため、戦闘と判断したのか気配が強くなった。
さて、一体なんだろうか。
《こちらホーク、どうかした?》
《上空のビッグアイ3より緊急入電です。そちらから方位2-9-0、距離50km地点にハイエルフの集落を発見。人数は現在確認できている限りですが、17とのことです。》
えっ、まじで?ここから50kmって、めっちゃ近いじゃん。灯台元暗しとは、まさにこのことだ。これは是非とも、一緒に連れて帰りたい。それにしても予想外の内容だ。
しかしながら、新たな集落のハイエルフは自分達と住むことを良しとするだろうか。リュックやリーシャ達も決定に時間がかかったし、直ぐにとはならないかもしれない。とりあえず、族長に聞いてみよう。同じハイエルフだし、何かしら意見が出てくることだろう。
えーっとリガルはどこかな、パっと見で見分けが付かん……みんな見た目が若すぎるんだよ。あ、いたいた。
「リガル、ちょっといいかな。」
「はい、何でしょう?」
そして、状況を説明する。リガルを含めハイエルフ全員が驚いた表情をしていた、8492の隊員もビックリしている。とりあえず隊員は荷積み続行ということで、作業を続けてもらう。こっちは新発見のハイエルフをどうするか、リガル達と相談だ。
まずはじめに、敵意が無いアピールをしながら対話まで持っていく必要がある。リガル達の時はエンシェントが仲介役だったために関係なかったが、最初にして一番ハードルの高い内容だ。
一応彼とも2~3時間後に合流予定ではあるけれど、該当者達との対話は進めておきたいな。
「リガル達と一緒に行っても、警戒されるよねー……。」
「そうですね……自分で言うのもなんですがハイエルフは警戒心も自尊心も高いので、難しいと思います。」
……返答に困る文言だな、確かに自分で言うもんじゃないよね。でもそれが事実だろうし、なかなか難しいな。
「ですが我々と同じく、このままでは後が無い状況であることには違いないと思います。可能でしたら、共に暮らしたいところではあるのですが……。」
まぁ、そうだよね。数的にもリガル達の半分だし、状況としてはリガル達より厳しいことになる。
とりあえず接触してみて、無理に誘わないという方向で合意を得た。無理に連れてきても良い事なんてないし、内部で反乱でも起こされたら面倒だからね。
発見された位置を地図上で確認すると、そこまで森の中ということもない。徒歩よりは、海岸線から近づいた方が早いかな。
上陸地点をトージョーに伝え、艦隊進路を決定してもらう。あとは、ハイエルフたちに接近する方法だが……
「総帥様、どのように近づくお考えでしょうか。」
「うーん、そうだねぇ……。あ、そうだ全員で行こう。」
リュックに聞かれた質問に自分が行った返答で、全員の表情が、ポカン。数秒間、会話がなくなってしまった。
パッと思いついた方法だけど、結構いいと思うんだけどな。
「えっと……マスター、今この場に居る全員で向かうのでしょうか?」
「主様。ハイエルフにとって人族は軽蔑の対象ですし、我々フェンリル王が向かっては全力で逃げられるかと思いますが。」
「あー、うん。それぞれだけ見ると、そんな反応になるから―――」
ここで、考えていることを仲間やハイエルフたちに伝達。さっきも言ったけど、向こうとは集団として接するんだよ。
自分の言葉が進むにつれてハイエルフ達の大人の顔は軽く青くなり、子供たちは逆に、おもいっきりテンションが上がっている。あらかわいい。
「流石ですマスター、成功すると確信しております。」
「よ、よよよろしいのでしょうか!!?」
「主様、我々は構いません。難事を成すには、まさに妙案です。」
「ってコトだからさリガル。実践だぞ、いいね?」
「ハッ、ははハイッ!」
族長はテンパっており、親たちと共に主役の子供たちに色々と言い聞かせている。子供は子供で好奇心を刺激されたのか目をキラキラさせており、大人たちの表情とは正反対だ。
まぁたぶん、ファーストコンタクトは成功する……と思うよ、この方法。ガチガチの警戒心を解くってのは至難の業だから、吹き飛ばすしかないんだよね。
===かくかくしかじか====
で、そんなこんなで無事接岸。相変わらず完璧すぎるビッグアイの誘導を得て、自分たちは目標エリアの目の前に到達した。
気配を隠すこともなく、歩みとしてもゆっくりだ。途中で存在が気付かれたらしく、どうやら向こうは待ち構えているらしい。頑張って隠れているらしいけど、残念ながら筒抜けなんだよね。
この先に少しだけ視界が開けたエリアがあるのだが、自分達がそこに出てくるのを待っているらしい。こちらとしても丁度いいので、その地点に当たるよう進路を調節する。
作戦の都合上、向こうから先に姿を見せてもらわなければならないので、ここからは人数調整だ。まず初めに自分とリガルが、先に開けたエリアに足を踏み入れる。そろそろ現れるだろう向こうが姿を見せた直後、後続の皆が出現する段取りだ。
「この先に何用だ!動くなァっァアッ↑!?」
女性のハイエルフが予想通りに出てきたけれど……ずいぶんと語尾の上がった驚きようですね。
落としてますよ、弓矢。足に刺さってないよな?大丈夫だよね?
自分を抑えるために飛び出してきた、数人のハイエルフ。しかし同時に自分の後ろから出てきた行列を見た彼女等一同は、全員がポカーンとしている。文字通り、思考停止と言ったような表情だ。ただの案山子ですな。
おい誰だ百鬼夜行って言ったやつ。ヴォルグ一家は魔物だから百歩譲ってそうだとしても、ハクとハイエルフ一行は違うだろ。
とはいっても、そんな表情になってしまうのも納得だし、そもそもにおいてソレが狙いだ。ちなみに彼女等の目の前に出てきた集団の構成は、同胞のハイエルフ・憎むべき人間達・竜人・フェンリル王だ。
ハイエルフともなると、それぞれの種族の識別は瞬時に行えることは知っている。ハクが古代神龍であることも筒抜けらしいし、横に居る白いワンコがフェンリル王であることも看破できるようだ。問題は、それぞれの種族がどのようにしているかである。
同族と並んで歩く憎むべき人間達しかもワケのワカラン服装、その横に寄り添い立つ古代神龍カワイイ。そして、更に横に並ぶ恐るべきフェンリル王……に跨りジャレ合う、ハイエルフ族の子供数名。
うん、状況作成者の自分が見てもカオスだわ。この世界基準だと色々と常識がぶっ飛んでいる光景だろうし、思考停止しちゃうのも無理ないね。
ヴォルグ一家も何だかんだでハイエルフの子供を気に入ったらしく、結構本気でジャレている。間違っても力を入れるなよ、取り返しつかないからな。
ともかく、これで開幕ドンパチという最悪な状況は回避できた。自分達部外者がヴォルグ一家、ハイエルフの子供と戯れている間に、リガル族長が向こうのハイエルフに接近している。
戯れの中に、子供の親と第一歩兵師団の数人も混じってきて、こっちは完全に和やかムードとなっている。向こうのハイエルフ達は、そんな自分達を何度も横目で確認していた。ちゃんと話し聞いてる?あ、言葉投げられてビクついてる、聞いてねぇな。
リガルの話は数分で片付いたようで、こちらに戻ってくる。初対面の集団は森の向こうに消えていったが、リガルの話を聞くに、向こうの集団の族長を呼びに行ったらしい。
エルフといえば弓ということで飛び道具警戒のため、強化プラスチック製のライオットシールドを構える部隊を左右に配備。最低でも、移住が決定しているハイエルフ一行は守らなければならない。
《ビッグアイ3より総帥、10人ほどのグループがそちらに接近しております。》
陣形だけ整えていると、ビッグアイから連絡が入る。情報では武器の類は未所持であり、伏兵らしき姿もないらしい。一応は、一触即発と言う状況でもないようだ。
そのため気軽に構えていると、10人ほどの集団が姿を現す。こちらも例によって、全員が若作りのイケメン美女ばかりだ。真ん中を歩いている人物の左右に戦闘兵らしき姿が見えるが、武器や盾を見るにリガルの集団よりも製作技術が低い。あれでは、中型動物を相手するのが限度だろう。
向こうが近づくにつれて、リガルも前に歩みを進めた。そのタイミングで向こうも族長と思わしき人物以外の足が止まり、自然と二人で向き合うこととなる。この距離では何を話しているかは聞き取れないが、こちらが干渉するような場面でもない。あくまで同族同士で、今後の行方を相談してほしい。
男二人の会話を立ち見していても暇なので、ヴォルグと子供ハイエルフの輪に加わる。一部活発な子が8492の隊員と力比べをしていたり、コミュニケーション量は多い。ハクも子供たちに対して穏やかに接しており、団らんとした雰囲気だ。
そんな和気藹々とした現場を見ていた向こうの子供も、輪に入りたそうな目でこちらを見ている。こちらとしてはウェルカムだが、向こうの親が許可を出さないだろうな……ガッチリ、ホールドしているし。
「ホーク殿……でしたな。少し、お話を聞かせて頂きたい。」
苦笑していると、向こうのリーダーと思わしき人がリガルと共にやって来た。話を聞くに、どうやらリガル達の件もある上に内容としても是非というのだが、やはり実際に確認していないため確信が持てないところがあるらしい。当然ですね。
なので、そこは対策を打ってある、時間的に、そろそろだと思うんだけれど……。
「その点については、オッサンに協力を要請しておいた。」
「オッサン?」
《フォード1-CICより総帥。エンシェントドラゴンがそちらに接近しております、到着まで残り2分。》
誰のことだ?とリガルが首をかしげたタイミングで、無線にて連絡が入った。やってきたのは、そもそもこの話を持ち出したエンシェントである。
そのことを話すと、向こうの全員が慌てふためいていた。最初に仲介役をやっていたのでオッサンの名は知られていると思っていたけど、やっぱりこういう場面で使えるんだね。
礼を言うならエンシェントに言ってくれと族長の頭を上げている間に、当の本人が飛行してやってくる。しかし周囲は森で着陸地点がないけど、一体どうするのかな―――
と思っていたら50mほど上空で人型になり、シュタッと太い木の枝→地面に着地した。その年のくせしてかなり身軽ですね、ビックリだよ。
「アイタタタ……この年で格好付けるものではないのぉ……。」
強がりかーい。
百鬼夜行との表現がありますが、この小説のような世界の人がフル装備の現代兵士を見たら妖怪に見えるでしょうね…。




