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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第3章 軍の主
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2話 興味と認識

【視点:3人称】

そば茶のやりとりと追加の書類を処理していた影響で、二人はいつもより少し遅れてしまい、40分ほど遅く食堂に到着する。食堂の入り口で『伏せ』の体勢をしながら待っていたのは、ホークの配下……と言う名の仲間になった、フェンリル王のヴォルグ一家だ。

食堂を出入りする隊員、特に女性隊員とモリゾーに可愛がられており、すっかりマスコット的な立ち居地になっている。本人たちも満更ではないらしく、スキンシップは素直に受け入れていた。


その最中でも、彼が来た場合は話が別。ホークとハクが近づくと、一家は立ち上がり出迎える。



「おはようヴォルグ、ハクレン、ハティ、スコル。律儀に待たなくても、先に食ってて問題ないぞ。」

「おはようございます主様。ですが、そういうわけには参りません。」

「ご子息は待ちきれない様子だけど?」

「食欲の刺激に対する忍耐もまた、重要です。」

「じゃぁお手本ってことで、ヴォルグは4時間ぐらい待ってみようか?」

「なんでさ……。」



突然の理不尽に対して真顔になるヴォルグをよそ目に、ホークは「さぁ食べるぞー」と言いながら、食事ということでテンションのあがったハティ、スコルを連れて食堂に入った。2匹はヴォルグの息子兄弟であり未だ子供であるものの、第二拠点に来てからは、徐々に身体が大きくなっていた。

食堂の一角に彼等用のスペースがあり、そこで待機してもらって食事と言う流れになっている。配膳は兵士の仕事だ。魚だったり肉+野菜だったり、意外とバリエーションがある。


野生では肉ばかり食べていた彼らは毎日3食全て異なる献立が出てくることに驚いていたが、今となっては日々最も楽しみな1つとして定着してしまっている。当初の味付けには問答があったものの、そこは調理班もエース級。すぐにコツをマスターし、今現在は全く問題になっていない。野菜や巨大な肉をそのまま焼くなど、「ワイルドだぜ~的な調理ができる」と、むしろ楽しそうにしているぐらいだ。


今日の朝食は「骨付き肉とキャベツと人参の野菜炒め」のようで、4匹全員が被り付いていた。被りつくと言っても動作は穏やかで、ハクレンの指示により、床を汚さないよう丁寧に食べている。ホークとハクもそれを見ると、「いただきます」と食事に入った。



========



「ん?空軍の演習が見たい?」

「はい、今朝方の話しついでで申し訳ありません。実際に戦っているところをこの目で見たいのです。」



朝食後にホークがお茶を啜っていた時、突然とハクから要望が挙がった。内容としてはシンプルであり、モニタ越しならばある程度の映像を見せることもできるが、ホークが話を聞くと、彼女の希望しているのは実際の戦闘である。危険もあるし難しい内容だ。


I.S.A.F.8492における空軍の演習は、信管を抜いてはいるものの実際にミサイルが発射される。AoA時代にホークが開発者インタビューに答えた際も「冗談にしか聞こえない」と言われたことがあるのだが、8492の準エース級、つまり9割以上がミサイルを限界機動で『避ける』ので、シーカーで撃墜判定だけ出していても役に立たずに演習内容が薄くなってしまうのだ。

もちろんミサイル発射が許可されているのは、特定の隊員が相手になった時に限った話である。具体的に言えば、超エース級の連中が相手である時だ。その称号を持っている連中が相手ならばエース級がミサイルを撃ってもまず当たらない上に、今まで事故が起こったことも無い。実際に命中したところで機体はAoA仕様のため、累積ダメージが通り出力が低下するものの、余程のことが無ければ機体そのものは破壊されない。そのため、安全と言えば安全だ。



「運がいいね。今日はこのあと超エース級の連中が空に上がるから、最上級一歩手前の空対空戦闘が見られるよ。」

「っ、本当ですか!?可能でしたら、是非!」

「まぁ、オマケ程度に自分も居るんだけどね……。」

「えっ、マスターも対象なのですか?」

「そうなんだよ聞いてくれよー。あんな化け物の中に、か弱い小動物が一匹放り込まれるんだぜー?」



椅子に寄りかかって頭の後ろで手を組むホークは、まるでテスト前の中学生のような愚痴を言っている。彼女はお茶を啜りながら、にこやかに聞いている状況だ。

演習の件に関しては、総帥といえど戦闘機に乗る可能性がある以上、ベテランによる定期的な試験は必須なのだ。今朝方ホークが見た書類に含まれていたのだが、今日は超エース級のガルーダ隊、イエロー中隊、そして準エース級のホークが教育対象と言うことで、空に上がることになっている。ガルーダ隊やイエロー飛行中隊クラスを教育できるとなると8492空軍内部でも4人しか居ないのだが、誰にせよ、超ハイレベルなドッグファイトになることは確定と言っても良いだろう。



「主様、己の腕を磨く絶好の機会ではありませんか。そこまで毛嫌いされなくても宜しいのでは?」

「じゃぁさヴォルグ。ハクに匹敵する奴9人の中に混じって演習ヤレってなったら、どうするよ。」

「無理です無理です全力で辞退します。」

「だろ?」

「ヴォールーグゥー?」

「ヒッ。」



今回の演習を失礼な言葉で表すと、ホーク程度のプレイヤーが参加したところで、お荷物にしかならないような戦闘だ。規格外の速度と戦闘機動でもって、ホークの背後は一瞬にして取られてしまう。同じドッグファイトでも、次元が全く違うことが行われているのだ。

もちろんホークも自分の立場は理解しているうえに、その説明を行うも、彼女は「それでも」と引き下がらない。可能ならば彼女の要望には答えてあげたいため、観戦の許可を出した。



「わかった、許可を出すよ。ただし条件付だ。今回の演習は、佐渡島(仮名)からの緊急発進する演習なんだ。かなり過激な戦闘機動を行うから、乗員にかかる負荷も大きい。佐渡島(仮名)に向かうまでに飛行テストをして、耐えられたら演習も同乗可能ということで良いかな?」

「ありがとうございますマスター。注意事項に関しては承知しました。」

「あと、今回参加する部隊の1つが英語って言語を話すんだけど、たぶん理解できないと思うから……一応状況は説明するつもりだけど集中すると怠っちゃうかもしれないし、その時は許してね。」

「英語、ですか。承知しました、問題ございません。」

「今回の演習は自分とガルーダ隊とイエロー飛行中隊の教育訓練。この3編隊に対して、超エース級の誰かが相手になるんだ。佐渡島(仮名)から真北に伸ばした線上にあるポイントを守る戦いだね。」



教育対象となっている3部隊が知っている情報は、ここまでである。ホークとはいえ、教育対象である以上、全ての演習内容が伝えられることはない。立案者が安全マージンを理解している点が1つと、ホークもそれを信用しきっているからこそ、あえて問うことをしないのだ。

実際のところは、北と南より挟撃を仕掛けてくる仮想敵から指定拠点を防衛するミッションであるのだが、仮想敵の中身が誰なのか、どの機体を使うのかは誰も知らない。一体誰が上がってくるのかとホークも頭を捻るが、間違いなく苦戦、もとより確実に撃墜されるだろうと苦笑した。



「じゃぁこのあと、基地2階の事務室へ行って欲しい。連絡を入れておく、必要事項を済ませて格納庫まで来てくれ。いくつかたらい回しにされるけど、次の場所は、その都度隊員が教えてくれるよ。」

「承知しました。」

「主様主様、自分達は??」



「何か役に立ちたい」と言いたげに尾っぽをパタパタとさせているヴォルグの息子の頭を撫で、ホークが質問に答えた。



「ヴォルグ達は、東の山の偵察をお願いできるかな?ほとんど禿山で何も居ないらしいけど、万が一の場合の交戦判断は任せるよ。」

「承知しました、お任せください。」

「頑張ります!」

「あ、そうだ。10時ぐらいに基地側の崖に居てくれると、挨拶できるかな。」

「?は、はぁ。承知しました。」



===1時間後===



「ハクさん、ちょーっと良いですかね?」



機体のチェックなどがあるため先に格納庫に行っているホークに対し、ハクはヘルメットなどを受け取っており別行動を行っている。サイズチェックが終わって彼女が一式を受け取ったタイミングで声をかけたのは、ディムースだ。

ちなみに、耐Gスーツは支給されていない。地上での耐Gテストにおいて、まさかの耐Gスーツが意味が無いことが発覚したのである。厳密にいえば僅かに効果があるのだが、本当に誤差と言えるレベルだったのだ。

この結果を受けて、兵器開発部門が「名誉挽回」と燃えに燃えているのは人知らない話である。



「演習に同行するため余り時間がありませんが、何でしょうか?」

「あーいやいや、すぐ終わりますよ。総帥なんですけどね、飛行戦闘中は別人になっちゃうんで、驚かないようにと事前にご連絡を入れておこうかと思いまして。」



それを聞いた彼女は、別人ですか?と言いたげな表情で、何のことかと考えていた。

彼女の知っているホークは、穏やかな性格をしておりぶっきら棒ということもない。感情も穏やかで明確に表現するし、彼女自身と比べれば非常に素直な性格だと認知している。



「まぁ、どうなるかは空に上がってみればわかりますよ。すみません、お時間取らせてしまいまして。」

「いえ、情報に感謝します。ところで、マスターの腕前の程はいかがなのでしょうか?」



その質問に、今度はディムースが黙ってしまう。しかし、なにやら神妙な面持ちだ。



「実力から言えば、8492飛行隊の下から数えた方が圧倒的に早いですね。しかし、状況判断能力と認識能力が異常なほど抜きん出ています。」

「……実際に見なければ分かりませんね。ありがとうございます、それでは。」



彼女は軽く頭を下げると、格納庫へと歩いていった。ディムースが出した言葉の意味をあまり深く捉えていないようであったが、彼はその背中を見送ると、無意識に呟いてしまうのだった。



「上司としての行いが理想的ってのもあるけど……空に居る時とのギャップのせいで、男女関係無しに結構な人数が惚れちゃってるんだよなぁ……。」


ホークは格納庫と言っていましたが、第二拠点に滑走路はありません。

つまり……?


追記:お陰様で総合評価200ptを超えました。ご愛読頂いております皆様のおかげです、ありがとうございます。処女作故に至らぬ点も多々あると思いますが、感想でのご指摘当頂きつつ努力して参ります。今後ともよろしくお願いいたします。

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