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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第1章 腰を下ろすために
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3話 仲間への説明

真っ白な世界から意識が戻り、とりあえず各部隊の状況と建造物を把握するよう各軍の大元帥に調査指令を出す。1時間もすれば、各建物の詳細なデータまで全てが自分の手元に集まってきた。その情報を解析するに、AoAで活動していた頃と何等変わりは無い。AoAで使用していた各軍隊の基地設備が、そっくりそのまま島に展開されていた。


服に関して直せるなら―――と思っていたのだが、どうやら自分が着ていたCOFに出てくる、黒と濃い灰色の迷彩がなされている陸軍用戦闘服なのは変わらないようだ。最初に中二病っぽく設定したのが、まさかここまで響いてくるとは……土台作りって大事ですね。

通常の隊員が着ている装備と比べて防御力は低いが大幅に軽量な上、刃物程度は完全に通さないため便利な装備であるのは事実だ。しかし軽量化のためにポケットも少なく、実際に戦闘するとなると使い方が制限される衣類となる。


そんな自分は現在、大勢の隊員を相手に説明を行っている。場所は、陸軍基地のコンサートホールのような巨大なブリーフィングルーム。ダークウッドで纏められた落ち着いた雰囲気を醸し出しており、へたなコンサート会場よりも大きく、数百人が一堂に着席できるワンルームだ。



「―――と、いうことが先ほど指示した調査指令までに発生した内容だ。エイプリルフールに大本営が大勝利と発表した程度の信憑性しかない話だが、現状と合わせると真実だと、自分は判断する。そのため今現在から、勇者と呼ばれる人物の討伐を行動目標としたい。これは全部隊共通の行動になる、異論や意見があるなら遠慮なく言って欲しい。」



自分は8492の将校や超エース級の称号を持つ隊員百数十名を集め、先ほど発生した案件に関して仲間に問いを投げている。そして、その問いに対して彼等が出した答えは1つだ。全員が座ったまま微動だにせず、肯定であることを示していた。



「―――総帥。いや、今だけはホークと呼ぶ。そっちこそ、望みがあるんだったら遠慮なく言ってくれ。8492の設立から今までは全力で答えてもらった、今は全力で答えるのが俺たちの仕事だ。」



AoAにてガルム0を名乗る隊員が、立ち上がってそう答える。主翼及び垂直尾翼の両端から半分ほどが藍色に塗られた、赤い猟犬のエンブレムを掲げるF-15C戦闘機を操るパイロット。大柄な性格をしているが、義に厚い人物だ。

その言葉に、隣の隊員も頷いている。そんな光景を見て、思わず自分の口が緩んだ。



「同感だ。たまには無茶な要求やワガママだって言ってくれないと、我々の腕も鈍ってしまう。」



メビウス13を名乗る隊員も、立ち上がりそう答えた。∞マークのエンブレムが映えるF-22A戦闘機を操る、礼儀正しいパイロットだ。



「空軍ばかり見栄を張らないでくれよ?我々タスクフォース000……ご命令あらば、いつでも出撃可能です。」



普段は淡々とした口調のマクミラン及び隊員も、同様だ。何故か常にギリースーツを着込んでいるのだが、ゲームの頃から変わらないのでそこは問わない。何を着ようが、常に実力の全てを発揮できると信頼できる。

3人ともI.S.A.F.8492発足時から行動を共にしていた人物だけに、嬉しい言葉をかけてくれる。自分の口元も緩みっぱなしだ。


ゲーム開始時は軍の運営もつらかったが、この3名を筆頭に所属プレイヤーの要求は可能な限り答えてきた。そういったことも、今回の返事に繋がっているのだと思う。人間、行いは大切だね。その他の将校クラスも次々と立ち上がり、似た答えを返してくれる。まったくもって頼もしいし、嬉しい限りだ。



「皆、ありがとう。もちろん、女神の情報が正しいかを調査した上で実行する。我々の衛星も使えるようだ、偵察部隊には今から動いてもらいたい。エドワード大元帥、指示は任せた。」

「承知しました。空軍の総力を挙げて、勇者の国及び周辺地理を調査致します。」

「偵察に関してだけど、不確定要素がいくつもある。ステルスを最優先でお願いしたい。」

「畏まりました、厳に注意します。」



ブリーフィングルームでの会議……と言うよりは意思決定も無事終了。終わったあと皆と別れ、自分は陸軍本部の最上階にある自室に戻っている。実際の各部隊の行動に関して、自分が直接指示することはない。

8492が大きくなってきてからは各軍に大元帥が居たため、詳細指示は彼らに一任している。現在は万人単位の軍となったが、実際にそれほどの人数が8492に入隊したわけではない。実際にプレイヤーとして存在していたのは、100人程度だ。プレイヤーは、得たお金を消費して自軍の装備強化、もしくはNPCによる隊員数の拡張などを行えるシステムだったのだ。


使用する武器なども購入できる。戦闘機乗りや戦車乗りだと、車両の改修や兵装の購入、僚機となるNPCの購入が例となる。つまり、自分の理想としている編成を、理想の装備で構築することができるのだ。拠点防衛に関しても、理想の装備で行えるのだ。

例えば


「俺は防衛を行う!」って人は、自分みたいに基地の運営に専念してもいい。基地拡張や、防衛システムの構築だってある。

「俺は攻撃を行う!」って人は、夢に描いた歩兵部隊、機甲部隊、航空部隊、艦隊を構築して出撃できる。流石に、古すぎる兵器は無かったが。

「俺は輸送を行う!」って人は、ストライカーや操作用NPCを購入して輸送部隊を編成してもいい。海上輸送も非常に有用だ。


攻撃側はFPSやフライトシューティングと同じシステムで戦え、基地の運営、輸送側はシミュレーション的な要素で立ち回れる。

このように、現実では絶対に行えない「戦争」に関して「やりたいことを理想のシステムでプレイできる」点が、AoAというゲームが支持された大きな理由なのだ。


兵器の種類や効力としては、ゲーム仕様だったり現実仕様だったり、兵器によって様々である。微量のSF要素が混ざっているゲームの合作なだけに、仕方が無いのだろう。例えば現実の熱源探知や心音センサーは、AoAで実装されているように高性能ではない。壁の向こうを可視化するようなことは、現実では不可能だ。

一方で、戦闘機に搭載できるミサイル数や種類はゲームの仕様が反映されている。AoAではF-22の主翼下にもミサイル・空対地爆弾を搭載可能であり発射もできるが、現実では不可能だ。


このあたりの仕様が混在しているのだが、こればかりはゲームの仕様として受け入れるしかなかった。とはいえ、そんなところまで拘りだしたら開発側も頭が痛くなるだろう。リアリティ志向者には申し訳ないと公式発表していたゲームだったが、何事にも限界はあるものだ。そもそもリアル志向なゲームだって、被弾前後で同じように動けている時点で現実的じゃないし。



そんな感じで現実要素と仮想要素が入り混じったAoAでは軍に加入すると自分のやりたいことを行えるのだが、それらのシステムの使用は軍のトップである「総帥」の許可が必要となる。


自分は総帥として決定を出す側だったが、基本的に全てOKを出してきた。穴埋めは基地運営連中のやりくりで、なんとかなる!攻撃は最大の防御と阻止力!攻撃隊に楽をさせろ!的な考えを持っていたからね。まぁ流石に、どうにもならない時はNGを出したさ。

そのおかげか、設立当初から去る人は一切おらず、今の繁栄があるわけである。あまりにも強くなりすぎたために、終盤ではPvPでも全部隊を出撃させたことはないが、各々が各自が元としたエースになり切って、楽しんでいた。


そんな自分たちがこの世界で陣取った佐渡島(仮名)は、サイズは佐渡島の2/3程度。おおよそだが縦20km弱、横30kmほどの大きさだ。島の中央から北東に伸びる山は標高400m程度である。グローバルホーク無人偵察機からの映像で判明したのだが、島の端は

崖と岸から構成されており、地球にある佐渡島とは別物と思っていいだろう。空軍の西側の崖は50m、北側は45mと、かなりの絶壁だ。海からは登ってこれないだろうな。


先ほども確認したが、この島に陸海空軍の施設がある。寸分違わぬものが揃っており、必要な施設は全てあるみたいだ。ちなみに、ヘリを含めて航空管制は空軍が行っている。

そのあたりの運用も正常に行われているようで、今のところ問題はなさそうだ。何かあれば、すぐに連絡が来るだろう。



「さて。召喚された施設も問題ないみたいだし、AoA特有のシステムも正常だ。あとはプレボだけど……」



兵器庫関連では、プレミアムボックスの項目もある。AoAにおいて運営からのプレゼントがあった場合、このボックスに配布されるのだ。

でも基本的に、貰ったものは取り出して軍の皆で遊んだり研究していたため、何も残っていないはず。皆さん案外、好奇心旺盛だからねぇ……。


作業ついでだから、念のため確認するか。脳内でボタンを押し、中を確認した。



「……見ちゃいけないものが、あったな。」



……すっかり忘れていた。そう言えば、1つ……正確には1編隊と専用基地1個なのだが、コラボ1周年記念のサーバー対抗戦争でトップ成績だったために得た、運営からのプレゼントだ。これだけは残してあった経緯を思い出した。

成績トップだった自分たち8492と、2位、3位の軍隊までに配布された「乗り物」及び基地である。ちなみに1位ほど、その乗り物の能力と搭載されている兵器の性能が高い。見た目や性能は男のロマン溢れる代物だったのだが、エースクラスの飛行隊が集うこの世界では、「置物の方がマシ」と言わんばかりに、速攻で叩き落される代物だった。



ちなみに自分の所の飛行隊がランキング2位のソレを2分で撃墜したために、運営が「通常は数十分は耐えます」とコメントを出したのは記憶に懐かしい。



そのため8492ではコレを使うことなく、プレミアムボックスに仕舞いっぱなしだったのだ。8492では運用方法も思いつかなく、必須と言うこともない兵器である。武器庫や車両庫にあるものはリセットされて消えていたのだが、これは倉庫にすら入れていなかったので、残ったのだろう。

この世界で使えば、大混乱間違いなしの一品だ。戦闘機や空母を見た!どころではない、大混乱が起こるだろう。あるいは、現実離れしすぎて見なかったことにされるかの二択だ。



「流石にコレは、お蔵入りかなぁ……。」



現状を確認して、そう考えていた時だった。



「うおっ、なんだ!?」



突如として、屋外から爆発物の炸裂した重低音が響き渡った。音からして、何かしらの砲を発射、砲弾が着弾した音のように聞き取れた。


軽く身構えると、続けてもう一度、戦車の主砲らしき発射音・着弾音が聞こえてくる。結構近場で発砲していたと思うけれど、何かの演習か訓練かな?

窓の外を見るが、2発目が発射されるような気配はない。発砲音の前と同じく、辺りは静かなままだ。



気が逸れてしまったが、訓練ならば仕方ない。……訓練だよな?


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