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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第2章 動き出す生活
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18話 猿も木から何とやら

久々あの二人のお話。

エスコンでこんな編隊が飛んで来たら泣きながら逃げ帰る自信ありますわ……。

【視点:3人称】


佐渡島(仮名)航空基地から方位090、距離1000km、高度2万メートル。2機の戦闘機が編隊を組んでおり、安定した飛行を見せている。

それぞれの機体の垂直尾翼には青いリボンのエンブレムと赤い犬のエンブレムが飾られているが、機体はF-15とF-22ではない。機種転換を実施するための、作戦行動を兼ねた飛行試験を行っているのだ。


2機は脇目も振らず、真東に向けて飛行している。目的は偵察衛星で見つけた西の帝国周辺空域の偵察飛行であり、SR-71や偵察衛星では見えない目線からの情報を得るためである。二人の判断で交戦も許可されており、時と場合によっては威力偵察に近いことも発生するかもしれない。

攻撃兵装は次世代の物が搭載されているものの、試験飛行と言うことで機体の性能は押さえ込まれており、改修が重ねられたF-22程度となっている。とはいえガルム0が乗っていたF-15Cからすれば大幅な性能アップであり、今回のフライトを楽しんでいた。



《……なぁ、お前はどう思う?》

《ん?なんだ突然。》



偵察を兼ねた機種転換後の機体に慣れるために行われているテスト飛行中とはいえ、突然メビウスが珍しく口を開いた。会話は専用回線で飛ばされており、不思議に感じたガルムも流れに身を任せ応答している。



《ここ最近の自分達だよ。ガルムも少しは不満なんだろ?》

《それは禁句のはずだぞ、手当たり次第に仕掛けて良いものではない。》

《まぁ……そうなのだが、な。》

《いや、確かにわからんでもない。》



重い口調で、何かしらの悩みを会談する二人。その内容は……



《《戦闘が少ない。》》



そう、この二人も隠れ戦闘狂なのだ。AoAでは相手から勝手にドンパチを仕掛けてきたので彼らの出番も多く、戦闘を行うには恵まれた環境が整っていた。

しかし当然、この世界でそれを行えばただの殺戮者だ。戦闘機や兵器などの与えられている装備は同じとはいえ、状況は全く異なっている。



《この前の演習はグリフィスが相手で久々中身のある戦闘ができたのだが、やはり演習となると気を使ってしまってな……。》

《そうだな。……とはいえ、平和ということで総帥に負荷が掛からないに越したことはない。しばらくは戦争も無いだろうし、演習で気を紛らわすしかないだろう。》

《……なるほど確かに。それにしても相手がトカゲの類となると、どうも気乗りしないんだよ。》

《待て、この世界のドッグファイトも捨てたものではないぞ。シルビア王国で俺が相手した編隊は、練度で言えば間違いなくエース級だったぞ。》

《なにっ。それは羨ましい、当たりクジだな。》



だろう?などと軽口を飛ばしつつ、二人は佐渡島(仮名)から東に機体を飛ばしている。互いに戦闘の気配は更々なく、音速の散歩という言葉が相応しい。

それもそのはずで、佐渡島(仮名)から西の大陸までは数百㎞の海が続いている。そのため地上生物も居なければ、この空域を飛ぶ魔物も居ないのだ。唯一の例外としてドラゴンの類が挙げられるが、それでも高度2万メートルの領域は飛行できない。



《さ、愚痴はその辺りにしてお仕事だぞメビウス。11時方向に陸地確認、港街のようだ。高度9000mまで降下、南の海上を飛ぶぞ。》

《了解、こちらも視認した。対空レーダーにも反応は無いが、ところで報告の規模は街で良いのか?》

《む、確かに語弊が生まれそうだな。シルビア王国より小さいぐらい、と付け加えておいてくれ。》

《了解した。と、対空レーダーにunknown、数は26、高度7000、進路2-8-0、速度160。中型だな、雲の中を飛んでいたようだ。》

《こちらでも確認した。ドラゴンではなさそうだ、翼竜よりも一回り小さいぞ。かなり密接に飛行している、従来のレーダーなら3つか4つに見えていただろうな。》



新型機に搭載されているレーダーは高性能で、彼等はunknownの特徴を探知している。とはいえ判明するのは大きさと飛行速度、高度、方位程度であり、それが何なのかまでは分からない。

2機は雲の上に居るため、猶更の事状況は不明である。そんな二人は、何が飛行中なのかと確認を行うために戦闘機動で高度を下げた。


しかし2秒後、その選択が誤りだったことに気づくことになる。



《あっ。待てガルム、今の速度は―――》

《げっ、しまった……。》



ガルムが気付いた時には、既に遅い。降下中の戦闘機の速度はマッハ2.5を超えており、予定外に100m横を交差したunknown、ワイバーンの集団は乱気流により墜落しかけてしまう。

しかし、彼らがその速度に気づかなかった事には理由がある。現在彼等が乗っている機体は、第6世代と呼ばれる次世代型の高性能機なのだ。古い軽自動車から最新型普通車に乗り換えた時のように、体感速度に大きな狂いが発生しているのである。猿も木から何とやら。非常に珍しい、二人の失敗である。



今回の機種転換に伴いガルムが操っているのは、ADFX-01、通称「モルガン」。メビウスが操るのは、CFA-44、通称「ノスフェラト」である。


ADFX-01の型式を持つ機体のデザインは、カナード、前進翼、内向き斜め双垂直尾翼で構成されるエンテ型であり、機体サイズも非常に大きい。前進翼機の代表であるロシアの試作機、Su-47ベールクトよりも更に前衛的なデザインだ。

それもあるが、最大の目玉は搭載兵装だろう。主に使用されるのは、TLS(Tactical(戦略) Laser(レーザー) System(システム))もしくはMPBM(Multi()-Purpose(用途) Burst(炸裂弾頭) Missile(ミサイル))だ。どちらも非常に強力な攻撃兵装となっている。


TLSは、簡単に言うとレーザービームによる攻撃となる。コクピット後部にレーザーユニットを装着し、高出力のレーザー光線で直線状の対象を攻撃するのだ。

一方のMPBMを簡単に言うと、窒素爆弾の原理を持つ炸裂弾頭ミサイルである。一般的な気化爆弾以上の範囲を攻撃できる上に空対空攻撃も可能となっており、対多数目標及び対ドラゴンクラスにも有効だろう。



一方のCFA-44は、大きさ、形状共に「プレスラインが変わったF-22戦闘機」という第一印象を受ける。しかしながら全方位可変ノズルやエンジンそのものの高出力、安定性向上など、中身はまるで別物だ。計器類もデジタル化されており、非常にスッキリと設計されている。


そして極めつけが、CFA-44専用の攻撃兵装だろう。2種類の強力な攻撃兵器があり、1つは航空機用レールガンユニット(EML)を搭載することが可能なのだ。

もしくはAIM-120Dと比較して速度8割、旋回性能3割り増しの全方位多目標ミサイルを発射できる「ADMM(ALL()Direction(方位) Multi()-purpose(目的) Missile(ミサイル))」と呼ばれるミサイル。このどちらかを搭載可能となっている。


専用発射コール「ドライブ」を使用するADMMは、一度に12目標をロックオン、追尾可能なミサイルシステムだ。一方のEMLも、専用発射コールの「スラッシュ」を使用する。レールガンの方はシステムとしては在り来たりな物であるが、マッハ10.0以上の初速で射出可能な点が特徴であり、貫通力も非常に高い。

搭載スペースの関係上、両方を同時搭載することは不可能である。しかしこれらの装備により、ハード目標・多目的目標の両方に対して高次元で対応することが可能となった。ちなみに今のメビウスは、ADMMを装備している。




……が、ワイバーンからすれば、そんなことはどうでもいい話である。きもちよーく高高度を飛んでいる耳にジェットエンジンの轟音をぶちこまれ、挙句の果てにはソニックブームによる乱気流で落とされかかったのだからご機嫌は垂直だ。

もちろん、二人もソレは理解している。犯人の2機は瞬く間に高度を上げ、雲の上に姿をくらました。



《やってしまったぞメビウス、完全に速度感覚を誤った。奴等、明らかに怒ってたな。》

《そりゃ、そうなる。気づかなかった俺も悪いが、改良型のDASを使えば雲越しでも十分見えただろう……。》

《……ああ。いかんな、オレも年か。》

《……お互い様だが、新装備ってのは慣れないものだな。》



人じゃなくて良かったな、残りは真面目にやるぞ。と、2機は西側の大陸上空を飛行する。元々簡易的な偵察飛行だったため、任務そのものは30分程度で終了した。

二人はミッション内容を確認すると反転し、佐渡島(仮名)へと進路をとった。2万メートルという高高度をキープしており、適度になびく雲のはるか上を飛行している。



《本部CICよりガルム0及びメビウス13に通達。偵察衛星からの映像では、そちらの空域にワイバーンの群れが確認できる。何かを襲っているようだ、飛行高度に注意せよ。》

《何っ?CIC、大至急その映像を転送してくれ。》

《映像?と、了解した、今送る。》



突然もたらされたこの報告に電光石火の返答を行ったのは、往路でワイバーンの巣に接近してしまった当の本人であるガルム0だ。彼は直感から、何かまずいことがおこっていると察知したのである。



《こちらメビウス、映像を受信……ちょっと待てガルム、さっきのポイントに近い。ワイバーンの連中、あの翼竜3匹が原因と誤認して襲っているぞ。》

《奴等翼竜よりも速いぞ。イカン、人が乗っている上に攻撃を受けている。》



予想だにしなかった状況が生まれてしまっており、流石の二人の心境にも若干ながら焦りが伺えた。衛星からの映像では襲われている3匹の翼竜には人間と思わしき騎士が乗っており、その翼竜は血を流して見るも無残な程に傷ついている。



《オレは実践訓練を行う、メビウスはどうする。》

《俺にも責任の一端がある。付き合おう、初手は任せた。》



二人の間で交わされた言葉は、それだけだ。ガルムは右翼下方にバンクをとると、メビウスもそれに続いて編隊を組んで加速していく。互いに切磋琢磨しあってきた故に、互いの行動はお見通しだ。

レーダー上に集団を捉え、二人はいつものように無言となり交戦を開始する。ADFX-01の主翼下部にある兵装から、1つのミサイルが放たれた。



エスコンの架空機で一番好きなのはXFA-27です。

どうやらプラモが発売されるようですが、完成品の販売は期待できないかなぁ……

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