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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第2章 動き出す生活
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5話 腹ごなし?


「総員、ホーク総帥に注目!敬礼!」



艦隊の停泊エリアに入って車から降りると、トージョー大元帥一向の敬礼で出迎えられた。彼の敬礼直後に、全作業員が敬礼を行ってくる。その光景を見て、何故かハクが目を細めた。どうかしたのだろうか?聞いてみよう。



「敬礼の動作開始から終了までの時間、腕の角度や位置……素晴らしい統率、流石はマスターの家臣達です。」



どうやら敬礼の光景に感動しているようです、自分のような素人にはワカランな。とはいえ無視は良くないので、当の本人達の代表に話を振ってしまおう。



「いや、こっちは何もしてないんだけれど……。ともかく騎士様から見ても統率が良いってさ、トージョー。」

「ハッ。確かハク殿は王族でしたな、むさ苦しい光景で申し訳ありません。」



あっイカン、情報が先行していたのを忘れていた。そりゃ普通、ハク=現在進行形で王族と捉えるよな。

ハクに関しては、王族の話は地雷に近いと認知している。本人も随分と気にしていたので、できるかぎり話題にしたくないのだが……。



「いえ、全く問題ございません。勝つことが目的の集団なのですから、強さに性別は関係無いと存じます。それが一流の集団なのでしたら、猶更でしょう。」

「ははは、嬉しいことを言ってくださる。」



……おっ、うまくスルーしてくれた。内心気にしているはずだが表情も全く持って何時も通りだ、凄まじいポーカーフェイスだな。

すぐさまアイコンタクトで、トージョーに話を切り上げるようサインする。王族のくだりの件に関してはあとで裏から皆に周知させるとして、とりあえずはこの場を乗り切ろう。



「ともかく我々I.S.A.F.8492海軍は、ハク殿を歓迎致します。どうぞ、ごゆるりと見学なさってください。」

「ありがとうございます、トージョー……。」



ん?なぜそのタイミングで、こっちに顔を向けるんだ?

どうした……あ、トージョーの役職か?



「ハク、トージョーの役職というか階級はダイゲンスイだ。海軍の一番上で、総帥である自分の1つ下の階級になる。」

「っ、申し訳ございません、トージョー大元帥。」

「ははは、構いませんよ。聞き慣れぬ階級でしょうし、無理もありません。それでは、ごゆっくり。」



自分達は敬礼を交わし、トージョーや作業員は場を離れる。何事も無かったかのように、一帯は作業の活気に包まれた。そこかしこで荷揚げ作業や積み込み作業が行われており、輸送車両も走り回っている。

そんな光景を見ていたハクが、突然こっちに顔を向けた。ほんのり苦笑と言った表情だが、なんだろうか。



「……ご配慮に感謝致します、マスター。」

「ん……なんだ。背を向けたままってのも良くないとは思うけど、国とは関係のないこの基地に居る時ぐらい、嫌なことは忘れてもいいんじゃないかなって。」



どうやら自分の気遣いは見抜かれていたようで、照れ隠しに答弁を返してみる。問題と向き合うためにこの島に残らせているわけではないし、ほとんど本心と大差の無い内容だ。自分の発言を聞いた彼女は少し目を開き、閉じたうえで口元を緩めた。



「……己に厳しくと育てられた理念が、緩んでしまいます。マスターのお言葉は、とても甘いのですね。」

「フラガリアのサンドイッチより?」

「御冗談を。あれに勝るものは、早々無いと心得ます。」



二人して苦笑しあう、穏やかな空気を作ることに成功した。あれほど甘いものはーとのことだったが本格スイーツ系ならイチゴジャムサンドなんてワンパンだと思うので、今度作ってあげようかな。秋口だし、それならモンブラン系列とかが美味しそうだね。柿もいいかな。

そんなこんなで、柔らかい空気のまま第一艦隊・第二艦隊の紹介も無事終了。「あっちとこっちが戦闘艦、これが戦車とかの輸送艦。」程度の説明であり、詳しいことは言っていない。あとは空母甲板への体験乗務を行い、飛行甲板の掃除の風景を見学していた。


ミサイルやらの説明は、もうちょっと慣れてからの方がいいだろう。現状は「空を飛んで戦う部隊・地上で戦う部隊・海の上で戦う部隊の3つがある」程度の認識で十分だ。覚えも早そうだし、そのうち自分よりも詳しくなるかもしれないね。




空母フォード1を降りて海兵隊の駐屯地を横目に通り過ぎようと思ったのだが、何かを行っていたようで多少の人だかりができていた。覗いてみるのも一興だけど、ハクの気分はどうだろう。



「何かしてるみたいだね、覗いてく?」

「折角ですので、是非。」



ということで、見物している空母航空隊員の肩をポンと叩く。何だ?と言いながら振り返った隊員だが、自分の顔を見るなり飛び上がって最敬礼を行った。驚かせてごめんね、もちろん狙ってたんだけど。それに気づいたほかの隊員も、こちらに姿勢を向けて敬礼を行ってくる。

隊員とのコミュニケーションついでに何かやっているのかと聞いてみたところ、数少ない海兵隊に、マクミラン率いるタスクフォース000が戦闘講義を行っているようだ。


内容としては、実践訓練がほとんどらしい。本日は格闘戦だったようで、現在は一戦交えたあとの問題点を把握する時間のようだ。ホワイトボードを使用しているが、明らかに内容は近接戦闘となっている。


そんな光景を見て、表情には出さないが明らかにハクのテンションが上がっている。普段は絶対に自分の隣に並ばず一歩後ろにいる彼女だけど、本当に興味が沸いた時は半歩後ろにまで距離が詰まるんだよね。確信を持てたのは、ついさっきだけれど。

そして今は、真横にいる。その手を横目で見れば、いつもより力が篭っていた。マクミランの格闘戦に興味があるのは明らかだし、交流も大事だから参加させてあげようかな。



「マクミラン大尉、ちょっといい?」



講義が一段落したタイミングで、階級までを含めた声をかけてみる。普段はマクミランとしか呼ばないが、階級を含めたのはハクのためだ。

自分に気づいた隊員が整列して最敬礼を行い、マクミランは軽く敬礼を行ったあとに近づいてきた。彼はシンプルな会話を好むし、回りくどい言い方をせずに伝えてしまおう。ハクと同じく予想の域だけど、彼も望んでいたことだと思うし。



「ご用でしょうか?」

「うん、ちょっとね。さっきの戦闘訓練に、ハクも参加させてあげて欲しいんだ。」

「えっ?」



彼女は驚いたようで、少し眼を開いて自分を見てきた。予想通りの反応なので、自分はハクを見ずにマクミランと会話を続ける。



「……いずれこちらからお願いしようかと思っていたところでした。宜しければ、一戦交えたいですね。」

「だってさ、ハク。」



そして、マクミランの考えも予想通り。今までのエース達を見ていると、強い奴等が出会うと、なんでかドンパチやりたくなるらしいんだよね。血の気が多いのか、単に興味本位なのかは理解できないけど。

とはいえ、それ故にエースでもあるんだろうな。血の気は置いておいて、向上心は大切だと思う。


ハクは前へ出ると魔力の渦が軽く発生し、以前見た2種類の剣のうち長剣の方が姿を見せた。あれかな、異空間収納みたいな感じで出し入れしているのかね。今度、機会があったら聞いてみよう。



「―――お手を拝借します、マクミラン大尉。」

「謙遜を、こちらの台詞だ。」



そして二人はフィールドに立ち、一言声を掛け合った。どうやらマクミランは既にハクの実力を見抜いているようで、珍しく謙遜している。まじかー、あのマクミランでも勝てないって、ハクってどんだけ強いのよ。



「ッ!」

「フッ!!」



そんなことを思っていたら、戦闘が始まった。腹ごなしにしては過激ですね、脇腹が痛くならない程度に行いましょう。

ハクはバトルアニメのごとく、凄まじい速度で剣を振るっている。対するマクミランは、タクティカルナイフでもって攻撃を完全に受け流していた。凄まじく速いテンポで、金属のぶつかる音が耳をつんざく。しかし確実に、一歩ずつ後ろに下がっている。

ド素人の自分が見ても、ハクが優勢でありマクミランが超劣勢であることは一目瞭然だ。重火器禁止とはいえ、あのマクミランをここまで追い詰めるってのは……ホントにハクってスゲーんだな。


時折ハクが驚いているのは、決めに行ったと思った攻撃が完全に流されているからだろう。マクミランは反撃の機会を伺いつつ防戦一方であり、彼女も反撃可能な隙を見せる素振りすらない。互いに実力はエース級、ハクに至ってはその道に長けているだろうから尚更だ。

そんな攻防も数分続いたとき、とうとうタクティカルナイフが耐え切れずに破損した。柄の部分が折れ、刃の部分と共にカランカランと音を立ててアスファルトを滑っていく。二人は最後に打ち合った構えのまま、ピクリとも動かない。



「―――見事、俺の負けだ。」

「―――お見事な刃捌きです。」



構えを維持したまま数秒固まっていたかと思えば、互いに褒める発言をしたのちに一礼し踵を返す。


やべーあの二人ちょーかっけー。戦闘終了後の声の掛け合いや礼儀作法など、まさしくThe.武人。ギリースーツじゃなければ立っているだけで絵になるな。

000の部下たちは悔しがっているが、それでも負けは負けだ。たぶんナイフ以外の武器がOKならここまで押されることはなかっただろうし、自分の予想だと勝つことになるだろう。


でも、それは決して再現できない。なぜならマクミランが勝つということは、確実にハクの命が消えているからだ。自分程度では方法は想像もつかないが、彼なら必ず成し遂げてしまう。

かたや王族所有の剣であり、かたや量産型タクティカルナイフということで武器の差も大きいし、マクミランにとって不利な条件が重なっている。だから、今は負けということで十分だ。終了という意味を込めて拍手をすると、次第にその輪が広がっていく。



こちらに向かって歩いてきているハクの手にあった剣が消えたが、顔つきは戦闘中の武人のままだ。あんな目を向けられると、なぜだか思わずドキっとしてしまう。



「大満足、って顔だね。ともかく、勝利おめでとう。」



なので、照れ隠しで彼女の本心を見抜いてみる。あれは恐らく、久しぶりの本気の打ち合いを行った余韻に浸っているんじゃないかなと予想した。



「ありがとうございます、マスター。あれほどの武人を御紹介頂けたうえに打ち合う機会まで得られるとは、晴れがましい気分です。お叱りを受けることを承知で申し上げれば、他の方の腕前も気になってしまいました。」

「マクミランはウチの隊員の中で最強の部類だからね。彼が勝てないんじゃ、ほかの隊員はまず無理だと思う。」

「―――なるほど。静かなる闘志を感じたのですが、それ故なのですね。」



う、うん?何がどうなったら静かなる闘志になるんだ?自分みたいなヒヨッコは論外で、武人しか分からないことなのかな……。


よし、次は自分だ!打ち合えばわかるかもしれない。マクミラン、稽古を頼む!



===5分後===



さきほど防戦一方だった腹いせに全力でボコられました。子供かお前は!

モリゾー怒りの固定砲台

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