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異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第1章 腰を下ろすために
3/205

1話 プロローグ【AoA】

9/6 内容そのままに書き直し致しました。

【視点:3人称】

A社のゲームとB社のゲームに出てくるキャラや兵器などを、同じ仕様で操作できるゲームが発売されることがある。俗にいう「合作」というやつだ。


VR対応PCゲームの1つ、B.N.社から発売されていた空のエースを描いたエースフライトシューティングコンバットもシリーズ初の合作が発表され、大いに賑わいを見せる。合作の相手は、こちらもVR対応PCゲームであるコール・オブ・フィールド(COF)。こちらは地上部隊のエースを描いた、大作のFPSだ。

両方の作品にシリーズがあり、ゲームとしての歴史もある。互いに主人公がエースとして活躍するゲームであり、それぞれの人気度は、同類のゲームで世界1、2位を争う程だ。それぞれのステージ、空と陸において一人のエースとして活躍できることもあり、合作ゲーム『Ace of Aces』、略称『AoA』のプレイヤーは鰻登りに増加していった。



これが、彼が大学1年の冬頃の話である。名前は青木 鷹、そこそこ有名な工学科の大学に通う、4年生。

ギリギリ大企業と言える大きさの会社から内定も貰い、卒論に関しても無事終了。単位に関しても問題なく、文字通り、あとは卒業を待つだけだった。



今日もまた、彼はAoAの世界に入り浸る。仲間であるエース達と共に、戦うために。



=====


AoA、とあるサーバー。この世界の一角において、数日前より大規模な戦闘が開始されていた。AoA上位軍隊同士の、お祭りと呼ばれる全面戦争である。

軍隊と軍隊が、設定されたフィールドで戦闘を繰り広げるという簡潔なルールである。とはいえ情報戦や偵察合戦は当たり前のように行われるため、内容としては奥が深いものとなっている。


そして、その世界の空。天候は曇りに近い晴れであり、昼過ぎということもあり視界は良好。とある軍隊の空軍が、大規模部隊でもって敵陣地上空を進行していた。やや後方の地上では、地上部隊の歩兵隊や戦車部隊が予定ルートで進んでいる。

しかし、状況は不思議なものである。一昨日の開戦以降、敵部隊に動きが見られないのだ。厳に彼ら航空部隊も地上部隊も、未だ敵と接触すらしていない。



「隊長、今日も敵さん出てきませんね。お祭りの戦闘だってのに、味気ないものです。」

「お祭りったって、互いに加減無しというだけだ。どこにどんな相手が居るのか、実際に戦ってみるまでわからんよ。」

「ですが、もう相手の地域の7割がたまで侵攻したのに未だに反撃無しですよ?専守防衛にでも、徹しているつもりなのでしょうかね。」

「おいおい。侵略されてるんだから、それなら既に反撃しているだろう。」



ですよね。と軽口をたたき合うB-2爆撃機部隊1番機の機内だが、隊長の彼は内心不安がっていた。

現状の事実は、まさに前代未聞である。通常ならば凌ぎを削り合う一進一退の攻防が繰り広げられる戦場であり、マッチングの不運で実力差に遅れを取る軍ならば、お祭り騒ぎで特攻を見せている場面だからだ。


その場面で無線に響いた空中管制機からの報告は、その疑問をより一層深めるものとなる。



《警告、警告。高度2万付近において機影が2機、高速で接近中。到達まで残り5分、交戦体制に移れ。》

《おいでなすったか、ここは俺達で相手しよう。AWACS(エイワックス)、相手はわかるか?》

《ネガティブ、機種すら判別不能。チャフとフレアを使いながら、雲の合間を上手く飛んでいる。相当な腕だ、警戒せよ。》



空中管制機の報告に答える戦闘機パイロットだが、B-2爆撃機を含む120機で構成される編隊の全員が疑問に思う。彼等はAoAにてトップ5に入るほど有名であり、傍若無人な態度は見られない規律正しい軍隊だ。


そんな彼等が、共通して警戒する軍隊が存在する。AoAにおいて初期から頭角を現し、現在も最強の座に君臨しながら圧倒的な戦果を挙げている実績を持つ。



その名を、I.S.A.F.(アイサフ)8492。空軍全部隊の8割がエース級以上、最弱でも準エース級という戦闘力を誇る精鋭揃いの軍隊だ。AoAにおけるトップ2~5の軍隊で構成された連合軍すらをも空軍だけでもって叩き伏せる、別次元と呼ぶに相応しい集団である。



《前方unknown、情報更新。後方の認識が薄い、片方はステルスだ。》

《片方だけが?変わった編隊だな。》



やや気が引き締まるも2機が相手ということで身の入らない会話が飛び交う無線だが、それは次の瞬間に凍り付くこととなる。



《こちら地上部隊、一斉に攻撃を受けている!気を付けろ、敵部隊は――――》

《何っ。どうしたドラゴンバスター、応答せよ!》



突如として味方の戦車大隊の声が響いたかと思うと、無線はすぐにノイズに染まった。それを聞いていた全員が「車両が破壊されたのだ」と感じ取るのに、数秒も不要である。



《空の連中聞こえるか、すぐに支援に戻ってきてくれ!第一・第二歩兵師団は3方向から狙撃による攻撃を受けている!何ッ?はっ?一番遠いところは4000m先からの狙撃だと!?冗談だろ!!?》

《間違いありません隊長、その狙撃で甚大な被害が出ております!こっちのスナイパーは全員やられ4㎞先からの狙撃によりヘリまで落とされています!至急前線を張りなおしてください!!》



続いて地上兵士よりもたらされた報告に心当たりが芽生え、AWACSの顔面が凍り付く。そのような芸当ができるのは、奇人変人揃いのAoAにおいても1名を除いて他ならない。



目撃情報が少ないプレイスタイルとのことだが、二つ名を「歩く無敵砲台」。AoAにてスナイパージョブの頂点に君臨するプレイヤー、そして満場一致で最強の歩兵小隊であるタスクフォース000(ゼロゼロゼロ、またはスリーゼロ)を指揮する者の名は「マクミラン」。COFに出てくる架空の人物「マクミラン大尉」になり切ったプレイをしており、適切な風景への擬態化ができるギリースーツに身を包む。

超エース級である『ACE of ACES』の称号を持ち、ハンドガンのテリトリーになるゼロ距離射撃から3000m級の超長距離狙撃までを、全てM82A3対物スナイパーライフルで行うことで有名だ。挙句の果てには、M82A3による狙撃で「ヘリや戦闘機のパイロットを打ち抜く」という荒業も、幾度となく行っている「ヘンタイ」である。


この人物に狙われたならば、歩兵部隊どころかヘリ部隊ですら致命傷となってしまう。それに加え、敵は戦車部隊までも配置していたらしい。幾度となく行われた偵察を全てかいくぐっており、それだけでも敵の精鋭さが伺える。

とはいえ、最も厄介なのがヘンタイの所属している軍隊名称だ。彼等が最も警戒していた、あのI.S.A.F.8492なのである。



《わかった、爆撃機を戻す!戦闘機は目の前の2機を相手してやれ、ヘッドオンだ!》



黙り込みを決めて敵の実力におびえていても、何も進まない。AWACSは指示を出し、爆撃機を逃がす手筈で戦闘機部隊を謎の2機と交戦体制に入れた。

それが、彼等が見る悪夢の幕開けとなった。



=====



「なっ!?嘘だろ、ワンコンタクトでデルタ1と2が落とされた!?」



レーダーを見ていたB-2のパイロットは、真っ先に自分の目を疑った。雲を突き抜けてきた2機のヘッドオンによる攻撃で、味方の2機が落とされたのである。落とされたのはエース級であり、そう簡単に落ちてしまうような腕ではない。

デルタ2の横を飛んでいたパイロットの頭に疑問が駆け巡るものの、彼は直感的に機体を捻り込んだ。すると先ほどまでに彼が居た空間に機関砲の雨が降り注ぎ、空気を切り裂く。彼は雨を降らせた人物の機体を目視することとなり、思わず叫んでしまうのであった。



《敵イーグルの主翼は藍色!エンブレムを視認、赤い犬のエンブレムだ!!》

《蒼い主翼に赤い犬?が、ガルム!?アイサフ8492のガルムゼロか!?》

《こちらも視認、F-22のエンブレムは蒼いリボンだ冗談じゃねぇぞ!クソッタレ、最悪の連中が来やがった!!》

《AWACSより爆撃機、緊急退避だ!戦闘機部隊は迎撃を》

《馬鹿野郎指示される前から動いてる!さっさと援軍を呼べ!!》

《なんて奴等だ、既に5機も落とされたぞ!》

《やるしかねぇだろ、奴等を落として名声を得る!》



もたらされた報告に、爆撃機部隊をはじめ、現場は最大限の混乱を見せている。現れた2機はよりにもよって、AoAにおいてピラミッドの頂点を争っている組み合わせだったのだ。


飛行隊名称を、ガルム0とメビウス13。I.S.A.F.8492に所属する最古参であり、それぞれF-15CとF-22A戦闘機を操る最上級実力者、超エース級と呼ばれるランクのパイロットだ。

AoAのコラボ元である某フライトシミュレートコンバットゲームの世界ランカーすらをも足元に寄せ付けない、絶対的な実力の持ち主。その実力ゆえに、彼らのファンも多数居るほどだ。


迎え撃っている集団もエース級とはいえ、実力差は明白である。瞬く間に1機、また1機と撃墜され、レーダー上で味方を示す反応が消えてゆく。



《B-52よりAWACS、直掩のチャーキー2が食われた!ああ、チャーキー4と6まで……。》



繰り広げられている光景は、まさに悪夢そのものである。とうとう直掩隊にまで敵の手が伸び、自分達爆撃機部隊を守るエース級の戦闘機が次々と撃墜されてゆく。

彼らも話には聞いていたが、実際に目の当たりにすると乾いた笑いしか生まれない。それほどまでに、二人が対峙したプレイヤーに与えるインパクトは強烈なのだ。


その2機はあらゆる攻撃や防御を突破し、どんなに劣勢だろうと戦局を覆したうえで空権を確保する。元となったゲームのエースは単騎で一個飛行隊などと呼ばれていたが、この二人に至っては単騎で一個空軍と言われている程だ。


例にもれず、わずか数分で爆撃機部隊は丸裸になってしまう。AWACSですら長距離ミサイルで撃墜されており、相手のジャミングにより情報を残す手段も皆無に等しい。

爆撃機のプレイヤーは、これがI.S.A.F.8492の徹底した戦いなのかと、今更ながらに震えてしまう。基本的な連携が完璧のタイミングで行われているという単純なことだが、この作戦を指揮する奴もまた、エースなのだろうと想像した。



「……隊長、ここまでです。噂には聞いていたが8492はスゲーや、俺たち御自慢の空軍が手も足も出ないんですね。」

「そうだが……なに、悪あがきはしてやろう。相手は超エース級、ミサイルの一発だって無駄にしたくないはずだ。直前でチャフとフレアを巻いて無駄にしてやろう、準備は良いな。」

「イエッサ。敵機2時方向、来ます!AIM-9の射程距離です!」



このタイミングであろうという、絶好の距離。B-2のパイロットも素人ではなくエース級、そのぐらいの距離は目視でも測ることができる。ここしかないというところで、チャフとフレアを散布した。

AoAにおいては、通常ならばミサイルがフレアに釣られて明後日の方向に飛んで行っている段階である。しかし蒼い羽根の戦闘機からミサイルは発射されず、B-2の編隊の上を通り過ぎた。



「なにっ?おい、何故奴はミサイルを―――」



ふとF-15が飛んできた方向を見たパイロットは、血の気が消えた。コクピット右方向の眼前に、有り得ないものが映り込んでいたのである。



GBU(空対地爆弾)―――.」



そう。AoAの頂点に君臨する超エース級は、無駄なミサイルは使わない。機動力が乏しく大型な爆撃機相手となると、自称「節約」という名目で、頻繁に空対空爆撃を実行しているのであった。



====



《CICより総帥、AWACSより入電です。迎撃戦闘は終了、敵部隊は全て壊滅しました。》

《だろうね。了解、撤収指示を出しておいて。》

《承知しました。》



総帥と呼ばれた一人の男は、「思ったより時間がかかったな」と呑気なことを口にして座り心地の良さそうな椅子に腰かける。黒色に濃い灰色の戦闘服を着ており、若い年齢と黒髪とも相まって、とても軍の頂点に立つ人物には見えない。

それでも彼は、I.S.A.F.8492を纏め頂点に居座る人物だ。とはいえ、実力で言えば8492の戦闘員の中でもブービーを争う程度である。そんな彼が、陸海空全てを統括する最上位司令官である総帥の立場に居ることには理由があった。



先ほどの3人は、彼が昔から付き合いのある仲。一緒になって、和気あいあいとゲームをプレイしてきた間柄だ。AoA発売時も、「4人で気軽にやろうぜ」と始めたものだったのだが……。

一体どこが気軽なのやら。コラボ元のゲームではソコソコの強さだった彼が見ても分かるぐらいに各々が無双しており、知識もある。そのため彼程度の実力では話にならず、失礼なことを言うならば、居た方が邪魔になっていたかもしれない。


その点に関しては彼も嫌と言う程に理解しており、それならばと、総帥として裏方で仕事をすることを選択する。その働きぶりは超効率的かつ現場優先であり、他の3人のスタイルを生かせる理想的なものだった。

そうなると3人の無双にも拍車がかかり、そんな連中を従えていたものだから、8492には様々な分野のツワモノがやってきて入隊した。仕舞いにはゲーム内でもラスボス的な位置に成長し、仲間となるには面談が必要となっていた程である。


人が増えても、彼のやることはほとんど変わらない。各々のエースの癖を見抜き、スタイルを生かせるよう、戦闘方針を決定するだけだ。

現場優先と言うこともあり指令を筆頭とした裏方は何度か煮え湯を飲まされるため、その点の配慮に関する仕事、極稀にある失敗時のフォローも彼の仕事となる。


過小評価しても大変な仕事と言えるほどに難しいのだが、彼は遣り甲斐を感じている。そのような行いをすれば自然と忠誠心や錬度も上がるものであり、このようなことを続けられたら理想だなと、大きくなった自軍のデータを見つめるのだった。





これらは、彼が地球でゲームをやっていた頃の話である。



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