表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で、エース達と我が道を。  作者: RedHawk8492
第2章 動き出す生活
29/205

2話 施設巡り

仕事に没頭している人が休みをもらっても、何をするべきか判断できずに混乱する。



大学時代には「そんなフザケたことがあるわけない」と高を括っていたが、まさか経験することになるとは思わなかった。先ほどから「アレしようかなー別にいいや……じゃぁコレは……別にいいや。」その繰り返しだ、まったくもって進展がない。

8492の部隊がソックリそのまま転移してきたために組織的な混乱は無いのだが、何分未知の世界であるため、偵察を筆頭とした軍事活動が活発になっている。今までは、自分もその対処をして過ごしていた。


勇者の討伐も終わって、そんな状況から一転してしまったわけだ。軍としての目標といえば自己防衛程度であり、離れ小島を選択したためか気楽なものである。変わったことといえば、目の前に居る一人のクッソ美人な異世界人。自分の好みとしては、ドが付くストライクゾーンである。



……。



……施設紹介もかねて、出かけないかと誘ってみよう。なんだか、デートに誘うようで緊張するな。

いやいや、気にしすぎだろ、自分。下心なんて、4割ぐらいしかないからな!



「宜しいのでしょうか?可能でしたら、シルビア王国解放戦の時に戦っていた部隊を見て回りたいのですが。」



で、結果的には二つ返事でOK、というかお願いされた。彼女は自分の配下だから問答無用でOKの返事をした可能性もある点が、なんとも後ろ髪を引かれる事情である。

自分としては、ハクが男だろうと女だろうと幼かろうと年配だろうと、配下にするつもりはないのだが。その点は出会った時に彼女にも伝えている……随分とこっぱずかしい場面だったが、どう思っているかは定かではない。


この考えは、8492の隊員に対しても当てはまる。指示や命令こそは出すけれども、基本的には全員が仲間だ。

ビッグアイにも言ったが、この軍隊において欠けて良い人員は存在しない。一人ひとりが部品となり、I.S.A.F.8492という時計を成している。



そんな時計の部品の一つとなった彼女と共に、現在、各建物の説明をしながら陸軍エリアをウロウロしている。自分としてはあまり関わることが無い建物も多いが、どれも大切な役割を担っている。

補給倉庫、修理施設を筆頭に、ほとんどが車両関係の建物だ。兵舎とは完全に切り離されており、壁などが設置され、騒音対策がなされている。



「これは、解放戦の時に城下町を進軍していたモノですね。」



整備工場の踊り場フロアからM1エイブラムス戦車を見下ろし、彼女がポツリと口にする。その目は、格納庫を含めて隅々を見渡し観察しているような状況だ。現在グリズビー隊は別エリアに居るため紹介することはできなかったが、今前にあるM1はグリズビーとは部隊が違うため迷彩が異なるのだが、よくわかったな。



「色が違うけど、よく同じってわかったね。」

「確信はございませんでしたが、記憶していた形と酷似しておりましたので。正解のようで、安心しました。」

「ハクが言ったとおり、シルビア王国を解放した時と同じ型の車両だね。こんな形の車両は、戦車って言うんだ。戦闘する車両の略称だけど、意味としては文字通りかな。」

「言葉の雰囲気としては、馬車のようなものでしょうか?」

「はは、そうだね。」



似てる様で違っているような……まぁいいか。戦闘機とか自動車も、似たようなニュアンスの言葉だし。


作業が休止中とはいえ整備中の車両には近づけないし、作業中は砂埃や鉄粉が舞うため、見学はここまでだ。いくら見学とはいえ、現場作業員の邪魔はしたくない。

建物から出ると、手配しておいた車両が止まっていた。自分が使っている輸送車両、L-ATVのピックアップトラック型だ。


ベースは新型の4輪装甲車両であるが、ピックアップトラック型はAoAオリジナルの仕様である。8492所属の輸送部隊が開発した車両であり、攻撃兵装は無い。車内の定員は2+2の4人だが、後ろに簡易座席があるため10人は乗れる。とても王女を乗せるような車両ではないが、ロールスロイスの車両が走り回るエリアでもないため、我慢してもらおう。

……ドラゴンの彼女が乗った事があるかはさておき、一般的な馬車よりは快適だろうし。もちろん彼女に運転させるわけにはいかないので、助手席に座ってもらう。




基地の施設内内でL-ATVを走らせて2分ほど経つと、新たなコンクリートの壁が見えてくる。入り口には厳重な検問が敷かれ、総帥の自分といえど、一度停止させられることになる。陸軍飛行隊の駐屯基地であり、ヘリ部隊の心臓部だ。今日は任務が無いようで静かだが、出撃時は蜂の巣を突いたかのごとく、様々なヘリが飛び回っている。

彼女にそんな説明をしながら検問を抜け、車を止める。駐車スペースから徒歩で向かったのは、ヘリ部隊の格納庫が並ぶエリアだ。距離にして徒歩2分もかからないが、道半ばで一人の隊員と対面する。この世界ではお世話になっている戦闘ヘリ・アパッチを操るエースパイロット、シューター1-1だ。



「お、丁度いいシューター1-1。ヘリ部隊の見学なんだけど、予定はどう?」

「お疲れ様でございます総帥。本日のシューター隊といいますかヘリ部隊は訓練、出撃予定は無く、全機が格納庫で待機中です。ノーマッドの一部が整備中と聞いております。」

「了解、ありがとう。ちょっとお邪魔するよ。」

「承知しました、ごゆっくりどうぞ。」



軽い敬礼を交わし、足を進めようとしたタイミングだった。



「マスター、引き止めるようで申し訳ございません。1つ、彼に問いかけても宜しいでしょうか?」

「ん?いいと思うけど、シューターはどう?」

「ハッ、回答可能範囲でしたら。」



突然の要望に少し驚きながらも、シューター1-1との仲介役に入る。彼としても断る理由もないので、その点はOKらしい。



「では、不躾ながら。本日のシューター隊の任務は無いと伺いましたが、格納庫で何かなさっていたのでしょうか?」

「ああ、それですか。非番の日でも、最低1日1回はコクピット……操縦席に座って体を馴染ませないと、落ち着かないんですよ。職業病みたいなもんですね。」

「なるほど、とても重要なことだと思います。お時間をとらせてしまい、申し訳ございません。」

「お気に成さず、自分でもバカだと思いますよ。それでは総帥、失礼します。」

「お疲れ、ゆっくり休んでくれ。」



半笑いしながらシューター1-1が答え、兵舎がある方角へと去っていく。自分からすれば職人気質であり『プロ』たる所以なのだが、本人からすれば、こそばゆい話題なのだろう。その背中を、彼女は暫く見つめていた。



「どうかした?」

「はい、少し思うところが……。私も前線にいた頃は、毎日必ず剣を握っていました。使うものは異なれど、根底は似通っているのですね。」



少し嬉しそう……と言うよりは安堵した表情を微かに見せ、彼女が呟く。ちょっと理解できるぞ、その気持ち。



「自分も1日1回は全部隊の状況を確認しないと落ち着かないけど、これも職業病かねぇ。」

「ふふっ。ご発言のとおりですよ、マスター。」



突然の微笑みは止めてください、メンタルにダイレクトアタックです。ただでさえ二人なんだから、若干緊張しているってのに。

上がってしまったテンションのままヘリに関する説明を終えたのだが、正直何を言っていたかハッキリ覚えていない。直前に見せられた笑顔のインパクトが強烈過ぎる。


通常運転に戻ったのは、車に乗り込んで走り出してから10分ほど経った時だった。グゥ、と小さく自分の腹の虫が鳴り、お昼であることを気づかされた時である。

時刻は12:30を回ったところで、少しだけ遅い時間帯か。とはいえ朝食をとった時間も遅かったので、さほど空腹は気にならない。


海軍方向にL-ATVを走らせているため、左手には海が広がっている。反対側は、視界の良い草原だ。扉を開けるか外に出れば、丁度良い潮風が吹きぬけるだろう。

ちょっと肌寒いかもしれないけど、日差しは良いのでイーブンだ。秋晴れのような空が広がっており、視界も良好。天気は曇りで気温も高くなく、絶好のピクニック日和だ。そして自分は、24時間お弁当を持ち歩いている。



「ハク。提案なんだけれど、ここいらで車を止めてお弁当を「賛成いたします。」あっはい。」



凛とした決意が現れる、シャキっとした発言。電光石火のお返事ですね、承知しました。

踏み固められた砂道から外れた所に車を止めて下車し、荷台部分へと移る。ここならば自然を満喫しながら食事も可能だし、用途が兵士輸送用とはいえ椅子もある。

そんなことより料理は何だと言い出さんばかりの人が横に居るため、周りの風情は後回しだ。宝物庫を呼び出し、バスケットに入った自分手製の弁当を取り出す。あとは飲み物だが……とりあえず、水で良いか。弁当の味を堪能してほしいし、食後にコーヒーか紅茶を出せば丁度いいだろう。



「マスター……これは、パンでしょうか?」

「正解。料理名は、サンドイッチです。勇者との戦闘前に作ったんだけど、宝物庫にあったから鮮度は当時のままだよ。」

「ハッ。確かにマスターは今、勇者クラスでしか所持できないと言われている亜空間収納庫を……いえ、今はこの未知の料理が優先です。」



うーんこの揺ぎ無き食い意地……反応含めて屈託の無い表情が可愛いから許す。自分の分も残してね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ